KDDI大規模障害から学ぶ “ビジネスを止めない”ネットワークの在り方:「不真面目」DXのすすめ
先日のKDDIの通信障害はビジネスに大きな影響を及ぼしましたが、筆者はこれを「全て通信事業者のせい」とすべきではないと考えます。ビジネスを止めないネットワークの在り方を通じ、筆者が提案するのは「すごく楽しい企業ネットワーク業務の在り方」です。では、なぜ現状のネットワーク業務は「楽しくない」のでしょうか。
この連載について
この連載では、ITRの甲元宏明氏(プリンシパル・アナリスト)が企業経営者やITリーダー、IT部門の皆さんに向けて「不真面目」DXをお勧めします。
「不真面目なんてけしからん」と、「戻る」ボタンを押さないでください。
これまでの思考を疑い、必要であればひっくり返したり、これまでの実績や定説よりも時には直感を信じて新しいテクノロジーを導入したり――。独自性のある新しいサービスやイノベーションを生み出してきたのは、日本社会では推奨されてこなかったこうした「不真面目さ」ではないでしょうか。
変革(トランスフォーメーション)に日々真面目に取り組む皆さんも、このコラムを読む時間は「不真面目」にDXをとらえなおしてみませんか。今よりさらに柔軟な思考にトランスフォーメーションするための一つの助けになるかもしれません。
筆者紹介:甲元 宏明(アイ・ティ・アール プリンシパル・アナリスト)
三菱マテリアルでモデリング/アジャイル開発によるサプライチェーン改革やCRM・eコマースなどのシステム開発、ネットワーク再構築、グループ全体のIT戦略立案を主導。欧州企業との合弁事業ではグローバルIT責任者として欧州や北米、アジアのITを統括し、IT戦略立案・ERP展開を実施。2007年より現職。クラウド・コンピューティング、ネットワーク、ITアーキテクチャ、アジャイル開発/DevOps、開発言語/フレームワーク、OSSなどを担当し、ソリューション選定、再構築、導入などのプロジェクトを手がける。ユーザー企業のITアーキテクチャ設計や、ITベンダーの事業戦略などのコンサルティングの実績も豊富。
2022年7月2日深夜に発生したKDDIの通信障害は、約4000万回線に影響が及ぶ過去最大級のネットワーク障害となりました。本原稿の執筆時点(7月5日夕方)、3日半ぶりに正常運用に戻りました。筆者の知人たちも「スマートフォンで電話やインターネットが使えない」と悲鳴を上げていました。個人への影響も深刻ですが、金融機関や運輸会社、公共機関など社会インフラともいえる企業や組織に重大な影響が出たことは大きな問題です。
過去最大級のネットワーク障害でビジネスが止まる
通信障害の原因分析やKDDIの対応などについてはその道の専門家にお譲りするとして、今回の障害から学ぶべきことについて書きたいと思います。
これまでにもネットワーク障害は何度も発生しています。モバイル通信に限っても、2021年10月14日にNTTドコモの回線で約1300万人に影響した障害が、2018年12月6日にはソフトバンクの回線で約3000万人に影響した障害がそれぞれ発生しています。
過去に何度も通信障害が起きているにもかかわらず、モバイル通信を利用する企業システムに大きな問題が発生したことに、筆者は「大きな衝撃」を受けました。
全て通信事業者のせいにする「まずさ」とは
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