ChatGPTのビジネス利用、「懸念ポイント」はどう変化した? 野村総研が調査
NRIのChatGPTに関する最新調査で、職場での利用状況における変化がが明らかになった。特にビジネスでの利用に付き物の「ある懸念ポイント」に変化が見られたという。それは何か。
野村総合研究所(NRI)は2024年10月24日、日本のChatGPT利用動向についてのレポートを発表した。
同レポートは、NRIが関東地方の一都六県に在住する15〜69歳を対象に実施したChatGPTの認知・利用動向に関するアンケート調査結果(有効回答者数2985人)を基にまとめたものだ。同社は過去にも同様の調査を2回実施しており、今回のレポートは2024年9月7〜8日にインターネットで実施した3回目の調査結果に基づいている。
ChatGPTのビジネス利用に付き物の「懸念ポイント」に変化
今回の調査で前回調査と比べて利用状況にはどのような変化が見られたのか。またこの1年間でChatGPTのビジネス利用にどのような変化が起きたのか、見てみよう。
同調査では、2023年6月に実施した調査と比較してChatGPTの認知率は68.8%から72.2%に拡大し、利用率は15.4%から20.4%に上がった。NRIは、認知率は頭打ち傾向が見られるものの利用率は伸びていると分析する。
性別では、前回調査に続いて男性の比率が高く、認知率は77.6%(男性)対66.7%(女性)、利用率も26.9%(男性)対13.8%(女性)と大きな差が見られるが、男性の認知は概ね頭打ち傾向が見られるのに対し、女性の認知は若年層中心に大きく高まっていた(女性20代:61.4%→72.0%、女性30代:56.4%→74.7%)。
また利用においては、男性では若年層(20代、30代)で頭打ち傾向が見られるものの、中年層(男性40代:19.3%→29.6%、男性50代:15.8%→21.8%)と女性若年層(女性20代:16.0%→22.4%、女性30代:10.2%→17.1%)の利用が大きく伸びており、利用者の幅が広がったことが伺えるとしている。
サイバー攻撃への懸念が減った理由
職場におけるChatGPT利用の不安や懸念については2023年、2024年調査ともに「回答が不正確な場合があること」「AIに頼って自分で考えなくなること」に票が集まった。今回調査の結果を2023年6月調査と比べると、「AIに頼って自分で考えなくなること」が42.4%から39.6%に2.8ポイント減少し、「サイバー犯罪に巻き込まれる可能性があること」が17.5%から14.5%に3.0ポイント減少した。
「AIに頼って自分で考えなくなること」が減った理由については、生成AIが正確な情報を自動で出力するわけではなく、出力結果をある程度ユーザーが解釈する必要性があることが認識されたためではないかとNRIは推察する。
「サイバー犯罪に巻き込まれる可能性があること」という懸念が減少した理由としては、ChatGPTの普及後、想像よりも目立ったサイバー犯罪が発生していないことが理由として考えられるとしている。
利用用途にも変化 「人の代わりのコミュニケーション」が減少
職場におけるChatGPT利用用途としては、「文章の作成」や「情報収集」が多く、特に「文章の要約」は2023年6月調査時の26.6%から31.4%に4.8ポイント増えた。ChatGPTの特性として、文章の要約であれば誤った情報が出力される可能性が低いことから、有効手段として利用が進んだものとNRIは分析する。
一方、「人の代わりのコミュニケーション相手になる」については、16.2%から11.9%に4.3ポイント減少していた。これについて業種別に詳しく分析したものが図表5だ。「人の代わりのコミュニケーション相手になる」は各業界で減少傾向にあるが、特に飲食店・宿泊業や医療・福祉業ではその傾向が高い。
しかし、飲食店・宿泊業や医療・福祉業では人手不足が課題となっており、既にロボット活用が進んでいる。今後の技術の進化によってChatGPTが「人の代わりのコミュニケーション相手になる」という回答は再び増える可能性もあると、NRIは見ている。
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