サプライチェーンを事故や災害から守るには? MSが展開する“デジタルツイン”の使い方:Supply Chain Dive
コロナ禍で多くの企業が調達不足や工場の操業停止といった問題に見舞われる中、MSがデジタルツインを使ったサプライチェーン向けクラウドソリューションを発表した。クラウドやデジタルツインを駆使し、突発的な事故や災害の際にもリスクを最小限に抑えるという、その中身は。
Microsoftは、製造企業がクラウド経由でサプライチェーン全体の状態を把握し、混乱を予測してリスクを軽減できるサービス「Microsoft Cloud for Manufacturing」を発表した。悪天候や災害、コロナ禍で頻発した工場の操業停止といった事態にも対応できる体制を支援する。
Microsoftのチャラヤン・アーカン氏(製造業担当バイスプレジデント)によれば、同サービスは、テクノロジー大手である同社のさまざまなクラウド機能をメーカーの業務に結び付けている。同製品に含まれるアプリケーションの一つである「Dynamics 365 Supply Chain Insights」を使用すると、メーカーは物理的なサプライチェーンのデジタルツインを作成できる。
多くの製造企業が複数の国にまたがった調達網に頼る中、Microsoft Cloud for Manufacturingはデジタルツインやクラウドを駆使して突発的な事態がサプライチェーンに及ぼすリスクを抑えようとするものだ(画像出典:Microsoft)
災害や事故といった事態が発生した場合、企業はデジタルツインで影響をシミュレーションすることで、リスクを最小限に抑える方法を見つけられる。アーカン氏は「ある地域で大雨が降ると、アレルギー薬の需要が低下する可能性があるとしよう。今ある在庫を把握し、天候に何が起きているかを理解すれば、ほぼリアルタイムで必要なアクションを実行できる」と話す。
コロナ禍で「目覚めた」サプライチェーンの可視化需要 これから起こる変化は
Microsoftは、多額を投じて自社のサプライチェーンを可視化した経験を生かし、他社にそのノウハウを提供している。
アーカン氏によれば、2015〜2016年の時点では、Microsoftのサプライチェーンは現在と全く異なり、特定の製品を見つけるのに1週間かかることがあったという。今日、同社にはサプライチェーン専用のオペレーションセンターがあり、SKU(在庫の最小単位)ごとの移動先や到着予定時刻を確認できる。
関連記事
- 小売業者で進む物流ロボット導入 背後にオンライン注文増加の“ジレンマ”か――Gartner
大手小売業者の間で、物流拠点で業務を自動化するロボットの導入が拡大しているという。中には導入範囲の拡大を見越し“ロボット専門部門”の設立に動く企業もある。技術の活用が急速に進む一方、原因であるオンライン販売の増大がもたらした“ジレンマ”とは。 - 配達需要で進む物流DX 米国の大手スーパー「黒字化に4年」でも自動配送センターに1億ドル投資する理由
コロナ禍で配達の需要が高まる中、米国の小売業界で大手スーパーのKrogerが大規模な投資を発表した。英国のネットスーパー大手と提携し、ロボットを駆使した自動化型の配送拠点を複数開設し、初期だけで1億ドルの投資を決めた。同様の施策に二の足を踏む同業他社もある中「それでも店舗に投資するより効率的」と幹部が語る背景とは。 - Amazon vs. Walmart 出願特許に見るサプライチェーン効率化の知恵比べ
米国のリテール業界をけん引するAmazonとWalmartがリテールテックだけでなく物流関連技術の特許出願でもしのぎを削っている。直近の出願特許に見る両社の注力領域は全く別のベクトルを向いたものだった。今後のサプライチェーンの方向性を占う。
© Industry Dive. All rights reserved.