なぜ、P&G Chinaは「外資苦戦の地」で踏ん張れるのか? アリババが提唱する「ミドルプラットフォーム」とは?:事例から見る「中国企業のDX」(2/3 ページ)
生まれた時からさまざまな商品に囲まれてきたZ世代にどうすればモノが売れるのか。P&G Chinaが「脱テレビ」「脱スーパーマーケット」「脱EC」世代に向けて実施した施策と、それを支える「4つのDX」、そしてアリババが提唱する「ミドルプラットフォーム」とは。
P&G ChinaのDX実装の取り組み
P&G ChinaにおけるDX実装(DX推進)は、同社の業績が落ち込んだ2017年から始まった。2018年には全社のDXをサポートする「デジタルイノベーションセンター」を広東州広州市に設立した。
IT 市場調査、コンサルティングを手掛ける米国の International Data Corporation(IDC)が主催する2020年の「4th IDC Digital TransformationAwards Singapore」で、「Singapore DXa’s 2020 Digital Transformer」を受賞するなど、P&G China のDXの成果は評価されている。
P&GグループでもP&G ChinaのDXの成果は高く評価され、本社の上層部や他地域のリーダーが中国事業の成功体験を学ぶために視察している。
同社の取り組みについて、9つの視点から紹介する。
1. DX推進戦略
2017年以降、P&G Chinaは4つのDX戦略を掲げて、内部プロセス化取引システム「HawkEye」、消費者インタラクション・Eコマース「AlphaGrow」、ターゲティング「Go to Market 3.0」、ミドルプラットフォーム、AIなど数多くのソリューションを導入してきた。なお、ミドルプラットフォームとはアリババが提唱するDXのアプローチの一つで、「デジタルミドルオフィスプラットフォーム」とも呼ばれる。データミドルオフィスプラットフォームに社内のデータを集約することで、その企業の強みを社内でシェアし、再利用することを目指す。
2. 業務プロセスの見直し
従来は、広告を出稿する際、担当者が経験に基づいて予算や露出数などの枠に沿って、幾つかの指標に基づいて出稿先のメディアを決定していた。それがビッグデータやAIの導入によって、数千もの組み合わせの中から最もコストパフォーマンスの良いものを特定し、宣伝効果の最大化を図っている。ここで使われているAIは「Golden Radar」と名付けられたメディアモニタリングシステムだ。1000以上のメディアのコンテンツをモニタリングし、消費者のニーズや購入シーン、フォーミュラ(行動)などの動向を自動分析する。
3. ビジネスモデルの刷新
ビジネスモデルを刷新するために、次の4つの改革を実施した。
- Eコマース事業者とデータを共有、融合することで、商品の流れが従来の「工場〜物流センター〜Eコマース事業者の倉庫〜消費者」から、「工場〜消費者」に変化した
- 消費者のプライバシーを保護した上で、ビッグデータやAIによってユーザーの好みに沿った商品が自動的に推薦されることで、マーケティングの効率が向上した
- オンラインショップの消費トレンドをベースとして、消費者のニーズを予測しながら、新製品の開発サイクルを年単位から月単位に短縮した
- 商品のオーダーメイドを1つから受注してオリジナルパッケージを作成することが可能になった
DXがビジネスモデルの根本に変化をもたらした
4. テクニカルアーキテクチャの構築
P&G Chinaのジェリー・リンCIO(最高情報責任者)は「ミドルプラットフォーム概念の導入が成否を左右するキーポイントになった」と評価している。同社のテクニカルアーキテクチャは下図の通り設計されている(図5)。
4のデータミドルプラットフォームに関しては「データは企業の資産である」というコンセプトの下、下図の構造で独自に開発している(図6)。
同社は5の技術ミドルプラットフォームでは、下図のような各種ツールを活用している。データのサイロ化や重複開発を避けるために、これらのツールはP&G Chinaで統一されている。各部門における新規の開発や導入は認めないとしている。
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