ITモダナイゼーションで後れを取る日本 PwCが企業に必要な5つのポイントを解説(2/2 ページ)
日本のデジタル競争力は世界でも弱くなっている。一体何が原因なのか。何をしなければならないのか。日本企業に必要な5つの提言を紹介する。
日本のITモダナイゼーション 5つの傾向とは
中山氏は同調査から分かった日本企業におけるITモダナイゼーションの傾向として、図6の5つを挙げた。
この中で同氏が解説したのは「2 育成プログラムの全社展開と、社員が現場で経験を積むことで効果が出ているデジタル人材育成」「4 抜本的な刷新に苦慮しており、技術的負債から抜け出せない基幹システム」「5 過去のトラウマから、本格運用に踏み切れないアジャイル開発」だ。
育成プログラムの全社展開と、社員が現場で経験を積むことで効果が出ているデジタル人材育成
図7を見ると、先進と準先進では全社的もしくは事業部門ごとにデジタルスキル育成プログラムを展開している割合が高いことが分かる。
一方で、デジタル人材の採用や育成においてはそれぞれで大きな差があると分かった。
この差に関して中山氏は「社内でのプログラムの展開は非常に重要だ。一方でそれで終わってしまってはスキルの定着につながらない。得た知識を現場で使うことが重要だ」と話した。
抜本的な刷新に苦慮しており、技術的負債から抜け出せない基幹システム
企業が抱える、基幹システムの課題の上位3つは「ブラックボックス化」「レガシー技術者の確保」「保守切れ対応」となり、ITモダナイゼーションの成熟度ごとに差は見られなかった。
過去のトラウマから、本格運用に踏み切れないアジャイル開発
アジャイル開発手法の展開状況として、2021年より「PoC(Proof of Concept)実施中」は増加したが「全面展開中」「一部展開中」と回答した企業は減少した。
一方で、アジャイル開発導入に向けて社内プロセスの変更に着手して準備を進めている企業は増えている。
「予算承認のプロセスや品質管理のプロセスなどに関して、アジャイル開発導入のために組織中で変更する必要がある点もあるだろう。その中でこのように着々と準備が進むことは良い傾向だ」(中山氏)
準備は進んでいるが、本格運用に踏み切れない理由に「過去のトラウマ」を中山氏は挙げた。以下の図12が原因の一覧だ。
日本企業が今後取り組むべきこと 5つの提言
ITモダナイゼーションを成長させるために日本企業は何に取り組むべきなのか。PwCの岡田 裕氏(シニアマネジャー クラウドトランスフォーメーション)は以下の5つを提言した。
- 現場で活躍できるデジタル人材を速やかに育成せよ
- 速やかにアジャイル開発手法の推進に着手し、自社のスタイルを確立せよ
- パブリッククラウドで提供される新しいテクノロジーを積極的に活用し、イノベーションを加速せよ
- ブラックボックス化と保守切れ対応の呪縛から解放されるために、勇気をもって基幹システムを刷新せよ
- デジタル時代に備えて、業務部門とIT部門の在り方を再定義せよ
その中で同氏が解説したのが提言1と5だ。
岡田氏はデジタル人材の育成に向けて、「『座学』と『実践』を繰り返すことでスキルが定着し、現場で活躍するデジタル人材になっていく」と話す。「システム構築や運用といった作業を自社の従業員が担当することで人材育成が加速される」というのが同氏の意見だ。
提言5のIT部門の在り方に関して同氏は、「ITは時代と共に変化している。今はクラウドの時代となり、まさにIT部門の在り方を再定義するタイミングだ」と話す。同氏によれば、最終的には業務部門にデジタル推進大戦を構築することが企業にとって重要になる。一方で、そのプロセスは中長期的なものとなるため、企業は速やかに着手することが求められる。以下の図14がプロセスの解説だ。
組織変革とクラウド利用がカギ
提言2のアジャイル開発の推進と自社スタイルの確立について、PwCの鈴木 直氏(ディレクター クラウドトランスフォーメーション)は、「変化の激しい時代だからこそ、アジャイル開発の理念や手法を理解して積極的に全社で推進することが重要だ」と述べる。
アジャイル開発推進の本質として同氏は「顧客起点で施策を講じて変化に対応することが目的であり、そのために、事前に正解を定義するのではなく、実際に起きた事象に目を向け、振り返り、そこから得た学びを次の活動につなげることがポイントになる」と続けた。
今後求められる仮説検証型アプローチと従来の計画駆動型アプローチの違いは以下の図16だ。
鈴木氏は、提言3の「パブリッククラウドで提供されるテクノロジーの積極的活用」と、提言4の「基幹システムの刷新」に関して、「保守切れ起点のシステム更新から脱却するために、基幹システムの抜本的な刷新に取り組むとともに、パブリッククラウドを活用したイノベーションの加速を推奨する」とし、「基幹システムの刷新も、一度に行うのではなく、ビジネスニーズに応じて徐々に進めることが重要だ」と続けた。
「基幹システムの刷新は時間を要する。だからこそ、できるところから早期に着手してほしい」(鈴木氏)
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