「このホテル、あなたはいくらなら予約する?」も推測――楽天トラベルのAI活用、その裏側:Teradata Analytics Universe 2018(2/2 ページ)
あなたはいつ、どこへ旅行するのか、そこにいくら払うのか――そうしたユーザーの“意図”を、AIを使って見極めようとしている企業がある。オンライン旅行予約サービス「楽天トラベル」を展開する楽天だ。
例えば、バナーなどをクリックしてもらうための要素をユーザーごとに精査する「オンライン広告の最適化」、ホテルや旅行プランの予約を促すために、クーポンなどが必要かどうかをユーザーごとに判断する「メールマーケティングの最適化」、そして楽天トラベル側がホテルの価格を設定する場合、どの価格が最もユーザーに響くのかを探る「価格の最適化」といった内容だ。
実際に効果も出始めた。メールマーケティングの最適化では、分析のアルゴリズムを改善し続けた結果、ホテルのページを閲覧したユーザーが実際に予約する割合が、「具体的な数字は明かせない」(勝田さん)ものの、従来の1.1倍になったという。
さまざまな種類のデータを分析できる環境を実現
一方で、こうした分析に欠かせないのが、データウェアハウス(DWH)や分析エンジンといった設備だ。楽天トラベルでは、もともと使っていた他社のDWHで計算能力が足りなくなったことをきっかけに、2004年にTeradataを導入。その後、「Webサイトの訪問者数」「各飛行機チケットの売り上げ」といったデータの他に「ユーザーの行動履歴」といった非構造型データが増えてきたことをきっかけに、2014年に分析システムを刷新し、2015年に「Teradata Aster」を導入した。
「社内のデータサイエンティストやマーケティング担当者が、用途に合わせて、さまざまな種類のデータから使いたいものを最適な形で出し、すぐに分析できる環境が重要でした。選定の際には、複数社の分析エンジンを対象に、普段使っているロジックを回すPoCを行い、コストとパフォーマンスの両方を見極めました」と、楽天のトラベルサービス開発・運用部で導入に関わった鈴木敬志郎さんは話す。
同社では、新たな設備を使った分析アルゴリズムの強化を続け、サービスのリニューアルを目指している。現サイトでは、各ユーザーの行動が翌日になってデータとして出る状況だが、「新サイトでは、数秒単位でユーザーの行動情報を更新できるようになる」(勝田さん)予定だという。
「2020年末にかけては、ディープラーニングを使った広告やWebサイト表示の最適化の強化を続けます。ユーザーの行動に合わせた分析のニーズがある以上、楽天トラベルでは、今後ディープラーニングを活用する場面がより増えていくと思います。今のところは、データを収集して1日に1回データ分析を行っている状態ですが、今後はデータの更新と分析の頻度を1時間に1回、30分に1回と、よりリアルタイムに近づけていきたいですね。データプラットフォームが進化すれば、それが可能になると考えています」(勝田さん)
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