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あなたのCRMは顧客を正しく理解してますか? Microsoftのビジネスアプリケーション(CRM編)DX 365 Life(3)(1/3 ページ)

攻めのDXの実現に、なぜMicrosoftのビジネスアプリケーション(CRM)が効果的なのか。組織で必要とされる理由と有効なアプリケーションを解説する。

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 昨今、メジャーなグローバル企業はDX(デジタルトランスフォーメーション)よりGX(グリーントランスフォーメーション)に注力していると見受けられますが、日本ではようやくDXが一般化し、「ITの内製化」が企業の成長に不可欠だと認識する人が増えてきたようです。

 一方、利益確保が最重要課題な経営者にとって、営業やマーケティング、カスタマーサービスなどの部門で数値目標達成シミュレーションがうまく実装、運用できていない状況は致命傷です。特に、SFA領域のCRM導入では、システム導入しても運用が定着化せず、顧客接点の情報が取れていない状況をよく見ます。結果的に「守りのDX」(ERP)と「攻めのDX」(CRM)を連携できず、「バラバラ殺データ事件」に遭遇しているようです。

 「正しくCRMを導入・運用する」ために、企業は何に取り組むべきでしょうか。そのヒントがMicrosoftのビジネスアプリケーションの中にあるかもしれません。DX 365 Lifeの第3回となる本稿は、「Dynamics 365」のCRM領域(MicrosoftではCRMという言葉は使っていませんが)について紹介します。

この連載について

 本連載は12回にわたって、Microsoftのビジネスアプリケーションに関する情報を発信し、製品やサービス、学習ツールだけでなく、導入ベンダーやその事例、コミュニティーの活動にも触れていきます。

筆者紹介吉島良平(Chief Operating Officer)

約20年にわたって日本を含む31か国でMicrosoft社製ビジネスアプリケーションの導入・開発・コンサルティングに従事。2022年11月よりシンガポール企業『Technosoft (SEA) Pte. Ltd.』のCOOに着任。

Microsoft Regional Director

Microsoft MVP for Business Applications

Blog: DX 365 Life - マイクロソフトのBizAppsを活用し、企業のDX実現に向けて国内外を奔走する室長Blog



単にデータを登録・入力するだけのCRMじゃダメな理由

 不確実性の高い時代にスピーディーな企業経営を行うには、「正確な売り上げ見込み情報」が必要です。一方、営業は顧客折衝や提案活動で忙しく、「CRMにデータを入れないと上司に怒られる」「データ登録は面倒くさいだけで営業現場にメリットはない」という感覚のようです。登録したデータを可視化できず、仮にできても「間違いだらけ」では無理もありません。

 このような状況を改善したいと、多くの相談をいただいた経験から「プロジェクトがうまくいかない理由」はプロジェクトの背後にある「プログラムマネジメント」に起因することが多いと言えます。

 日本人は勤勉で努力する国民性もあってか、プロジェクトに関してはスケジュールや納期を守るために必死です。一方、目標の定義や可視化、結果分析、評価、改善などは苦手です。つまり「PDCA」(Plan、Do、Check、Action)が足りていません。


図1 PDCAサイクル(出典:筆者作成)

 PDCAはウィリアム・エドワーズ・デミング氏が1950年代に提唱したビジネスフレームワークです。同氏は日本の品質管理にも貢献し、「品質管理の父」と呼ばれています。

 企業がPDCAを回さずに、「DS(Do→See/見るだけ)を繰り返す」というケースをよく見かけます。ソフトウェアの開発であればアジャイルもいいですが、事業運営においてPDCAの実行は不可欠です。PDCAサイクルを強化すれば、「一人一人のKPI(重要業績評価指標)達成で中期経営計画や会社の目標も達成できる仕組み」ができ、プログラムマネジメントを機能させられます。

 プロジェクトには人事評価や業績評価なども組み込まない限り、本当の意味でプロジェクトは成功しません。見落としがちなのが、各部門のシステム導入は営業部門とIT部門だけでは推進できない点です。

 これに関して、各組織が独自でプロジェクト化すればバラバラ殺データ事件に遭遇する可能性が増えます。また、IT部門や経営企画部門で同じBIツールを使い、「確認と実行」する必要があります。筆者は、各部門が異なるBIを使ったことで、あるべきシステム運用が形骸化されたというケースを多く見てきました。


図2 (出典:2022年のBuri Kaigの筆者作成資料)

 CRMとは「Customer Relationship Management」を指し、顧客関係管理と訳されますが、なぜ企業に必要なのでしょうか。

 一般的には「顧客と良好な関係を構築し、ロイヤルカスタマーを創出」するためです。顧客との接点を取得し、そのデータを可視化してAI(人工知能)による洞察を得れば、顧客のニーズに合った次の一手を打てます。

 業務視点で考えると、データは一人一人の顧客のニーズをタイムリーに把握するのは不可能な程に世の中にあふれています。昨今、Open AIが話題になっているのを鑑みると、自社のデータと第三者持つデータを組み合わせてAIを活用し、業務の効率化(守りのDX)や価値創造(攻めのDX)を推進する必要があります。

パーソナライズされた顧客体験(カスタマージャーニー)を提供することの大切さ

 顧客に「対応が遅い」と思われれば、大切な商談機会を逃すかもしれません。では、「顧客を理解し、タイムリーに提案する」には何が必要でしょうか。

 一般的に商談状況はCRMに、売り上げ実績はERP(基幹統合業務パッケージ)や業務システム、会計パッケージなどに存在します。購買履歴に基づくレコメンデーションができない企業は、過去2回にわたり記載したバラバラ殺データ事件に遭遇している可能性が高いです。また、Webサイトや特定のカスタマーアプリのアクセス履歴から、顧客を分析できていないのも理由の一つでしょう。

 パーソナライズされた顧客体験をタイムリーに提供するには、「顧客を知る」ためのビジネスプロセスが不可欠です。また、多くの見込顧客や既存顧客に個別で対応するには、顧客体験をシステムで自動的に提供するしかありません。

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