「薪をくべなくても火がついて炎になる」 AGCのデジタルネイティブを活用したDXとは:【特集】2021年、DXのビジョンは
独自の素材やソリューションを通じてグローバルに事業を展開するAGCは、「匠KIBIT」や「Data Science Plus」などの取り組みで「DX銘柄2020」に選出された。DX推進部の担当者たちが語るデジタルネイティブを積極的に活用する同社の取り組みとは。
AGCグループ(以下、AGC)は、ガラスや電子、化学品、セラミックスを扱うグローバル素材メーカーだ。日本はもちろんのことアジアや米国、欧州など30を超える国と地域で事業を展開する。
AGCは「スマートAGC」をコンセプトにデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進している。2020年には、AI(人工知能) Q&Aシステム「匠KIBIT」の開発やデータサイエンティスト育成プログラム「Data Science Plus」などの取り組みが評価されて「DX銘柄2020」に選出された。AGCを率いる平井良典氏(代表取締役 社⻑執⾏役員CEO)が「DXで業界をリードする会社を目指す。特に素材産業特有のユニークなDXを目指していきたい」と語るように、同社は今後もDXを積極的に推進する構えだ。
本稿は、AGCの池谷 卓氏(経営企画本部 スマートAGC推進部長)と湯浅修一氏(スマートAGC推進部 企画・管理グループリーダー)にDX推進の進捗状況と展望を聞いた。
「DXの定義を教えて」と聞かれたら「自分たちのビジネスの中で考えて」と答える
──AGCのDX推進は「スマートAGC」が根底にあると聞いています。スマートAGCとはどのような考え方なのでしょうか。
池谷 卓氏(以下、池谷氏): スマートAGCは、当社のあらゆるビジネスプロセスをデジタル技術で変革してビジネスパフォーマンスを向上させる取り組みです。
この取り組みには、デジタル技術による生産性向上や製品品質の向上だけでなく、新たな顧客価値を提供するビジネスモデルの創出も含んでいます。当社の事業領域は、ガラスや電子、化学品、セラミックスですが、それらのコア技術にアドオンする新たな価値創造を目指しています。生産技術分野における「スマートファクトリー」や営業やマーケティングを高度化させる「スマートセールス」もスマートAGCの一環です。
──AGCにとってDXとはどのように定義されるものなのでしょうか。
池谷氏: あえて明確な定義は設けていません。DXは、デジタイゼーションやデジタライゼーションとは区別して考えられていますが、それらの違いを現場の担当者に説明してもピンと来ないことがほとんどです。
「アナログをデジタルに置き換える」といっても、現場ではとっくの昔に終わっていることもあるため、これまでの取り組みも含めてDXという捉え方をしています。重要なのは、事業部門がそれぞれの戦略のなかにDXを織り込んで、最終的に収益を上げることです。そのため「DXの定義を教えてほしい」と聞かれたら「自分たちのビジネスの中でしっかり考えてみましょう」と答えています。
──スマートAGC推進部の役割と組織体制を教えてください。
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