国内ERP市場拡大を後押しする「あの現象」とは? ITRが調査結果を発表
ITRによると、2022年度のERP市場はインボイス制度の対応やリニューアルによって前年度比11.6%増となり、2023年度は前年度を上回る伸びが予測される。2027年まで2桁成長は続く見込みだ。何がERP市場の成長をけん引しているのか。
アイ・ティ・アール(以下、ITR)は2024年3月21日、国内のERP市場の提供形態別市場規模推移と予測を発表した。同予測はERP市場の国内ベンダー52社を対象として2023年11月〜2024年1月に実施した市場調査に基づいている。
2桁成長のERP市場、2023年度は2000億円規模に
ERP市場の2022年度の売上金額は1687億円で、前年度比11.6%増となった。2桁成長の要因は何だろうか。
ITRは「インボイス制度など各種法改正の対応や老朽化したERPシステムのリニューアル案件の増加とともに、テレワークやハイブリッドワークといった働き方の多様化が市場拡大の追い風になった」と分析する。
2023年度も同様の傾向が続いていることに加え、近年パッケージ販売からSaaS(Software as a Service)にシフトし、やや低調だった一部のベンダーの売り上げが徐々に上向きに転じている。これらの要素を踏まえて、ITRは2023年度について、前年度の伸びを上回る前年度比17.5%増を見込む。
ERP市場をパッケージとSaaSの提供形態別に比較すると、2022年度のパッケージ市場は前年度比3.4%減、SaaS市場は同26.8%増の伸びとなった。主要ベンダーは新規案件だけでなく既存のパッケージ導入企業に対してもSaaSの販売を推進していることから、ITRは、パッケージ市場の2022〜2027年度のCAGR(年平均成長率)はマイナス2.5%、SaaS市場は20.3%と予測している。
ITRの浅利浩一氏(プリンシパル・アナリスト)は「ERP市場は2022年度も2桁増を維持し、2023年度はさらに好調に推移している。新規ライセンスとサブスクリプションの売り上げは2000億円に届く勢いだ。市場拡大はSaaSの好調な進展によるもので、DX(デジタルトランスフォーメーション)および基幹系システムのクラウド化に投資する企業がSaaSを選択していることを示している」と分析する。
同氏は生成AIのERP市場への影響について、次のように述べた。「生成AIやLLM(大規模言語モデル)などの技術革新を有効活用しつつ、業務プロセスやデータ分析を自動化するためには、サイロ化した企業内・企業間のシステムを一貫性の高いクラウドネイティブな経営基盤に再編しなければならない。ERPはそのための欠かせない要素として、今後も支持されるだろう」
同調査レポートの詳細は「ITR Market View:ERP市場2024」として2024年3月21日に発刊されている。
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