気付いていない企業は対応もできない 日本企業のデータ課題4つ
DX(デジタルトランスフォーメーション)が進むにつれて、データ活用の重要性が増している。一方で活用までの過程には課題もある。4つあるという日本企業のデータ課題を解決するかもしれないのがNetAppの「NetApp BlueXP」だ。
ネットアップは2023年1月25日、同社の年次イベントである「NetApp INSIGHT Japan」を開催した。同イベントでの最大の目玉は、同社の最新サービス「NetApp BlueXP」(以下、BlueXP)が発表されたことだ。データのガバナンス確保や可視化、セキュリティの強化などを容易に実現するという同サービスだが、どのようにして日本のエンタープライズ企業のビジネス成長をサポートするのか。NetAppのクラウドソリューション開発担当上級副社長であるローネン・シュワルツ氏が「ITmedia エンタープライズ」の単独インタビューに応じた。
データ活用の大きな味方となるか 全データを一元管理するNetApp BlueXP
シュワルツ氏はインタビューの冒頭で、「日本市場は非常に大きく、重要なカスタマーも多い。われわれは日本でビジネスをさらに拡大し、企業のデータ課題を解決したい」と話し、”日本市場の重要性とデータ課題”という話題から切り出した。NetAppにとって、日本市場が重要な理由は多くのカスタマーがいるからというものだけではない。シュワルツ氏は「日本のIT企業のテクノロジーやサービスは非常にクオリティが高く、クラウドベンダーとして彼らのニーズを満たすサービスを提供することは簡単ではない。だからこそ日本市場で挑戦することはわれわれにとって価値がある」と日本市場を評価した。
一方で、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進に取り組む多くの企業がデータ課題を抱えている。シュワルツ氏は日本企業が持つデータ課題に「拡大し続けるデータの管理」「データの分断化」「強まるデータへの規制」「セキュリティの強化」の4つを挙げた。
拡大し続けるデータの管理について、シュワルツ氏は「この流れは今後も強まる」と警鐘を鳴らす。DX推進が企業で当たり前になるにつれて、データの蓄積や活用の重要性が増している。一方で、「多くの企業はデータの蓄積にフォーカスしてきたが、それらを活用するための『適切な管理』まではなかなか注力できていない」というのがシュワルツ氏の見解だ。
データの分断化について同氏は、「データの蓄積は決して難しいものではない。ただそれらをすぐに使える状態で保存し、実際にビジネスに活用できていなければ意味がない」と指摘する。この現象は組織規模が大きくなり、グローバルにビジネスを行うようになるとさらに強まる。
「グローバルのビジネスをしているような組織では、データの蓄積は容易な一方で、それらのデータが一カ所ではなくさまざまな場所に点在している。これではデータを蓄積しても意味がなく、セキュリティ面でも危険だ」(シュワルツ氏)
強まるデータへの規制についてシュワルツ氏は、「データに関する規制は常に変わっている。さまざまな企業が世界的にビジネスを展開しているにもかかわらず、欧州やアジア、アメリカで規制が違う。組織はこれらのコンプライアンスを常にチェックし、対応していかなければならない」と話す。
セキュリティの強化について同氏は、「今や組織でも最も重要なアセットはデータだ。複雑化するサイバー攻撃に対して、どのように守りを固めていくかは、組織規模に関係なく重要な取り組みだ」と話した。
DXへの取り組みの中でIT人材不足を課題に挙げる組織も多い中で、上記の課題にそれぞれ人材を当てて対応するのは困難だ。
「このような状況で活躍するのがBlueXPだ」と話すシュワルツ氏だが、どのような機能を持っているのか。
BlueXPが果たす役割
BlueXPはハイブリッドやマルチクラウド環境に対応した統一データ管理データベースで、主に「簡素化」「セキュリティ」「サステナビリティ」「最適化」という特徴を持つ。
簡素化
SaaSで提供するBlueXPのグローバルなコントロールプレーンは、ハイブリッドやマルチクラウド環境を一元的に可視化できる。具体的には、オンプレミスストレージの「NetApp AFF」「FAS」「StorageGRID」「Eシリーズ」や主要クラウドの「Amazon FSx for NetApp ONTAP」「Azure NetApp Files」「Google Cloud Volumes Service」「Cloud Volumes ONTAP」などを全て1つのコンソールで管理する。
セキュリティ
統合されたゼロトラストモデルによるデータ保護に加え、セキュリティを一元管理する。また、単一のランサムウェアダッシュボードで脆弱(ぜいじゃく)性を全社にわたって可視化し、ワンクリックで多くの問題を自動的に修正することも可能だ。
サステナビリティ
BlueXPでは、ハイブリッドやマルチクラウド環境でのIT資産におけるエネルギー消費とその影響をインテリジェントに観察、分析することが可能だ。昨今、重要性が増すサステナビリティに対して、組織はこのサービスのみで現状を把握し、アクションを取ることができる。
最適化
BlueXPは、テクノロジーやインフラで自動化を適応でき、データ管理への労力やリソースを削減し効率化を実現する。
「以前までは、データは常にアプリケーションの裏に隠されているのが一般的だった。しかし、今はデータが中心にあり、そこに各アプリケーションがつながっている。それによって、自動的にメタデータを作成できるようになった。そしてこれらのデータはユーザーのビジネス成長に欠かせない。BlueXPではこれらデータも容易に把握することができる」(シュワルツ氏)
NetAppの今後は
BlueXPの強みは何といってもそのインテグレーションにある。以下の図2はBlueXPとハイパースケーラーとのインタグレーションの現状をまとめたものだ。
シュワルツ氏はこれについて「NetAppがユニークな理由はまさにこのインテグレーションにある。ただ自社サービスをハイパースケーラーに後付けして出すのではなく、NetAppは彼らにとって必要な存在になっている。その結果がこのインテグレーションを実現している」と評価した。
また、レジリエンシーを意識したシステム設計にも違いがあるとシュワルツ氏は話す。
「これまで一般的なサービスでは、セキュリティサービスがデータの周りに壁のように配置されていた。これではその壁を突破されたときにデータへ攻撃されてしまう。NetAppのシステムはデータの周りに壁を作るのではなく、データそのものにセキュリティを確保する。仮にデータへアクセスされたとしても、暗号化されているデータは決して削除できず、攻撃者はそのデータを使えない」(シュワルツ氏)
シュワルツ氏は今後のNetAppについて、「データの量や重要性、複雑さは今後も増加していく。そうなれば、必然的にBlueXPをはじめとするサービスの必要性は増える。その中でNetAppは各製品のインテグレーションや使いやすさを向上し、企業の成長を支えていくことになる」と自信を見せる。
「NetAppはただストレージを提供しているのではなく、データに関するさまざまなサービスを提供している。ユーザーは各社のサービスをスムーズで快適に使いたいと考えており、実際にそれがDXの成功につながる。NetAppはそこで必要とされるクラウドベンダーになる」(シュワルツ氏)
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