コレ1枚で分かる「Amazonの戦略から見えてくるデジタルトランスフォーメーションの本質」:即席!3分で分かるITトレンド(1/2 ページ)
顧客第一主義に基づき、さまざまなサービスを編み出し、ネットでもリアルでも顧客接点を拡充し続けるAmazon。その戦略をひもとき、これからの時代に必要なデジタルトランスフォーメーションの本質を押さえておきましょう。
この連載は
いまさら聞けないITの最新トレンドやビジネス戦略を、体系的に整理して分かりやすく解説する連載です。「この用語、案外、分かっているようで分かっていないかも」「IT用語を現場の社員にもっと分かりやすく説明できるようになりたい」――。情シスの皆さんのこんな課題を解決します。
“最高の顧客体験”を提供し続けるための変革
Amazonは、企業理念として、「地球上で最もお客さまを大切にする企業であること」と「地球上で最も豊富な品ぞろえ」を掲げ、その理念にのっとって、「最高の顧客体験」の提供を追求しています。
例えば、Kindle本など、Amazonの一部の商品ページには、「1-Clickで今すぐ買う」というボタン(ワンクリックボタン)があります。このボタンを押すと、住所やクレジットカードの入力が必要なアカウント作成の画面に推移したり、注文内容の確認画面に移って注文確定のボタンを押したりすることもなく、即座に注文が成立します。しかも、プライム会員であれば、多くの商品(primeマークが表示されているもの)には、送料がかかりません
この便利さに、つい余計なものまで買ってしまう人もいるはずです。そして、この便利さゆえに、同じものを買うのなら、継続的にAmazonを使う、という人も多いでしょう。Amazonは、この仕組みに特許を取っており、他の企業が同様の仕掛けを組み込むことはできません。
また、会員の注文履歴を機械学習で分析し、次に何を買うかを予測して「配達先のそばの倉庫にあらかじめ置いておく」ことで、他社にはまねできない短納期を実現しています。
さらに、「Dash Button(ダッシュボタン)」という、ネットショップの画面でよく見る“ワンクリック購入ボタン”を物理的なボタンに置き換えたものもあります。そのボタンを指で押すだけで、即座に商品が注文できてしまうというデバイスです。
例えば、カミソリの刃やマウスウォッシュ、洗剤などのドラッグストア商品、シリアルやミネラルウオーターなどの食品・飲料、他にも、美容関連、ペット関連、ベビー関連の商品など、頻繁にリピート購入する商品のDash Buttonが用意されています。それを冷蔵庫や洗濯機に貼り付けておけば、商品が少なくなったり、なくなったりしたときに、その場でボタンを押すだけで、最短で当日には自宅に届く仕組みになっているのです。
Dash Buttonの利用者は、広告や宣伝を見ることもなく、眼の前のボタンを押すだけという簡単さゆえに、その商品を買ってしまうのです。これは、これまでのマーケティングの常識を破壊してしまうサービスといるでしょう。
「Amazon Echo」と呼ばれるマイクロフォン付きスピーカーもあります。これに話しかけるだけで、キーボードでの入力やスマホでの画面操作をしなくても、音声による指示だけでさまざまなサービスを実行してくれます。もちろん、商品の注文もできます。
加えて、「Kindle」という小型タブレットサイズの電子書籍リーダーや、電子書籍リーダーとタブレットと兼ねた「Fireタブレット」といったAmazon専用デバイスを使えば、重たい紙の書籍を持ち歩かなくても、どこでも即座に読みたい本を手に入れて読むことができます。
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