AIで農作物の生産量を予測する「高知県園芸品生産予測システム」 安定的な生産と取引を支援――高知県、富士通らが共同実証
高知県、富士通、Nextremerは、農作物の生育や出荷に関わるデータを一元管理し、AIで生産量を予測する「高知県園芸品生産予測システム」の実証実験を開始する。生産性と品質向上に向けた営農指導や、安定的な農作物の生産と取引の実現に向け、2019年3月の本運用を目指す。
富士通は2018年12月3日、高知県、Nextremerと共同で、AIを活用して最長3週間先の農作物の生産量を予測する「高知県園芸品生産予測システム」を開発し、2019年1月下旬から実証を開始すると発表した。
高知県では、農業協同組合の各集出荷場から農作物を出荷する際、機械で等階級を自動判別して、長さや太さ、曲がりなどの品質データを記録しており、それらの出荷情報は翌日以降に生産者に紙で手渡している。しかし、農作物の生産過程には生かされておらず、また、販売面では、最低でも2〜3週間先の出荷量を把握できないと量販店などとの大口予約相対取引で有利な条件を得られないという課題もあった。
今回、3者が共同開発した高知県園芸品生産予測システムは、富士通の農業経営支援クラウドサービス「FUJITSU Intelligent Society Solution 食・農クラウド AkisaiPF(アキサイプラットフォーム)」を活用して農作物の生育から出荷までのデータを一元管理し、Nextremerが開発した生産予測AIで3週間先までの生産量を予測するもの。
同システムを活用することで、高知県では、農産物の出荷情報の迅速なフィードバックや、生産性や質の向上に向けたきめ細かい営農指導が可能になるとともに、生産量を高精度に予測することで、大口予約相対取引の増加につながることも期待できるとしている。
実証実験は、2019年2月28日までの予定で、高知県高知市、安芸市、芸西村の各生産者を対象に実施する。対象の農作物は、ハウス栽培のナス、キュウリ、ピーマン。
ハウス内の環境データ(温度、湿度など)、気象データ(気温、降水量など)、生育データ(着花数、着果数など)に加え、集出荷場に持ち込んだ際の農作物の品質データ(等階級、長さ、太さ、曲がりなど)と出荷データ(農作物の荷受重量、正味重量など)を同システムで一元管理し、営農指導への活用などについて有効性を検証する。
生産量の予測では、当初はナスの生育データ(着果数など)とハウス内の環境データ、気象データ(予報)を生産予測AIに教師データとして学習させ、最大3週間先の収穫量を予測。キュウリ、ピーマンについては、順次生産予測を開始する予定だ。
また、出荷情報や予測結果は、PC、タブレット、スマートフォンなどで確認できるようにし、最短で出荷翌日には生産者と共有。生産者側の生育管理や収穫時期の調整などへの有効性を検証する。
高知県では、検証結果を踏まえて、生産予測の精度向上などを図り、2019年3月から同システムの本運用を開始する予定。また、富士通では、効率的な農作物の栽培管理や単価上昇につながるサービスとして、全国展開を視野に入れている。
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