ライオンの「口臭リスク判定アプリ」 ユーザー、ベンダーが語るAI開発の裏側:AI導入には「最低6カ月、1000万円」を覚悟せよ(3/3 ページ)
舌の画像を解析し、口臭のリスクを判定するというアプリ「RePERO」。東京・虎ノ門で行われたイベント「THE AI 3rd」では、そのAI開発の舞台裏をライオンと富士通クラウドテクノロジーズが語った。
ベンダーに丸投げせず、可能であればデータサイエンティストの自社育成を
AIをはじめとするデータ活用では、業界のバリューチェーンや情報の重要性を正しく理解するためのドメイン知識が不可欠だ。実際、ビジネスの現場では、特定の業界に知見のあるデータサイエンティストを積極的にアサインする動きが出てきているという。
「あと1年くらいすれば、『どこどこの業界に強いデータサイエンティスト』という存在が出てくるのではないでしょうか」(西尾氏)
まるで、戦略コンサルタントのような扱いだが、データサイエンティストは「あらゆる業界に精通したスーパーマン」ではない。少なくとも現時点では、始めから深い業界知識を持っているデータサイエンティストなどいないと考えた方がいいだろう。
「AIを開発する際は、どうしても『このデータは何を意味するのか』といったレクチャーが必要になります。その際には、業界のバリューチェーンを理解した自社の担当者が必ず参加すべきです。ベンダーに丸投げしたプロジェクトは、大体うまくいきません」(西尾氏)
こうした状況を鑑みると、ビジネスの知識がある社内担当者に数学的な知識を与え、データサイエンティストに育成するのが、プロジェクトをスムーズに進めるのには理想的だ。
AIはリリースした後も、継続して新しいデータを取り込み、精度も含めてシステムを改善していく必要がある。そこまでをベンダーに投げてしまうと、運用のためにデータサイエンティストを雇い続けることになり、コストが膨れ上がってしまう。プロジェクトを進めながら自社で運用できるよう、社内の担当者が技術を習得していく方がさまざまな面で“現実的”なのだ。
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