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4900万人のデータを持つヤフー コロナ禍で起こった「分析ニーズの激変」は、組織向けデータ事業をどう成長させたか【特集】2021年、DXのビジョンは

ヤフーのデータソリューション事業を率いる谷口氏は、2020年のコロナ禍で消費や行動の場がオンライン化する一方、企業の「データへのニーズ」が大きく変わる様子を目の当たりにしたという。その中身とは何か。今後同社が目指すDX支援の在り方とともに聞いた。

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 企業や自治体に対する個人のニーズは多様化している。特に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が拡大して以降、消費や行動の場がオンラインに移行し、外から“見えにくく”なった点は否めない。こうした傾向は今後も続くと予想され、企業にはデータを基に意思決定をする「データドリブン経営」が求められる。そんな中、大規模なデータの分析ソリューションを企業や自治体に提供する事業を進めるのがポータルWebサイト「Yahoo! JAPAN」を手掛けるヤフーだ。共通のID「Yahoo! Japan ID」を使ってログインするユーザーは月間で約4900万人に達し、その消費者データは膨大だ。

 同社は「データの民主化」を掲げ、2019年10月には「DS.INSIGHT」(リリース時の名称は「DATA FOREST INSIGHT」)の提供を開始した。ヤフーが保有する検索や位置情報といった行動ビッグデータの分析結果を基に、消費者や生活者の興味関心や人流などを可視化し、商品の企画開発や行政サービスの運営を支援する。

 ヤフーの谷口博基氏(データソリューション事業本部 本部長)は「われわれのビッグデータを活用し、企業や自治体のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援したい」と語る。

 DS.INSIGHTは、IT担当者やデータアナリスト、データ分析にある程度慣れたマーケティング担当者だけでなく、普段は営業や販売、開発企画といった部門の担当者もすぐにデータ分析を始められる環境を提供するという。「誰もが使えるデータソリューション」で、企業や自治体にどのようなインパクトを与えようというのか。谷口氏に聞いた。

「検索キーワード」はユーザー理解の宝庫

――ヤフーが企業や自治体のデータ活用を支援する意義を教えてください。


ヤフーの谷口博基氏(画像提供:ヤフー)

谷口博基氏(以下、谷口氏) 端的にいえば、企業や自治体がデータを通して消費者や生活者のことをより深く理解し、データドリブンな事業活動や課題解決に役立ててもらうことです。

 インターネットの検索データは、顧客を知る上で非常に重要な素材になります。特にコロナ禍で外出の機会が激減した現在は、リアルな消費行動や動きが見えにくくなりました。しかし、消費者に製品やサービスを提供する事業者は、彼らのニーズを把握する必要があります。

 ヤフーのデータは、消費者や生活者が「今、知りたいこと」「今、困っていること」が反映されています。なぜなら、人は「困っている」ときや「知りたい」ときに検索をするからです。

 例えば、2020年4月に緊急事態宣言が発令された際、「保育園は開園するのか」「助成金の申請には何が必要か」といった、「その人にとって必要な情報」を得るために、多くの人はインターネットで検索をしました。

 一方、自治体は困っている人に迅速に情報を提供するように務めています。そうした場合、ヤフーの検索ワードデータを分析することで「市民がどのような情報を欲しているのか」を把握し、対策を講じられるのです。

強みは「IDにひもづいたビッグデータ」

――ヤフーのデータを活用することで、企業や自治体のDXはどのように深化すると考えますか。

谷口氏 質問にお答えする前に、1つ明確にさせてください。

 われわれは(検索などによって)蓄積したデータを「ヤフーのデータ」と表現していますが、正確には「お客さまから預かっているデータ」です。ヤフーが提供している検索やニュース、ショッピングといったサービスを利用してもらうことでデータをお預かりし、その分析で得たインサイトで事業を展開しています。

 データソリューションは、お客さまのデータを統計データとした上で、データを可視化したり分析結果を提供したりするもので、個人を識別できるパーソナルデータを提供するものではありません。もしもヤフーのデータ事業がユーザーに不安を与え、サービスを利用してもらえなくなってしまったら、そもそも事業自体が成立しません。データプライバシーやデータセキュリティ強化を最優先にしていることは、ぜひ知っていただきたいと思います。

――なるほど。その前提を踏まえた上で、企業や自治体のDXにデータでどのように貢献しようとされていますか。

 企業や自治体のDX支援は、ヤフーのデータ活用によって業務全体を変革するものではなく、あくまで「データ分析を使うことで、これまでの業務プロセスを効率化する」ことだと考えます。

 例えば、オンラインメディアの場合、PV(ページビュー)やユーザーの(コンテンツに対する)滞在時間などから、読者の興味関心を分析しますよね。そこにヤフーの検索キーワードデータを掛け合わせれば、ユーザー理解を深化させられるだけでなく、これまで気付きにくかったような事象が可視化されます。こうしたデータを基に次の改善策を講じられることが、ヤフーのデータ活用の付加価値だと考えます。

コロナ禍で起こった「データドリブン」への大きな変化とは

――2020年は生活様式が大きく変化しましたが、消費者や企業のデータに対する意識に変化はありましたか。また、コロナ禍はヤフーが提供するサービスに変化をもたらしましたか。

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