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“鍵のいらない温泉旅館”は現場と客を救うのか 創業150年、宿泊体験のDXに挑む旅館を取材した週末エンプラこぼれ話

訪日観光客の増加が期待される一方、人手不足に悩む旅館の現場で、業務を効率化しつつどう接客サービスを向上させるのか。そんな課題に挑む旅館が、部屋のドアに顔認証とスマートロックを活用する実証実験を進めている。何が起こっているのか、実際にお邪魔してみた。

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 接客やサービスの現場でよく耳にするようになった「おもてなし」。日本人がとりわけ得意とするきめ細かなサービスや心のこもった接客は、とくに観光業や宿泊業といった業界で、訪日外国人客を引き付ける要素として期待を集める。しかし、労働人口の減少で多くの現場が人手不足に悩む今、業務を最大限に効率化しつつ最大限の接客サービスを実現するにはどうすればいいのか。

 そんな中、ある老舗旅館が複数のITソリューションベンダーと協力し、顔認証技術とスマートロック技術を活用した期間限定の実証実験を開始した。愛媛県松山市の道後温泉で創業150年以上を誇る「大和屋」は『ミシュランガイド広島・愛媛 2018特別版』で“極めて快適な旅館”として紹介されたことからも分かるように、これまでもきめ細かい接客を重視してきたという。

 老舗の和風旅館がなぜ先進的なIT技術に興味を持ったのか。その背景には宿泊業界が抱える深刻な人手不足の問題がある。同館でなぜ“スマートロック”が人手不足解消のカギを握るのか知ろうと、実際に現場にお邪魔した。


今回の実証実験の舞台、愛媛県松山市の道後温泉にある老舗旅館「大和屋」

実は大変、宿泊施設の“鍵管理”の悩み

 実は、ホテルや旅館といった宿泊施設にとって“短時間で各部屋の鍵をどう正確に管理するか”は重要な課題だ。たいていは昼12時ごろに宿泊客のチェックアウトが終了し、14時には新たなチェックインが始まる。その間の2時間程度で、スタッフは他の業務と並行しながら鍵がきちんとそろっているかを確認しなければならない。さらに厄介なのが、カードキーや金属製の鍵といった“物理キー”について回る紛失や盗難の問題だ。


大和屋本店 代表の奥村敏仁氏

 大和屋本店 代表の奥村敏仁氏は「お客さまは飲酒もされますし、お風呂にも入ります。紛失や盗難などの対応も含め、旅館にとって鍵の管理はかなり大きな負担です」と話す。

 そこで奥村氏が目を付けたのが、他の認証方法を使って物理キーをなくす発想だ。物理キーを管理する必要がなくなれば、現場は空いた時間を接客サービスに充てられる。宿泊客は大浴場や食事に行く際に鍵を持って出る必要がなくなり「鍵を忘れて部屋から閉め出された」「大浴場の脱衣所で鍵が盗まれた」といった事態に見舞われることもなくなり、さらに手ぶらで行動できるといったメリットを得られる。

顔認証とスマートロックで“顔パス宿泊”を実現する仕組みとは?


実際に旅館のフロントで顔の情報を登録する様子

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