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全社テレワークを「未来の強み」にどう変える? いま経営者に必要なこと【前編】

新型コロナウイルスの影響で、多くの日本企業が「テレワーク移行」という課題に悩んでいる。先行きの見えない不安が広がる中、いち早く全社テレワークに移行したウイングアーク1stは、どのように移行を実現したのか。実際に見えた課題や対策と併せて聞いた。

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 新型コロナウイルス感染症対策で、テレワークを導入した企業は多い。しかしながら、一部の社員がたまにオフィス外で仕事をするテレワークと、全社規模でオフィスに一切出社しないテレワークとでは大きな違いがある。日頃からクラウドサービスを利用している企業なら、そうでない場合に比べて全社テレワーク体制に移行しやすいだろう。とはいえ、そのような企業であっても、どうしてもオフィスでしかできない業務のために交代で出社するという話もある。

 乗り越えるべきさまざまな課題がある中、2020年3月にいち早く全社規模のテレワーク体制に移行したのが、企業向けBIツールやクラウドソリューションなどを手掛けるウイングアーク1stだ。同社はなぜ早期に全社規模でのテレワークが実現できたのか。また既に1カ月以上テレワークを実施し見えてきた新たな課題は何か。今回の経験を経て新型コロナウイルス対策後の働き方はどのように変わっていくのか。ウイングアーク1stの社長である田中 潤氏に話を聞いた。(注)

(注)本取材は、東京都に緊急事態宣言が発令される以前の2020年3月に実施した。

“さまざまな働き方の選択肢”としてテレワークを捉える

――まずは、かなり早い段階に全社規模でのテレワーク体制に移行しようとなぜ考えたのでしょうか。


ウイングアーク1stの田中 潤社長

田中 潤氏(以下、田中氏):理由はかなりシンプルです。ウイングアーク1stでは、これまでも自由な働き方の実現に取り組んできました。

 例えば、Everforthというわれわれのグループ会社は100%テレワークを実現しています。社員は誰もオフィスに出社していません。これには意味があります。

 例えば、親御さんの介護で仕事ができなくなる人がいます。会社としては、その人にはエンジニアとしてのスキルを生かして働いてもらいたい。なんとか時間を見つけられれば働いてもらえるでしょう。本人も働く気持ちはある。この会社はそういった人たちを束ねてやっています。Everforthでできることは証明できていたので、(ウイングアーク1stも)全社テレワークの体制に移行しました。

 その際の経験から、テレワークには欠点があることも分かっていました。1人で個別の作業をする場合は集中できて良い。けれどもみんなでアイデアを出し合い、共創するのは不便です。オンラインで会話はできるけれど、ただの会話を超えたコミュニケーションができなければイノベーションが起こせません。そこがテレワーク最大の欠点です。やることが決まっている通常業務は、テレワークに向いています。

2020年夏の予定を前倒し 「準備しながら」のアジャイル移行で分かったこと

――全社テレワークの準備はどう進めましたか。

田中氏:われわれとしてはさまざまな働き方があり、その中で100%ではなく、外部の環境とオフィスをうまく併用する環境を考えていました。あるときはテレワークで、あるときは集まって仕事をする。それをもともと推奨してきたのです。

 また、延期にはなりましたが、本来は2020年夏に予定されていた東京オリンピック・パラリンピック期間中の働き方を見据えたものでもありました。オフィスは都心の六本木にあるので、期間中は来れなくなるだろうと考えていました。誰も会社に来なくても仕事ができるようにするために、さらなるテレワークの強化が必要だと考えていました。そこでテレワークのためのプロジェクトを1年前くらいからスタートし、環境の整備をしていたのです。

 そのテストを2020年5月くらいから始める予定でした。それが、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた東京都からのテレワーク要請を受け、準備中のものもありましたが前倒しで開始することにしたのです。準備が全て終わっていたわけではありません。実施しながら足りないものを補っていく完全なアジャイルモデルで進めています。

――実際に、どのようなスケジュールでテレワークに移行したのでしょうか。

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