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生成AIにブームを持っていかれた? 実はWeb3の今後も楽しみなワケWeb3って「結局どないやねん」(1/2 ページ)

Web3が以前まで“バズっていた”ことは記憶に新しいだろう。多くの読者は「生成AIの誕生で消えた?」と思っているかもしれない。果たしてそうだろうか。

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 そういえばWeb3ってどうなった――。こんな漠然とした疑問を抱いている読者は多いはずだ。2008年に暗号資産「BitCoin」に関する論文が発表され、その後「NFT」(非代替性トークン)や「DAO」(分散型自立組織)などをはじめとするWeb3という概念が世間をにぎわせた。2022年には岸田政権がWeb3を成長戦略の柱に入れるなど、日本政府も本腰を入れている。

 一方、OpenAIが2022年11月に「ChatGPT」を発表すると、瞬く間に話題は生成AI(人工知能)に移り、Web3に取り組んでいた多くのベンダーも生成AI競争に乗り出している。その熱を失ったように見えるWeb3だが、果たして業界は変化しているのだろうか。アクセンチュアの唐澤鵬翔氏(ビジネスコンサルティング本部 ストラテジーグループ マネジング・ディレクター)、金城一樹氏(プリンシパル・ディレクター)、青山 奈津美氏に疑問をぶつけてみた。

「生成AIでWeb3のブームが終わった」は間違いか

――ChatGPTが登場し、Web3の話題はあまり聞かなくなりました。実務でWeb3に関わっている身として、現在のWeb3をどのように捉えていますか。


唐澤鵬翔氏

唐澤氏: AIやWeb3というのは、特定のユースケースではなく技術群やトレンドを指しています。私自身、AIに関わる所からキャリアを始めましたが、AIは何十年という歴史を持っており、既に「成熟している」と言えます。その最後に出てきたキラーユースケースがChatGPTです。Web3はその概念が誕生してからまだ10年も経過しておらず、「バズった」経験も数年程度です。技術もまだ成熟しておらず、キラーユースケースもありません。AIとWeb3は別のフェーズに属する別のトレンドなので、それらを比較する必要はありません。また、技術が違うからこそ、競合的な立場よりもそれぞれが“補完し合う”関係にあります。

――補完し合う、というのはどのような形を指すのでしょうか。

唐澤氏: 既にそれぞれのサービスの関係性は強まっています。例えば、OpenAIのCEOであるサム・アルトマン氏は、暗号資産「Worldcoin」の開発を行っています。このように、起業家が生成AIとWeb3に取り組んでいるケースも多くあります。生成AIは新たなコンテンツを次から次に生み出しますが、その時「その情報元はどこなのか」「利益還元はどうなっているのか」「価値のあるコンテンツはどれなのか」などを明確にするのに、ブロックチェーンは最適です。AIがWeb3にもたらす価値としては、ジェネレーティブアートなどでNFTを生み出すといった事が起きています。

――実際にWeb3に関するユースケースは増えていますか。


金城一樹氏

金城氏: さまざまな企業からWeb3に関して相談を受けています。Web3がバズワードとして注目されていた時期は、暗号資産の値上がりやNFTの転売などが注目されていましたが、現在は「いかにビジネスに生かすか」という視点が強まっています。多様な業界の企業がWeb3に取り組んでおり、実際に「メルカリ」などではBitCoinで取引できます。その他、ユーザーのロイヤルティを高めることを目的に、NFTを活用する企業も増えています。企業だけでなく政府も積極的に取り組んでおり、金融庁などはステーブルコインの法整備などを進めています。


青山 奈津美氏

青山氏: Web3がバズワード的に使われていた時は、NFTやメタバースから取り組む企業が多かった印象ですが、現在はステーブルコインやセキュリティトークンから取り組む企業が増えています。「試しにNFTを発行しよう」というのは少なくなっています。

唐澤氏: NFTは手段です。以前は「本当に価値があるのか」という視点が欠落し「とにかくNFTを発行しよう」というスタンスでした。現在はこのような流れが一巡し、「どのように目的を果たすのか」「NFT化する価値は何なのか」などが考えられるようになっています。

――“バズ期間”が終わり、本格的なユースケースを創出できるようになっているんですね。Web3に取り組んでいるのは大企業がメインですか?

金城氏: そうですね。「市場を作っていく」ということを考えると、大企業の取り組みが欠かせません。中堅・中小企業の多くは大企業などのユースケースを参考に取り組みを行う傾向にあるので、アクセンチュアもそれに合わせています。企業のユースケースは増えているので、今後は企業規模に関係なくWeb3が広がるはずです。

唐澤氏: アクセンチュアではWeb3を「Tokenization」(トーカナイゼーション)と定義しています。これは、物質的に価値のあるものに新たな価値を与えることを指します。通貨であればステーブルコイン、知財やアートであればNFT、債券などの有価証券であればセキュリティトークンなどです。トーカナイズすることで「これまで過小評価されていたもの」「最終結果のみに価値が付与されていたもの」「データの価値が事業者側に独占されているもの」などを民主化できます。詳細を解説しているのが図1です。


図1 Tokenizationがもたらすメリット(出典:アクセンチュア提供資料)

 アクセンチュアは企業におけるWeb3の活用分野を「カスタマーフロント」「マルチステークホルダー」「データ&アセット」に分類しています。例えばカスタマーフロントでは、「Global Fair Value」といって、ブランドやIP(知的財産)をグローバル規模で公開でき、その価値が再評価されるというメリットがあります。マルチステークホルダーでは、目標達成までのプロセスなどを透明化し、コラボレーションの強化につながります。データ&アセットでは、企業の資産にグローバル規模での流動性を持たせます。これらの3つの側面で、ユースケースが増えているのが現状です。


Web3の活用ユースケース(出典:アクセンチュア提供資料)
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