優勝8回、総額1千万円超の賞金をゲットした起業家に「プレゼンの極意」を聞いてみた――Empath CSO 山崎はずむさん(後編):長谷川秀樹のIT酒場放浪記(2/4 ページ)
メルカリのCIOを務める長谷川秀樹氏が、志高きゲームチェンジャーと酒を酌み交わしながら語り合う本対談。なぜ、音声感情解析技術「Empath」は海外のピッチコンテストで注目されているのか、この仕事を始めるきっかけは何だったのかを同社共同創業者でCSOの山崎はずむさんに聞きました。
ピッチコンテストで勝つ秘訣は
長谷川: ピッチコンテストに出るとき、国によってやり方を変えたりしてるんですか? それとも共通のスタイルで?
山崎: 国というよりは、「聞いている人が誰か」によりますね。「事業会社なのか、ベンチャー・キャピタルなのか」で、語り口が若干変わります。
それと、どうしてその国に来ているのかも、必ず最後に添えるようにしていいます。僕らは、やみくもに賞金だけを狙っているわけではなくて、その国でできることを探りながらプレゼンテーションを行っています。例えば共同研究ができそうな大学があるとか、その地域のマーケティングのハブとして有用だとか、国によって期待することが違うので、その国で僕らが何をやりたいのかを伝えることは大事です。ただ、3分のピッチだったら2分55秒は全く同じ内容ですね。
長谷川: どこかで、ピッチコンテストで勝つスキルみたいなものを身につける機会があったんですか?
山崎: ピッチコンテストの経験は全然なかったんですけど、人を説得するのには、「語りが大事」なことは、経験的に分かっていましたね。僕は予備校で高校生に英語を教えていたことがあって、「同じ内容を教えるにしても、語る人間が変わると伝わり方が違う」ということを実感していました。
話の構成や論理性も大事なんですけど、教壇に立つときって、役者のような心構えが必要なんですよ。この言葉で止めて、息を吸って、ここで一発ボーンと語気を強める――みたいなパフォーマンスができるかどうかが、極めて大事なんです。日本のスタートアップはそれが得意じゃなくて、愚直にフラットに話し続けるので、せっかくの内容が伝わりきらない場合が多いですよね。
僕は演劇をやっていたわけではないですが、どういう間合いの置き方をすれば説得力があるかとか、そういうことは、教壇やアカデミアの世界でプレゼンテーションしてきたことで、経験値がたまったのかもしれなません。
ゴールデン街の飲み友達に誘われ、バンドをやるようなノリで起業家に
長谷川: 山崎さんは、どういうキャリアでここまできたんですか?
山崎: 僕は、ほぼ社会人経験がなくて、これがファーストキャリアなんですよ。
長谷川: それまでは?
山崎: 大学で哲学と文学の博士課程にいました。今の会社は、新宿ゴールデン街の飲み友達と始めたんです。
長谷川: じゃあ、大学院生だったときに今のCEOとゴールデン街で知り合って、起業しようって誘われたの?
山崎: そういうことです。僕ら2人がコ・ファウンダーで、CEOが国内の統括を、僕がCSOとして海外向けのビジネスを担当するという住み分けで。
長谷川: CEOは、どうして哲学の研究をしている人に対して「一緒にやろうぜ」と誘ったんでしょうね。
山崎: 単純に英語ができたから、というのが1つの理由で、それ以外にはあまり戦略みたいなものはなかったと思います。
彼とは5年くらい飲み友達で、僕は彼が何の仕事をしているかなんて全然知らなかったし、彼は僕が研究者であることは知ってましたけど、お互いに仕事の話なんか一切していませんでした。あるとき、僕が研究者として米国の大学院に行って帰ってきたときに「この先どうしようかな……」と話していたら、「うちに来ればいいじゃん」と軽く言われて。友人同士でロックバンドをやるような感じでしたね。「取りあえずお前、練習すればギター弾けるだろ?」みたいな。
長谷川: そうやって誘われてビジネスの世界に入って、3〜4年経ったわけですね。山崎さん個人としては、これからもこの事業を続けていこう、という感じですか?
山崎: 僕らは近い将来にエグジットを見据えているので、その後のことはまだ考えられないですね。今はエグジットさせるまでやり切ることしか考えていません。
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