花王がPower Platformで市民開発を推進 アナログな生産現場をどう変えた?
花王が生産現場のデジタル化を実現した。「Microsoft Power Platform」を使ったというが、どのようにしたのか。
日本マイクロソフトは2022年11月16日、花王が「Microsoft Power Platform」(以下、Power Platform)で生産現場のデジタル化を実現したと発表した。これまで花王の生産工場では、業務プロセスの一部をアナログ作業で行っていた。
花王がMicrosoft Power Platformの採用を決断したワケ
少量多品種の化学品製造を担当しているファインケミカルでは、製造記録表、設備や分析機器の検査記録表、原材料の在庫管理カード、危険物の保管リストなど、あらゆるものに紙ベースの書類が使われており、これら書類の中から必要な書類を見つけるのが困難だった。
そんな中、花王の竹本滋紀氏(技術開発センター 先端技術グループマネジャー)は業務効率化を実現できる理想的な方法であると考え、Power Platformに内包されるローコード開発ツール「Microsoft Power Apps」(以下、Power Apps)を用いたアプリ開発を学んだ。実際に花王のSCM(Supply Chain Management)部門は、2021年ごろからPower Platformを推進し、SCM部門の市民開発者が国内10箇所の工場で260個以上のアプリを開発し、和歌山工場では59個のアプリを開発した。
開発したアプリによって、原材料の在庫管理の業務を完全にデジタル化することに成功した。約480時間の作業時間の効率化に加え、生産現場では危険物の種類および数量管理についても、アプリに機能追加することでより正確な管理を実現したという。
今後、花王はさらにDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進すると同時に、Power Platformの全社展開に取り組む予定だ。
竹本氏は「(アプリの)導入支援体制をつくり、組織的にバックアップしている。各工場内でキーユーザーを育成し、その人が推進役となって周囲の人を教育していく。また、サポートサイトを開設して開発ルールやナレッジの共有などを積極的に行っている。生産現場でデジタルトランスフォーメーションが進行中だ」と話す。
関連記事
- 「Microsoft Power Platform」は何ができる? 花王の事例から読み解く
Microsoftのローコード開発ツールである「Microsoft Power Platform」の利用が、業界や業種、企業規模を問わず拡大している。トヨタ自動車はPower Platformを利用することで、約2年間で7600人以上のアプリ開発者を育成した。これによりボトムアップ型のDX推進が実現できるという。本稿では花王での取り組みと変化を紹介する。 - 日本マイクロソフト岡嵜氏「Microsoft CloudがDo more with lessで企業のDXを推進」と宣言
Microsoftが、業種別の包括的なクラウドサービス提供に向け、「Microsoft Cloud」による生産性向上支援を進める。日本マイクロソフトのクラウド&ソリューション事業本部長に就任したばかりの岡嵜 禎氏が全体像を語った。 - Microsoft Igniteが開催 ナデラCEOが示したビジョンと新サービス
Microsoft Igniteが世界6カ所で同時開催された。Microsoftが今回のイベントで新たに掲げたビジョンとそれに向けた新サービスや製品とは何か。ナデラCEOの講演で確認しよう。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.