生産ライン維持の“努力”がリコールの引き金に? 悪夢から大手メーカーを救ったDX:Supply Chain Dive
「製品の需要が跳ね上がった」「部品の製造元が被災し、供給が間に合わない」――製品の生産ラインや供給ペースが突然乱れてしまったとき、何とか材料を調達しようと奔走するのは当然のことだ。ただしそうした「とっさの対応」が大規模なリコールの危機を招いた企業の例がある。同社を救ったのは、あるデジタル技術だった。
製品をゼロから作り顧客へ届けるまでの過程で、信頼できるサプライチェーンを頼りにしない企業などあるだろうか?
法規制が厳しい業界は、サプライチェーン全体で透明性を維持することが義務付けられているため、可視化ソリューションを導入する以外の選択肢がない場合がある。しかし自動車やファッション、食品といった業界を問わず、あらゆる製造企業には「高品質の製品を提供する」という共通のゴールがある。サプライチェーンの透明性を確保し、データを追跡可能にしておくことは、出荷される全ての製品が品質基準を満たしていることを確認し、事業のリスクを最小限に抑えるベストな手段だ。
膨大な投資や長い導入プロセスが必要になるケースもあるため、サプライチェーンからデータを集約する技術の導入を保留する企業もあるだろう。今回は、私が所属するRockwell Automationで体験したある“悪夢”の話をしたい。
※本稿は、Rockwell Automationのブライアン・マカフリー氏(プロダクションオペレーションマネジャー)によってSupply Chain Diveに寄稿された論説記事です。意見は著者自身のものです。
生産ライン維持が招くまさかの事態 Rockwell Automationを襲った悪夢
Rockwell Automationは、製造業向けのオートメーション機器やソフトウェアを世界規模で展開する。サプライチェーンにデジタル技術を導入する大切さを、まさに身をもって実感した1社だ。
多くの企業は、サプライチェーンの需要を満たすためにグローバル規模のネットワークを持ち、あらゆる国や地域から製品や材料を調達する仕組みに依存している。サプライチェーン自体も複雑なエコシステムだ。だからこそ、企業にとって原材料から完成品に至るまでモノの流れを追跡し、記録する仕組みが必要になる。
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