生成AIブームの勝者になるには何が必要か Palo Alto NetworksのCEOが語る:Cybersecurity Dive
Palo Alto Networksは生成AIの展開に慎重な姿勢を採っているが、この技術がサイバーセキュリティにとって大きな転機になると信じている。
Palo Alto Networksは、生成AI(人工知能)を自社製品やワークフローに組み込むために、1年以内にセキュリティ用に独自の大規模言語モデル(LLM)をリリースする予定だと、CEOのニケシュ・アローラ氏は2023年5月22日週に実施された同社の決算説明会で述べた。
サービス全体でAIを使用しているこのサイバーセキュリティベンダーは、生成AIによる検出と予防の改善、データセットとテレメトリーを使用した顧客との対話および内部プロセスと運用の改善に注目している。
2年以内に生成AIを使った変革が起きる
アローラ氏は、同社の決算説明会のために用意したスピーチの最初の2分間で生成AIに言及しており、その瞬間には強い臨場感があった。彼は、その後スピーチの中で「AI」に32回言及した。
Palo Alto Networksは生成AIに対してより抑制的なアプローチをとっている。つまりMicrosoftやGoogleのように(注1)、この技術に基づく新製品を迅速にリリースしているわけではないが、Palo Alto Networksのリーダーたちは、生成AIが業界における大きな転機の先駆けになることを確信しているに違いない。
「Palo Alto Networksだけでなくエンタープライズソフトウェア業界全体でも、今後12〜24カ月の間に生成AIを利用した変革が起こると考えている。これは私たちが直面する真のチャンスであり挑戦でもある。半分の人は間違った結果を引き起こすだろう。しかしできれば私たちは歴史を振り返ったときに『正しい半分』でありたい」(アローラ氏)
Palo Alto NetworksはLLMに自己学習させるのではなく、特定のセキュリティに関連する用途やタスクを構築して使用する独自のAIモデルを導入する計画だ。独自のデータを使用してこれらの機能をどのように構築できるかを把握するために、公開されている全てのオープンソースのAIモデルと連携して作業している。
セキュリティに対して生成AIがもたらすもの
ほとんどの企業がまだ完全に実現できていない生成AIの利点は、データに迅速にアクセスし、それを要約する能力にある。しかしアローラ氏によると、その理解力や対応力を生成するデータセットのサイズが重要だ。
アローラ氏は「生成AIは大規模なデータレイクと大規模な投資が可能な資金力を持つ企業に有利であり、当社にはその両方と、それらを活用する意図を持っている」と話す。
同社は現在約20億ドルの現金資産を保有しており、2023年4月30日に終了する2023年度第3四半期に17億ドルの売上高と1億800万ドル近い純利益を計上した(注2)。
Palo Alto Networksはサイバーセキュリティ市場の一部の競合他社よりも生成AI製品のリリースを遅らせているが、アローラ氏は、(生成AIの利点を生かして事業を成長させる)絶好の機会は2025年半までだろうとコメントしており、同社は新しい機能を早期に提供する必要に迫られている。
「業界内のあらゆる会話で聞かれるように、私たちは生成AIに取り組み始めたばかりであり、それを理解してプロセスを見直している。しかし、そこには確かに何かがあると信じている」(アローラ氏)
(注1)Microsoft unveils Security Copilot built on GPT-4(Cybersecurity Dive)
(注2)UNITED STATES SECURITIES AND EXCHANGE COMMISSION Washington,D.C.20549 FORM 10-Q(U.S. Securities and Exchange Commission)
関連記事
- Trend Vision Oneが機能強化 XDR機能をOT領域まで拡張する他、生成AI技術も搭載
Trend MicroはTrend Vision Oneの機能を拡張する。XDR機能をOT環境にまで拡大する他、生成AI機能やアタックサーフェスリスクマネジメント機能を搭載する。 - AIを狙ったサイバー攻撃の知られざる世界 専門知識なしでどう対処するか?
生成AIブームが訪れ、各企業がAI開発に乗り出しているが、AI開発プロセスには脆弱性が潜んでおり、これを悪用することでサイバー攻撃が可能になることは意外と知られていない。攻撃の詳細とそれを防御するための方法を解説する。 - 10万以上のChatGPTアカウントが窃取され、ダークWebで取引されている
Group-IBはインフォスティーラーに感染したデバイスからChatGPTアカウントが窃取されていると報じた。10万以上のデバイスが感染してアカウントが漏えいしており、窃取されたアカウントはダークWebで売買されているという。 - 「ソフトウェアアップデートは逆効果」 Twitter社の元CISOが“セキュリティ神話”を切る
セキュリティ業界で“常識”と考えられていることも実際は逆効果になっているのかもしれない。Twitter社でCISOを務めた現役ハッカーが、データを基に“セキュリティ神話”に疑問を投げかけた。
© Industry Dive. All rights reserved.