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最短1カ月でアジャイルは実現できる 組織がやるべき各週のスケジュールを解説

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 ガートナー ジャパン(以下、ガートナ―)は2023年12月12〜13日の2日間にわたり、「ガートナー ITインフラストラクチャ、オペレーション&クラウド戦略カンファレンス」を開催した。本稿はその中から、企業がアジャイルな組織に進化する方法を解説した講演「IT運用チームが実践するアジャイルとは」を紹介する。

アジャイルになるために考えるべき3つの要素

 講演に登壇した米田英央氏(リサーチ&アドバイザリ部門 シニアディレクター アナリスト)は最初に「アジャイルが必要なのは開発部門だけと考えてはいけません。現在はIT部門全体でアジャイルになる必要性が高まっています」と話す。

 このような発言の背景には「革新を起こすシステム」や「他社との差別化につながるシステム」などは、アジャイルが適しているという考えがある。同氏によると、従来のウォータフォール型開発が適しているのは記録システムなどで、現在はそれ以外のアジャイル開発が主流だという。

 米田氏によると、このような現状を受けて企業は以下の3つの要素を検討しなければならない。

  • IT運用チームがなぜアジャイルになる必要があるのか
  • 今の仕事のやり方を変えるとはどういうことなのだろうか
  • アジャイルによる変化をIT運用チーム内に広げるには何をすべきなのだろうか

 それぞれを以下で解説する。

IT運用チームがなぜアジャイルになる必要があるのか

 ガートナーが2023年7月に実施した調査によると、企業の約60%のシステム関連の案件がアジャイル案件になっている。これはアジャイル開発に適した案件が増加していることを示唆しており、米田氏は「高速、高頻度で仮説と検証を繰り返し、顧客価値を最大化するビジネスの要求が高まっている」と指摘する。従来のウォータフォール型の案件では、数カ月から数年という期間でプロジェクトが進むが、アジャイルであれば数週間から1カ月程度でアウトプットを出せる。

 アジャイルのメリットは明確だが、これを享受するには特定の部門だけでなく、インフラ部門や運用部門、開発部門など、ITチーム全体がアジャイルに取り組む必要がある。実際に特定の部門だけアジャイルに対応しなければそこが足かせになると米田氏は警鐘を鳴らす。

 「アジャイルを進め、組織として成果を出すにはアジャイルに対応するように関係部門への働きかけが欠かせません」(米田氏)

 米田氏は2001年に発表された「アジャイルソフトウェア開発宣言」に基づいて、アジャイルの目的を以下のように語った。

 「アジャイルの目的は『顧客に目に見える価値を出すこと』です。この目的を達成するために、プロセスやツールよりも個人との対話を増やすことや、計画に従うだけでなく変化への対応を可能にする必要があります。これを実現するために、これまでとは違う『仕事のやり方』が必要なのです」(米田氏)

今の仕事のやり方を変えるとはどういうことなのだろうか

 仕事のやり方を変える方法として、米田氏は「アークテクチャの変化が仕事のやり方に変化をもたらします」と話し、図1を示した。


図1 アークテクチャの変化が仕事のやり方に変化をもたらす(出典:ガートナー提供資料)

 図内左は従来のアーキテクチャを表しており、運用や開発といったチームがそれぞれ分離している。これに対し、疎結合型のアーキテクチャが図右側だ。疎結合型のアーキテクチャでは、それぞれのタスクに運用や開発のメンバーが関わることで、より主体的にサービスを開発・提供できるようになる。従来はユーザーの要件通りのアウトプットを出すのが目的だった。

 疎結合型のアーキテクチャでは、ユーザーに対して迅速に機能を提供し、フィードバックを受けることが欠かせない。「ユーザーに提供」「フィードバックを受けて改善」「必要機能を選定」「構築」という取り組みを繰り返すことが重要だ。

アジャイルによる変化をIT運用チーム内に広げるには何をすべきなのだろうか

 米田氏は「アジャイルを実現した組織は自律的に働けます。参加者は成果ベースで自律的に行動を起こし、目標達成のために協力します。このような組織を作るには、組織間の壁を越えて働ける人材が不可欠です」と、アジャイルを広げるために必要な取り組みを解説する。

 アジャイルな組織が誕生したら、その後はアジャイルを広める小規模なチームを構築し、最初にアジャイルな組織を構築できた時に取り組みを関連チーム全体に広げる。

この時、アジャイルに関して知識を持つインフルエンサー的な人材がいると効果的だ。その後、各チームで成果目標を設定し、その機能提供を1カ月で行う。成果目標の一例が図2だ。


図2 成果目標を設定し、1カ月で機能を提供する(出典:ガートナー提供資料)

 1カ月でアウトプットを出すために、まずは「チーム構成決定」や「テーマ設定」「当初の成果決定」「スケジュール確認」などを行い、1〜4週目にプラットフォームチームやインフラチーム、開発チームなどがそれぞれ業務を進める。5週目は実装作業に充てる。実装作業を行う5週目の動きは図3のようなものが一般的だ。


図3 実装作業を行う5週目の一般的なスケジュール(出典:ガートナー提供資料)

 アジャイルを実践するチームは、アジャイルを既に経験しているアジャイルリーダー、実施テーマの要件を決めるプロダクトオーナー、プロダクトを開発するエンジニアで構成されるケースがほとんどだ。米田氏は「チームに必要な人材は社内外から見つける必要があります。新たに雇用する場合やパートナー企業から支援を受けることも多くあります」と話す。

 「アジャイルになることで、IT運用部門からビジネススピードを向上させられます。アジャイルになるには迅速なアウトプットを求められるので、まずは足元に小さな業務から取り組み、それを組織間をまたいで展開していきましょう」(米田氏)

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