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企業を蝕む「引き継ぎの魔物」、退治する4つの心得を伝授(1/2 ページ)

引き継ぎを繰り返す度に、業務本来の目的が見失われ、無駄な作業が「ダブついて」いく。従業員が今日も意味のない仕事に精を出す――。今回は、企業のマネジャーがこの問題をどう対処すればよいのか、4つの心得を解説。実践することで、RPAにどの業務を任せればよいのかも見えてくる。

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著者紹介:池邉竜一 キューアンドエーワークス 代表取締役社長

1971年12月生まれ。大分県出身。慶應義塾大学経済学部卒業。

1999年7月、人材派遣業のアークパワー設立。2001年4月、同社代表取締役就任。2013年4月、キューアンドエーグループ傘下(NECネッツエスアイ連結対象会社)となり、2015年7月、キューアンドエーワークスに社名変更。RPA市場においては「新・雇用創造」を掲げ、「業務の可視化」普及を通じてさまざまな人々の「創造する時間」を生み出し、デジタルレイバーと協働する労働環境をデザインすることによって、真の働き方改革を起こす。2016年7月、一般社団法人日本RPA協会の理事に就任。2019年6月より可視経営協会の代表理事も務める。

 引き継ぎが繰り返され、時代の経過とともにその業務自体がムダなものになったとしても、忖度(そんたく)が働き、気が付けば何も見直されることなく自然とムダな業務が引き継がれている――「引き継ぎの魔物」ともいえる「ムダ」な業務は、どこの職場にも潜んでいます。仮に「何かおかしい」とうすうす感じたとしても、言い出せず黙認してしまうという方もいるでしょう。

 こうした状況は、後に事例を交えて説明するように「従業員が意味のない仕事に延々と精を出す」という悲劇を生みます。今回は、いかにして業務の可視化を有効活用し、引き継ぎの魔物を退治するのかについてひもときます。

(参考)第1回:RPA失敗の構図――あなたの会社にも潜む引き継ぎという名の魔物

チームの効率を下げる引き継ぎ

 そもそも、企業はなぜ定期的に業務を引き継がせるのでしょうか? このシンプルな問いに対する答えとして、「人事戦略の一環として、同一業務を同一人物に長期間させると熟練度が高くなり代替要員を立てづらくなるため」「不正を防ぐため」「キャリアップを推進するため」といった要因が挙げられます。例えば、従業員が病気によって長期に離脱したり、退職したりした場合、担当する業務の引き継ぎの難易度が高ければ高いほど、その穴を埋めることは困難になり、業務が止まってしまいます。従って企業は、業務が属人的にならないように標準化して、定期的に他の人に引き継がせることで万事に備えているのです。

 一方で、定期的に引き継ぎが繰り返されてしまうと、担当者が業務の意味や役割を深く理解する前に、また次の担当者に業務が引き継がれることになります。全体的に「なぜその業務をするのか」という目的意識が弱くなり、改善意欲が自発的に生まれないというデメリットが発生します。

引き継ぎの魔物が日本をダメにする(ガラパゴス化する日本の業務)

 さらに、管理者(=マネジャー)が業務に完璧さを求めるほど「ムダな業務」の発生リスクは高まります。ミスを起こさないよう過剰に「リスク対策」を実施すれば実施するほど「ムダな業務」が発生し易くなるのです。要するに、「ミスの許容量」をどのくらいに設定するかということが、「ムダな業務」が発生するか否かの大きな分かれ道となってきます。

 例えば、「議事録をみんなに共有する業務」があるとしましょう。上司(マネジャー)は、部下(運用者)に対して、関係各位に漏れなく共有すること(100%周知徹底)を命じたとします。

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