7割以上の企業が抱える「無駄なSaaSアカウント」 その損失コストが判明
メタップスの調査によると、11個以上のSaaSを導入している企業は2020年比で増加していることが分かった。7割以上の企業がSaaSの「未使用アカウント」を保有しており、そのコストも判明した。
メタップスは2023年2月8日、企業のSaaS(Software as a Service)利用実態に関する調査結果を発表した。
同調査は、SaaSを導入、利用している従業員数50人以上の国内企業のIT担当者530人を対象に2022年12月12日〜25日に実施された。調査結果は「2022年度 SaaS利用実態調査レポート」として公開された。
「無駄なSaaSアカウント」にいくら費やしている?
今回のレポートは、2020年に実施した同様のSaaS利用実態調査との比較で、2022年までの2年間でSaaSの利用方法にどのような変化が起きたかを分析している。
2020年の調査で企業のSaaS導入数は「1〜10個」との回答が8割を占めていたが、2022年の調査で「1〜10個」との回答は3割以下に縮小した。一方、SaaSを「11個以上」導入している企業は2020年の21%から2022年は53.7%と、2020年比で32.7%増加した。
SaaSの導入、利用目的は、2020年は約7割が「業務効率化」だったが、2022年には「業務効率化」は半分以下となり、2020年に2割以下だった「コスト削減」が2022年には約3割に伸びた。
SaaS運用における課題については、2020年は「利用許可を取っていないSaaSが利用されている」が6割を占めていたが、2022年にはその割合は15.8%にまで減少した。
一方、2020年、2022年とも約6割の企業がSaaS運用の課題として「システム運用/管理コスの削減」(2020年は60.0%、2022年は58.8%)、「システムを運用する人材の不足」(2020年は55.0%、2022年は57.6%)を挙げた。
「利用実態が把握できていない」企業も
今回の調査では、SaaSの導入数が急増する中で企業がどのようなセキュリティ面の課題を抱えているかが明らかになった。
企業の7割以上がSaaSの「未使用アカウントを保有している」と回答し、「未使用アカウントはない」との回答は4.5%にとどまった。また、「分からない」との回答は22.5%となり、アカウントの利用状況が把握できていない(管理できていない)企業が一定数存在することが分かった。
未使用アカウントを金額に換算すると、「5万〜8万円」との回答が21.6%と最も多く、「10万円以上」も12.5%となった。
パスワードの再発行や入退社手続きで発生するSaaSのID、パスワード管理の対応に「月に10時間以上掛かっている」との回答が約4割に上った。
テレワークが浸透するSaaS導入企業で、残業時間が増加する理由は?
今回の調査では、コロナ禍の働き方とSaaSとの関係を把握するため、SaaS導入企業が採用している働き方と、その課題についても調査した。
SaaS導入企業では、在宅と出社を選択できる「ハイブリッド型」企業が64,3%と過半数を占め、「フルリモート」(テレワークのみ)(18.7%)を含めると8割以上の企業でテレワークを導入していた。「フル出社」は2割以下(16.2%)となり、多くの企業では現在もテレワークが継続されていることが分かった。
テレワークが浸透し、多くの企業でSaaSの導入数が増えて便利になった一方で、「残業時間が増えた」と回答したIT担当者も16.2%と、一定数いることが分かった。
IT担当者の残業時間が増えた理由として最も多かったのは「SaaSの運用がIT担当者任せになっているから」(33.7%)だった。次いで、「複数SaaSの管理が大変だから」(25.6%)、「SaaSに関する社内レクチャーに時間がかかるから」(24.4%)などが続いた。
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