紙の帳票にシステム入力……多重業務だった経費精算を自動化したアサヒグループ 目指す“新たな出張のかたち”とは?:2万時間の削減を目指す(2/2 ページ)
アサヒグループでは、交通費の入力、伝票の提出など、業務の工数が多い経費精算業務を自動化しようとしている。予算をゼロから見直す「ゼロベース予算」の取り組みから始まった自動化は、どれほどの効果を生もうとしているのか。
年間で2万時間の削減を目指す
現在、アサヒグループでは、アサヒプロマネジメントとアサヒホールディングス、アサヒ飲料、アサヒグループ食品の4社で「Concur Expense」の運用を進めている。
「Suica」「PASMO」といった交通系電子マネーを使っている社員は、社内に設置されたICリーダーで直接データを読み込むことで、「1日20件」という制約はあるものの、自動的に交通費をシステムに登録できるという。
これまで紙と印鑑ベースで行っていた経費の承認は、責任者のモバイルアプリを使えば外出先からでも可能になった。また、伝票の保管や提出が必要なくなり、システムに経費のデータが蓄積されていくため、社員の負担が減った他、「監査にとっても問題点を見つけるスピードが上がるメリットが期待できる」(川内さん)。
出張の際にホテルや交通チケット手配を自動化する「Concur Travel」については、アサヒプロマネジメントで試験運用を進め、社員のニーズに合った活用の計画を立てている段階だという。
「Concur Travelを試験運用した段階のデータを分析したところ、電車や飛行機のチケット手配のコストに削減の余地があることが分かってきました。例えば、割引の利用率が少なく、行先によっては割高なチケットを手配してしまっている、といった点です。(Concur Travelで)出張ポリシーを設定し、行き先別に推奨エアラインなどを設定すれば、年間で最低6000万円ほどのコストを削減できると見込んでいます」(川内さん)
出張手配の自動化については、実際に社員からのニーズも大きいという。川内さんによれば、現場からは、「手動で公共交通機関を検索すると時間がかかってしまう」「社内で指定された予算通りのホテルが見つからないことがある」「海外出張の際、為替レートをわざわざ調べて印刷し、チケット手配と稟議を別々に進める手間が大きい」など、さまざまな課題が挙がってきている。自動で出張を手配できるようになった場合、コストだけでなく、社員の業務負担も減らせる見込みだ。
「出張の手配から経費精算までの全プロセスを自動化した場合、年間2万時間、人件費に換算して9000万円ほどのコスト削減が期待できると考えています。今後は、紙の領収書をできるだけ減らし、コーポレートカードを使った決済を広げるなど、自動化のメリットを最大限生かせるようにしていきたいですね」(川内さん)
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