OA機器からAIへ リコーが取り組むAIビジネスの現在地
「リコーはOA企業」という印象がある。一方、現在はAIに本腰を入れ、より幅広いサービスを提供するデジタル企業に“脱皮”しているという。
アマゾン ウェブ サービス ジャパンとリコーは2023年4月18日、「大規模言語AI(人工知能)モデルを活用した顧客価値創造〜デジタルサービスの会社への変革を目指すリコーのデジタル戦略〜」と題し説明会を実施した。
同説明会ではリコーにおけるAIの取り組みが語られた。AIに注目が集まる今日、リコーはどのようにAIを活用し企業を変化させようとしているのだろうか。
OAからAIへ リコーが取り組むAIビジネスの現在地
「リコーがAIに取り組んでいるというと驚く人もいます。コピー機やカメラデバイスといったOA系の企業だという認識が強いからですね。ですがリコーは近年、OAメーカーからデジタル企業への“脱皮”に取り組んでいます」
説明会の冒頭でこのようにリコーについて語ったのは、同社の梅津良昭氏(デジタル戦略部 デジタル技術開発センター長)だ。デジタル企業へ脱皮する中で、リコーはAIを重要なファクターとして捉えている。プリンタやカメラをはじめとするさまざまなオフィスデバイスや、それらに連携するクラウドサービスを持つリコー。現在はこれらの領域で、画像や映像に関連するAIが必要になっているという。また、Web会議用のデバイスも持つリコーはAI音声認識の活躍も見込んでいる。
「AI音声認識を使うことでテキストデータなどをより柔軟に活用できます。ここで自然言語処理AIなどが活躍します」(梅津氏)
リコーが持つさまざまなプロダクトにAIが活用されており、これらを一体化してプロダクトに落とし込んでいくのが梅津氏のデジタル技術開発センターの役割だ。
「事業部門の『縁の下の力持ち』としてこれまでさまざまなAI開発を行ってきましたが、ディープラーニングの技術や製品搭載といった流れは2015年から推進してきました。2020年になるとGoogleが提供する『Bard』などの会話型AIサービス技術も向上してきたので、リコーもテキスト活用に取り組むようになりました」(梅津氏)
リコーではテキストの活用として「仕事のAI」というクラウドサービスを提供している。同サービスはBard世代のAIモデルを活用し、利用者の声などの分類分けや分析を行っている。
「これまでは従業員などが利用者の声をまとめていましたが、既存のデータをAIに学習させモデル化することで、素早く簡単にまとめたり分類したりできるようになりました」(梅津氏)
リコーが抱える課題と今後の取り組み
AIがなかなか広がらないと感じています――。梅津氏はこのように現状を述べた。AIは一般的にまだ新しい技術として考えられており、知見の少ない企業はそれらサービスをどのように使いこなすのか、適任者が企業内にいるのかどうか、といった多くの不安を抱えている。また、サービスを利用するにあたってデータをリコーに提出する必要があり、このデータをまとめる作業にも時間と工数がかかる。
「AIを使ってみたいという企業は多くありますが、準備に3〜6カ月要してしまうことから足が遠のいています。これを解決しなければならないとリコーも認識しています」(梅津氏)
この解決に向けてリコーが取り組んでいるのが「AI開発プラットフォーム」の提供だ。ユーザーはこのサービスを利用することで、リコーにデータを提出せずにユーザー固有のカスタムモデルを作成し、システムに組み込める。
また、AIを熟知していない人でも容易にAIを使えるように、リコーは「デジタルヒューマン」の開発も進めている。音声認識や音声発音、CGなどとAIを組み合わせることで、「AIの秘書」のようなサービスになるという。
「AIを使って業務を行う時代がすぐに来るとリコーは考えています。AIを必要とする顧客に強力なサービスを提供できるように取り組んでいきます」(梅津氏)
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