「急ブレーキを踏んだ瞬間、本社に通知」 リアルタイム監視システムを体感してみた:Transport Dive
米国の輸送会社XPOは港湾労働者とドライバーをリアルタイムに監視するシステムで生産性向上を図っている。トラック運転を体験し、リアルタイム監視システムによって急ブレーキを本社に通知された筆者が考えることとは。
「Transport Dive」のコリン・キャンベル記者は、LTL(注1)輸送会社XPO (旧社名:XPO Logistics)の最大規模の施設を訪問し、同社が“自慢のテクノロジー”で港湾労働者とドライバーをリアルタイムで監視する様子を見学した。
電話を受けてから数分以内に集荷を手配
ここはペンシルべニア州グリーンキャッスルだ。州間高速道路81号線付近のヘーガーズタウン・ターミナルのオフィスに置かれたデュアルモニターコンピュータで、XPOのカイル・ガーネット氏(貨物オペレーション担当)は港湾労働者の生産性とドライバーの作業進捗(しんちょく)をリアルタイムに追跡している。
XPOの労務管理ソフトウェアによって、同ターミナルではフォークリフトの増設が必要だと判明した。2022年12月、同社はペンシルべニア州の隣にあるメリーランド州西部の工場からフォークリフトを移設した。集荷依頼の約3分の2はトラックが配車された後に来るため、XPOのルート最適化プラットフォームは配車担当者にとって特に役立つという。
「私たちはいつも、電話が鳴ってから数分以内に対応している」(ガーネット氏)
XPOの国内最大級の施設であるヘーガーズタウン・ターミナルを見学し、トラックで移動している間、同社が自慢のテクノロジーを駆使してネットワーク全体の可視性と効率性を最大限に高める方法を垣間見ることができた。
マリオ・ハリック氏の後任としてCIO(最高情報責任者)に就任したジェイ・シルバークライト氏は、グラフ理論やバタフライ効果について語り、「297カ所のターミナルと67カ所の貨物集積センターで貨物の動きを最適化するためにアルゴリズムを常に調整している」と説明した。
一見難しそうに聞こえるが、同氏は「それほど複雑なことではない」と明言する。「LTL輸送ではネットワークを通じて貨物をどのように流すか、どこで密度を高めるか、ネットワークの走行距離をどのように減らすかなどを最適化することが重要だ」(シルバークライト氏)
労働者を適切に配置して生産性が向上
フォークリフトに乗った港湾労働者が、重なった総菜容器のふたのパレット(荷役台)を待機中のトレーラーに積み込んでいた。
港湾労働者全員が携帯型スキャナーを装備しており、荷物の行き先が分かるようになっている。
XPOのEdgeDockOpsテクノロジーを使った携帯型スキャナーは、港湾労働者に荷物の移動先を指示し、生産性指標をXPOに報告する(出典:Colin Campbell、Transport Dive)
また、計測された測定値はスキャナーからXPOへ送信される。港湾労働者が出勤してからパレットをスキャンするまでにかかる時間や、スキャンから次のスキャンまでの間にかかっている時間などが報告される。
XPOのアロン・アマルナニ氏(戦略、持続可能性担当バイスプレジデント)は、同社の労務管理システムは、夜間に最も忙しくなるターミナルの勤務スケジュールをより適切に立てるためのものだと述べる。
「バカげているように聞こえるかもしれないが、労働者を正しく配置すれば、基本的には空き時間が生まれる。ドライバーが港湾労働者の荷降ろしを待っているようなことはない。労働者をうまく配置することで生産性を高められる」(アマルナニ氏)
QRコードは各ターミナルのドアの上にあり、最近は各パレットにも表示されるようになった。その結果、港湾労働者の仕事を簡素化し、輸送会社のオペレーションをより可視化できるようになったという。パレットにラベルを貼ることで、4つのパレットのうち3つしか顧客に届かないといった課題を軽減できるなど、顧客にもドライバーにもメリットがあるようだ。
急ブレーキを踏むと本社に通知 円滑な配達を支えるテクノロジー
筆者は、XPOのドン・ギフィン氏(ドライバートレーナー)の監視とサポートを受けながらフレイトライナー製のトラックである2022年型「Cascadia」のペダルを床に踏みつけた。
Cascadiaは28フィート(約8.5メートル)の空のトレーラー(パップ)をけん引してターミナルの広い駐車場を横切った。筆者はトラックの運転やバックの仕方まで教えてもらえるとは思ってもいなかった。
「Giff」と呼ばれる機能を見て、XPOのテクノロジーがいかに先を見ているのかを改めて思い知らされた。トラックがスピードを上げた時、ギフィン氏は助手席から「ブレーキを強く踏め」と筆者に指示した。筆者がブレーキペダルを踏み込んだところ、「過酷な事象を検出しました」とアラートが表示されてトラックは停止した。
XPOにも同様のアラートが届き、運転席のカメラと外向きのカメラで撮影された事象発生前後5秒間の映像が送られた。
ターミナルオフィスに戻ったガーネット氏は、トラックの最適化されたルートと、XPOの各ターミナルのサービスエリアを含む便利なジオオーバーレイ(注2)付きのこの地域のデジタルマップを取り出した。トレーラーに設置されたGPSでドライバーの仕事の進捗状況を確認し、すでに出発しているドライバーに追加の集荷や配達を連絡する方法を説明した。
「非常事態になった際、それをカバーできるよう対応することにやりがいを感じている。われわれは素晴らしいチームで毎日が新鮮だ」(ガーネット氏)
数字で見るXPOのヘイガーズタウン・ターミナル
LTLドア:166
ドライバー:145人
港湾労働者:71人
トラック:71台
トレーラー:300台
(出典: XPO ヘーガーズタウン・ターミナル シニアサービスセンターマネージャー トラビス・ヒンクル氏)
(注1)小口混載輸送(Less-Than full truck Load)。
(注2)ある属性の地点を示す地図のレイヤーのこと。ここでは、この地域におけるXPOのサービスエリアの場所を示すレイヤーのこと。
(初出)An inside look at how XPO uses technology in its terminals and trucks
© Industry Dive. All rights reserved.