「AIブーム」で求められるスキルはどう変わる? 経営陣と技術リーダーを対象にした調査で判明:CIO Dive
AIの利用が拡大する中でビジネスパーソンに求められるスキルセットはどう変わるのか。調査の結果から経営陣の期待と技術リーダーの懸念が浮かび上がった。
生成AI(人工知能)をはじめとするAIを業務に導入する企業が増える「AIブーム」の中で、ビジネスパーソンに求められるスキルセットに変化が生じている。
市場調査機関のColeman ParkesがAIに関連したプラットフォームを運営するDynatraceに委託して実施した調査によると、AIの導入によって企業のスキルセットが拡大する分野と、職務の役割が変化する分野があることが分かった(注1)。
AI時代に必要なスキルは?
CIO(最高情報責任者)やCTO(最高技術責任者)、シニア技術リーダーといった1300人を対象に実施した調査によると、AIが生産性と企業の経営に与える影響の拡大に伴い、5社中3社以上の組織がすでに職務内容や募集スキルを変更している。
テクノロジーリーダーの10人に9人近くは、AIを利用した自然言語クエリ(NLQ)を通じて「非技術系従業員のデータ分析へのアクセスが拡大する」と期待している。
「企業は生成AIのリスクを低減し、価値を提供する」という明確な目標を掲げて2024年を迎えた。AIブームによって基本に立ち返る必要があるようだ。
カーネギーメロン大学のジョディ・フォーリジー氏(ブロック・センター・フォー・テクノロジー・アンド・ソサエティの「責任あるAI施策」の学術リーダー)は「多くの場合、人々はAI製品やサービスの開発を俯瞰(ふかん)的に見ていないため、製品の導入から調達、展開、トレーニング、観察、使用まで、多くの欠点や故障が発生する可能性がある。物事が破綻する可能性のある環境はたくさん存在している」と言う。
企業の技術リーダーには、災難を防いで安全を確保するためのソリューションに取り組む責任がある。各業界の組織は、スキルの向上とAI人材の獲得がビジネスの具体的な価値を引き出し、従業員に求められるスキルと現在のスキルとのギャップを埋める鍵になると認識している(注2)(注3)。
従業員へのトレーニングによって「AIが生成するコードが知的財産権を侵害するのではないか」という懸念は和らげられる、また、技術リーダーが指摘するその他のリスクも軽減できる。
キャリアが浅い、もしくは専門外の従業員には、AIによって生成されたコンテンツに事実とは異なる情報が含まれる場合にそれを見分けるスキルが不足している可能性もある。AIがデータ分析を大衆化するのに伴って、AIのアウトプットをファクトチェックする能力を高める必要があるだろう。
Dynatraceの調査によると、技術リーダーのほぼ全員(98%)が、「生成AIが意図しないバイアスやエラー、誤った情報に影響されやすいこと」を懸念している。Colby College デイビスAI研究所で教授兼所長を務めるアマンダ・ステント氏は「強い懐疑的なスキルが必要だ。読んだり見たり聞いたりしたことは信用せず、常に検証すべきだ」と述べた。
(注1)The state of AI 2024(Dynatrace)
(注2)AI initiatives fall flat without training, tech pros say(CIO Dive)
(注3)Need for skilled AI talent is driving up salaries(CIO Dive)
関連記事
- ユーザー企業の連携は生成AIの活用を促進するか? 宮田裕章氏の発言から考察
ユーザー企業を主体とした産学連携の新団体「Generative AI Japan」が発足した。日本の企業や行政の生成AI活用に大きなインパクトをもたらす存在になるか。 - 「生成AI」はセキュリティをどう脅かすのか? 大手5社の脅威予測から探る
2024年も話題の中心になりそうな生成AI。そのリスクを大手セキュリティベンダーはどう見ているのか。トレンドマイクロやVeeam Software、Trellix、CrowdStrike、そしてネットワーク大手でセキュリティも手掛けるCisco Systemsが発表した脅威予測から探る。 - アクセンチュア、実証を重視する「生成AIスタジオ」を世界で拡大
生成AIの活用が本格化すると見られる2024年、アクセンチュアは、生成AIへの世界的なニーズの高まりに対応するため、日本を含むアジア太平洋・中南米地域の9カ国に生成AIスタジオを設立し、生成AIスタジオのネットワークの拡充を図る。 - AWSの「幹部向け生成AI入門コース」から学べる3つのポイント
AWSが企業幹部向けに提供している生成AI入門講座からは、生成AIを社内に展開するコツや生成AIとの上手な付き合い方などが学べる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.