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ChatGPTで“ググる”は死語になる? AI研究者の松尾 豊氏が予測する未来(2/2 ページ)

最近各所で話題を集めるChatGPT。今後、これが進化していくことで生活やビジネスにどのような変化を巻き起こすのだろうか。AI研究の第一人者である松尾 豊氏が“ChatGPTという現象”を分析した。

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松尾氏は“ChatGPTという現象”をどうとらえたか

 冒頭でも伝えた通り、多くのユーザーがSNSなどでChatGPTのユースケースを公開している。読書感想文や英文翻訳といった文章の生成や、コールセンターのオペレーターといった特定の職業や指示通りのキャラクターになりきってロールプレイングなどもできる。変わった使い方では特定のテーマで1人2役のディベートも可能だという。その他、エンジニアの間ではバグの発見やコーディングにも利用されている。


ChatGPTでできること(出典:松尾氏の発表資料)

 利用が拡大する一方で、一部ではChatGPTの利用を禁止する動きもある。例を挙げると、米国のニューヨークやシアトル州の公立学校ではChatGPTを宿題に利用することを禁止している。その他、ChatGPTでの科学論文の執筆を国際会議で禁止するケースもある。このように議論が絶えないChatGPTだが、AI研究の専門家として松尾氏はこれをどのようにとらえたのか。

 同氏は「これまでも対話AIはリリースされてきましたが、ユーザーがいたずらして誹謗中傷や差別的な発言、経済的損害を与える発言などをAIにさせた結果、サービス停止に陥るといったケースが度々ありました。しかしChatGPTは先ほど説明した3つの学習ステップによって、有害なテキストを生成して炎上しないように大変注意深く作られているということです」と指摘する。

 松尾氏によるとこうした配慮があるため、ChatGPTは多くのユーザーが使っても炎上せず、ますます利用が拡大し、さらに新しい利用方法が生まれるというソーシャルな現象になっている。

 「つまりChatGPTという現象は、『技術の蓄積』と『ソーシャルな相互作用による急激な普及』という2つの側面を持っています。特に新しい使われ方についてはAIの研究者や技術者でも思い付かないようなものもあり、大変驚いています」(松尾氏)

“ググる”が死語に? ChatGPTが今後生活や業務に与える影響

 では今後、GoogleやMicrosoftなどの間で大規模言語モデルの開発競争が続き、ChatGPTが進化したら、日々の生活や業務にどのような影響を与えるのだろうか。

 松尾氏は「既存ツールの使われ方に大きな変化が生まれ、かつ、これまでには不可能だった専門的な業務を代行できるツールが多く誕生するでしょう。例えばWebブラウザを使った検索という行為は長期的に見るとなくなると思います。またユーザーが一言一句手打ちで文字を入力するということもなくなるはずなので、『Microsoft Office』製品もその在り方を大きく変えるでしょう」と予想する。

 その他、松尾氏は目的に特化したChatGPTも開発されると予測する。「先ほども言った通り、ChatGPTは炎上を避けるようにトレーニングしています。つまり逆に言うと評価の付け方を変えれば、法律的、会計や税務的、医学的な見地から適切なコメントをするといった目的に沿ったChatGPTも開発できるはずです。さらに今とは逆に、感情を煽るように設定すれば、相手を励ましたり、慰めたり、元気にしたりするようなChatGPTもできるでしょう。どちらにせよこれまでのホワイトカラーの仕事ほぼ全てに2〜3年よりもっと早いかもしれませんが影響を与え始める可能性が高いと言えます」(松尾氏)


ChatGPTが進化したら、これまでのホワイトカラーの仕事ほぼ全てに影響が出る(出典:松尾氏の発表資料)

 松尾氏は最後に日本の政府や企業に向け、下図でChatGPTを活用した成長戦略を提言した。


ChatGPTを活用において日本が取るべき3つの戦略(出典:松尾氏の発表資料)

 「SalesforceやAmazonのような大手IT企業が次々とChatGPTのような対話型AIサービスの開発に乗り出しており、技術の黎明期らしく混乱しながら非常に早いスピードで物事が進んでいます。今後は発展の可能性と同時に、ChatGPTの技術的な限界も見えてくるかもしれません」(松尾氏)

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