スパコンの「肝」を手に入れたNVIDIA、次の飛躍で狙う先とは:Mostly Harmless
“ビットコインバブル”により、2019年会計年度第4四半期で対前年比24%の売り上げが落ち込んだNVIDIAですが、スパコンの「肝」となるインターコネクト技術を手に入れ、次なる飛躍に向けた動きが加速しそうです。
この記事は大越章司氏のブログ「Mostly Harmless」より転載、編集しています。
NVIDIAは、「2019年会計年度第4四半期の業績」によると、直近の四半期の売り上げが前年比で24%も減るなど、このところ良いニュースがなかったようです。しかし、素早く次の手を打ってきました。
Mellanox Technologies(以下、Mellanox)の獲得は、Intelとの買収合戦を経て実現したようです。Intelが60億ドルでオファー(英語記事)していたとの報道もあります。
Mellanoxで注目すべきは「InfiniBand(インフィニバンド)」です。InfiniBandは、スーパーコンピュータ(以下、スパコン)などの「HPC(High-Performance Computing)」分野で使われている「インターコネクト技術」で、Mellanoxはこの市場で大きなシェアを持っています。
インターコネクト技術とは、CPUやメモリ、ノード間でデータを高速に転送するための技術です。スパコンはCPUの演算性能がクローズアップされがちですが、実際に計算を行う場合、その高速なCPUに対してどれだけ途切れることなくデータを供給できるかが重要になります。
今のスパコンは、マイクロプロセッサを超並列に相互接続したアーキテクチャが主流で、そのプロセッサの間をデータが駆け巡ります。必要なときに必要なところにデータがスムーズに供給されないと、あちこちで待ち時間が生じ、100%の性能を発揮できません。インターコネクト技術は、CPUと並ぶスパコンの演算性能を支える一つの「肝」といえるでしょう。
IBMのスパコンで協業
InfiniBandは、調べたところ2019年3月時点で最大600Gbps(12レーン)という転送速度を実現しており、将来は3Tbpsが視野に入っているようです。
スパコンの「京」は、富士通が開発したインターコネクト技術である「Tofuインターコネクト」が使われていますが、他の多くのスパコンではInfiniBandを採用しています。2018年に世界一になったIBMのスパコン「Summit」はその一つです。
はじけた“ビットコインバブル”
NVIDIAは、GPU(Graphics Processing Unit)のメーカーです。随分前からGPUを汎用(はんよう)目的に使うための技術「GPGPU(General Purpose Graphics Processing Unit)」を開発してきました。この技術は、PCに組み込まれたGPUに画像編集ソフト「Adobe Photoshop」の画像処理を行わせたり、GPUでスパコンを作ったりするのに使われている他、最近ではAI分野で広く使われています。
ただ、NVUDIAの業績がここ2〜3年で急激に伸びたのは、実は仮想通貨が要因だったといわれています。仮想通貨のマイニングに使われるアルゴリズムがGPUの処理に合っていたからです。2018年のビットコインバブルのころは、秋葉原のPCショップの店頭からグラフィックスボードが消えたといわれるほど品薄になりました。
それがビットコインの暴落により、GPUを使ったマイニングがコスト的に見合わなくなったり、中国でマイニングが禁止されたりして、需要が落ち込んだ結果、NVIDIAの業績が一気に悪化。2019年1月に終了した第4四半期の売り上げは、対前年比で24%、対前四半期比で31%下落したということですから、ものすごい落ちこみです。
とはいえ、仮想通貨以外(ゲーム、AI、データセンター)の市場は堅調なので、ビットコインバブルの清算が済めば、それ以上の落ち込みは防げるでしょう。
原点回帰
NVIDIAの本業はGPUであり、HPCはその原点といえます。今後、高速なインターコネクト技術はますます重要になっていきます。スパコンが何十台も売れる可能性は少ないものの、インターコネクト技術を手に入れたことは、NVIDIAにとって次の飛躍へのステップになるでしょう。
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