導入したけど誰も使ってくれません! 重視すべき「チェンジマネジメント」とは(2/2 ページ)
新しいシステムの導入は人的要因で失敗することがある。新システムに適応するには少なからず負担がかかる。そこで重視すべきが「チェンジマネジメント」だ。本稿ではチェンジマネジメントに基づくシステム導入のコツを紹介する。
3.従業員の不安や懸念に対処する
「慣れは侮りを招く」ということわざがあるが、チェンジマネジメントに関しては、「たとえうまく機能しなくても、慣れは心地いいものだ」が正しいといえるだろう。従業員は多くの場合、現行システムの専門知識をある程度持っていると感じている。また、既存のERPに問題があり何らかの回避策が必要な状態でも、それらは既知の問題として扱われる。
新しいシステムには新しいプロセスや行動が必要であり、多忙な従業員にとっては、それほど優れているわけでもない新システムの習得に時間を費やすのは受け入れがたいことだ。そうした懸念を認識し、対処する必要がある。
ERPの導入には、よく練られたチェンジマネジメント戦略が必要だ。
コンサルティング企業Organized Changeのマネージングパートナー、デイビッド・ショードロン氏は、「あなたが従業員に求めているのは、ただ新しいものを受け入れることだけでなく、全ての名声を捨てて初心者になることでもある」として、「新しいERPを導入するには、組織構造や評価、給与も変更する必要があることを認識しなければならない」と述べた。
プロジェクトリーダー層はまず、従業員が現在どのように働いているのか、新しいERPが従業員にどのような変化を求めるのかを正確に理解した方がいい。その後、新しいERPのメリットを考え、それを従業員に売り込むといい。
「特にITの分野では、技術にこだわってユーザーによる採用を妨げる行動的、文化的要因を過小評価することが多い」とダンカン氏は指摘する。「チェンジマネジメントがプロジェクト単位のものであれ、継続的なものであれ、特定のツールやテクニックを適用することより、変化への欲求を植え付けることの方が重要だ」
心の知能はチェンジマネジメントを成功に導く大きな要因だ。
「人を説得して変えるには、穏やかで共感的なアプローチが必要だが『穏やか』を『容易』と混同してはいけない」とダンカン氏は言う。「変革における人の管理は最も困難な仕事の一つであり、不確実性や曖昧さ、衝突を受け入れて対処する能力が必要だ」
4.過去の変革の成功と失敗について考える
チェンジマネジメント戦略はビジネスの目標や文化によって異なる。
変化への耐性に関する組織の強みと弱みに目を向けることは、チェンジマネジメントの重要な要素だ。次のような問いをはそのヒントとなるだろう。
- 組織はどのような変化を乗り越えてきたか
- リーダー層と従業員はその変化にどのように対処してきたか
- うまく対処できなかったのはどのような変化か
- それらの教訓から何を学び、現在のERP導入に生かせるか
オギルビー氏は、「過去に変革を成功させた歴史は、これからの変革が成功するかどうかに大きな影響を与える」と述べ、「勝つことが習慣化している(あるいはされていない)スポーツと同様、企業にも変革を成功させる習慣がなければ、ERPプロジェクトの成功に必要な努力は大幅に増加する」と説明した。
5.ベストプラクティスのカスタマイズ
CIOをはじめとするリーダー層がどのような戦略を選択するにせよ、型にはまったアプローチをとらないことが重要だ。
製造戦略やサプライチェーン変革のコンサルティングを手掛けるLMA Consulting Groupの創業者リサ・アンダーソン氏は、「チェンジマネジメントを(一般的な)ベストプラクティスのコミュニケーションやミーティング、プロジェクトプロトコルのセットにしてはならない」とくぎを刺す。
アンダーソン氏はその代わりとして、各利害関係者がどのようにビジネス目標を支援するかについて、ベストプラクティスをカスタマイズした戦略を作り、利害関係者の賛同を得るべきだと述べている。
6.変革のロードマップを作成する
多くの複雑な取り組みがそうであるように、ERP導入のチェンジマネジメントにも明確な段階はない。それでもロードマップの作成は重要だ。
Newgrange IT Consultingの創業者アンマリー・カーリー氏によれば、ロードマップは変更点を特定し、期待値を設定させ、管理し、ガイダンスを提供するのに役立つという。
リーダー層は、以下のロードマップを出発点として使うといいだろう。
- 利害関係者の分析: 全ての利害関係者に関与してもらう
- 現状の分析: 現在の事業プロセスを調べ、仕事の進め方をまとめる
- 将来の事業プロセス:ERP導入後、どのように仕事が進められるかを理解する
- チェックイン:プロジェクトの各段階で変化の影響評価を実施する
- 機会の提供:研修やコミュニケーション、必要な方針変更を行う
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