国内3行がステーブルコインに関する実証実験を開始 銀行業界にビジネスチャンスか
国内3行がステーブルコインに関す実証実験を開始した。メリットを考えると、国内銀行にとって大きなビジネスチャンスとなるかもしれない。
Web3インフラを開発・提供するG.U.Technologiesは2023年3月1日、Ethereum完全互換のパブリックブロックチェーン「Japan Open Chain」で、3つの金融機関と共に日本法に準拠するステーブルコインの発行に向けた実証実験を開始したと発表した。
同実証実験には東京きらぼしフィナンシャルグループ、みんなの銀行、四国銀行が参加し、G.U.Technologiesが開発するステーブルコイン発行・管理システムを通じて、Japan Open Chainでステーブルコイン型電子マネーの発行や送金などを行う。
実証実験の内容と期待されるユースケース、発行体・利用者のメリットは
世界にはさまざまなステーブルコインがあるが「価値の増減」「裏付け資産がない」といった課題を持つものもある。G.U.Technologiesと3行は、今回の実証実験で各銀行が資産的な裏付けがある独自ステーブルコインを発行できるかどうかを確認する。これらのステーブルコインは日本の新たな資金決済法を順守し、「MataMask」などのEthereumウォレットで利用可能になる予定だ。
世界では約20兆円規模のドル連動型ステーブルコインが流通している。日本は米国やEU(欧州連合)に先駆けて、ステーブルコインを規制する法律「改正資金決済法」が2023年6月までに施行される予定だ。日本円のみならず世界中の通貨でステーブルコインの発行が可能になることから、世界中の決済を日本が担う可能性もあり、日本の金融機関には大きなビジネスチャンスになるかもしれない。
ステーブルコインが普及した際の、想定されるユースケースは以下の5つだ。
- 全銀ネットやSWIFTネットワークに替わる国内外の個人および企業間の新しい送金や支払手段
- NFT(非代替性トークン)などのWeb3決済における主要決済手段
- クレジットカードに替わるオンライン上の決済手段
- ブロックチェーン上で発行されたデジタル証券 (ST、STO)の売買
- 地域通貨としてのステーブルコインの発行
ステーブルコイン発行体(銀行や信託銀行)のメリットは以下の6つだ。
- 自行の預金口座及び預金残高の増加による運用益の増加
- 決済手数料、交換手数料による収益の増加
- 外貨建てのステーブルコインの発行による世界からの資金流入への期待
- 特定の地域や利用目的に応じて独自の特典を提供できる
- 与信管理データとしての活用など、新しい決済データの活用機会の創出
- 銀行送金システムの開発および運用コストの大幅な削減
ステーブルコイン利用者のメリットは以下の5つだ。
- 決済手数料や送金手数料が大幅に安価になり、送金負担が軽減される
- 発行体間でのステーブルコイン顧客獲得競争が生まれ、事業者や生活者はより良い利便性を享受できる
- ドル連動型ステーブルコインなどの外貨決済にシームレスに対応できる
- 自治体含む複数事業者間の支払・送金がスムーズになり即時入金が実現
- NFTなどのデジタルアセットの交換手段として利用できる
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