ミッションクリティカルなITシステムのクラウド化が進む2023年 OCIの採用がさらに加速する:トップインタビュー2023(2/2 ページ)
クラウドベンダーとして注目を集めてるOracle。第4のプレイヤーとしてその名が挙がることも多いが、一体何が優れているのか。「Oracleは第2世代」と話す日本オラクルの三澤智光氏に、Oracleの強みと第1世代との決定的な違いを聞いた。
コンパクトなデータセンターのクラウドがもたらすメリット
第1世代のクラウドが提供するサービスには、はっきりとした大きな違いはなく、同価格帯なものが多い。「Google Cloudには、『BigQuery』があるじゃないか」という意見もあるかもしれないが、三澤氏は「今は『Snowflake』のようなサービスがあり、Oracle Cloudなら『MySQL HeatWave』もあります。BigQueryだけではもはや差別化になりません」と話す。
対して第2世代のOCIは、前述のように「既存のミッションクリティカルシステムのスケールアップ型ワークロード」に対応する。実際に、製造や金融、公共、流通などの多くの企業のミッションクリティカルシステムで「Oracle Database」が動いている。それらをリフトで"容易"にクラウド化できるのがOCIでもある。
「2023年以降、このような案件はさらに増えるでしょう」と三澤氏は話す。実際にグローバルではその傾向が現れており、それが「第4のプレイヤー」とされる理由でもある。
OCIと他のクラウドサービスが異なるもう一つの点が、「クラウドサービスをコンパクトなデータセンターで提供できること」だ。第1世代のハイパースケーラーは、巨大なデータセンターでサービスを展開し、それに高い拡張性やコスト効率性を追求してきた。しかし、巨大なデータセンターはそれを設置する土地を見つけるのも大変で、大きな投資も必要となる。当然ながら大規模な電力供給の仕組みも欠かせない。
一方、第2世代のOCIはコンパクトなデータセンターでサービスを構成でき、それを複数使って拡張性を確保する。
「コンパクトなので短期間でクラウドデータセンターを構築でき、顧客のすぐ近くに置けます。近ければレイテンシの問題も発生しません。第1世代が3つのデータセンターを作る間に、OCIはその10倍くらいのデータセンターを作れるイメージです」(三澤氏)
第2世代がコンパクトなデータセンターでクラウドサービスを作れるのは、クラウドのコントロールプレーン部分に違いがあるからだ。コントロールプレーンはクラウドサービス制御の"コア"であり、Oracleはそれをコンパクト化している。コンパクトなデータセンターであれば、顧客のデータセンターでOCIをそのまま動かす「Dedicated Region Cloud@Customer」(Dedicated Region Cloud)を提供できる。
三澤氏はこれについて、「ハイブリッドクラウドのソリューションは他にもありますが、それらはハイパーコンバージドインフラです。Dedicated Region Cloudは、OCIのパブリッククラウドと同じ"本物のクラウド"を動かせます」と話す。実際に同じものを使い、パートナー企業が全てを制御できるサービスに「Oracle Alloy」がある。同氏は「今後ニーズが高まるとされるセキュリティやコンプライアンス、ソブリンクラウドなどに関しても、このOracle Alloyが最適な選択肢になるでしょう」と自信を見せる。
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さらに、OCI上でSaaS形式で提供されるのERP「Oracle Cloud Applications」を提供できる点もOracle Cloudの強みだ。従来、アプリケーションパッケージの導入では、パッケージの機能を分析して追加開発が必要な部分を見分ける、「フィット&ギャップ」のアプローチが採用されてきた。しかし、この方法では導入に時間を要し、アドオン開発の増加によってコストもかさむというデメリットがあった。またカスタマイズは将来的なバージョンアップやシステム更改の妨げにもなる。
これに対し、Oracle Cloud Applicationsは短期間での導入が可能で基幹システムのプロセスそのものをシンプルにする。ギャップはパッケージにアドオンで構築するのではなく、OCI上で機能を構築して疎結合でSaaSと連携させる。これにより、バージョンアップでも問題は発生せず、SaaSとして常に最新バージョンを利用しながら自動化のテクノロジーなども迅速に活用できる。
Oracleは、クラウドをIaaSやPaaSだけでなくSaaSも含めて捉えている。SaaSを含めてクラウドの領域を広げられることも、第4のプレイヤーとしての評判を高めている。
OCIを採用した企業の多くが、脱Oracleを検討していた
Oracle Databaseはこれまで、「サポート料金が高いから乗り換えたいデータベース」として名前が挙がることが多かった。この現状を日本オラクルはどう捉えているのか。
日本はプロジェクト単位でITシステムの導入が進められることが多く、実際にOracle Databaseもプロジェクトごとに採用されて企業に導入されているケースが多い。三澤氏は「このような導入方法では、実際にサポート費が高くなるケースがあります」と認識している。三澤氏によれば、米国をはじめとする諸外国ではOracle Databaseを利用する場合に包括契約を結ぶことが大半なようで、「日本でも包括契約に移行した大半の企業に満足していただいています」と三澤氏は解説する。サポート費用が高い課題については、契約形態を変えることで対応できるようだ。
一方で、同氏は「Oracle Databaseでなくてもいいサービスであれば、変更も仕方がないでしょう。しかしその際は、そのアプリケーションがスケールアウト型かスケールアップ型かをしっかり検討することが重要です。エモーショナルに乗り換えるのはお勧めできません」と語る。
また、「サポートを誰がどこまでやるのか」を見極めることも大切だ。Oracle DatabaseやMySQLならば、開発しているOracleが責任を持ってサポートする。一方、「PostgreSQL」やそれをベースとするサービスは、誰がどこまでサポートしてくれるかを確認する必要がある。
高度なサポートが必要な場合、結局コストがかかる。この点を踏まえて三澤氏は、「日本でしっかりとした体制を持ってサポートを提供するデータベースベンダーはOracleのみです。『そこが大切だ』と思ってくれるユーザーもたくさんいます」と話す。
OCIの採用を決めた顧客企業のほとんどが、実はクラウド化を機に"脱Oracle"を検討していたという。「Oracleのオルタナティブを基に考えると、現状のITコスト構造がおかしい事に気付きます。その上で、OCIに乗り換えたコストを見るとトータルで大きく削減できると分かります。ミッションクリティカルなシステムをクラウド動かすために、スケールアウトだけでなくスケールアップもできるインフラが必要であり、両方を提供できるのはOCIしかないと気付いていただきました」(三澤氏)
2022年10月に米ラスベガスで開催された「Oracle CloudWorld 2022」では、同社のCTO(最高技術責任者)であるラリー・エリソン氏が「世界中のヘルスケア領域の課題解決に今後は注力する」と明らかにした。「これはベンダーの都合として取り組むものではなく、人類に貢献する取り組みです。Oracleがそういう会社であることは、従業員としても誇らしいです」と三澤氏。Oracleの変革はポジティブなものであり、そのことを日本オラクルも力強く社会に伝えていくと言う。
三澤氏は最後に「テクノロジーの力で人類が直面する脅威に対抗します。それがOracleです」と話し、インタビューを終えた。
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