検索
ニュース

Microsoftが思い描く「AIエージェントの未来」は? ついに公開された事例も紹介CFO Dive

MicrosoftはAIエージェントを活用した業務自動化を推進している。専門性の高い業務をどの程度自動化できるのか。AIエージェントが変える「人間の役割」とは。ERP担当役員の見解を紹介する。

PC用表示
Share
Tweet
LINE
Hatena
CFO Dive

 Microsoftのゲオルク・グランツシュニッヒ氏(「Microsoft Dynamics 365 AI ERP」担当バイスプレジデント)によると、人が担ってきた業務を代わりに実行するために設計されたツールであるAIエージェントは、今後数年間で業務プロセスを根本的に変革する。一部の業務を不要にする一方で、新たな業務を生み出し、人間の役割が変わる可能性があるという。

Microsoft役員が語る「AIエージェントの未来」

 AIエージェントはまだ開発の初期段階にあり、企業財務のような専門領域に導入するのは時期尚早と考えるアナリストもいる(注1)。しかし、2024年に発表されたMcKinsey & Companyの報告書によると、AIエージェントは最終的には「熟練した仮想の同僚として人間とシームレス、かつ自然に連携して働くようになる」という(注2)。

 グランツシュニッヒ氏は「CFO Dive」に対し、「Microsoftは企業内のあらゆる業務プロセスがAIエージェントの影響を受ける未来を描いている。AIエージェントは、財務チームが決算業務のような労働集約的なプロセスを自動化するのに役立つ」と述べる。

 以下は、グランツシュニッヒ氏と「CFO Dive」のアレクセイ・アレクシス氏が電子メールでやりとりした内容を一問一答形式で編集したものだ(敬称略)。

――AIエージェント(エージェント型AI)を貴社はどのように定義していますか。また、ビジネスの自動化、とりわけ企業の財務領域について、どの程度変革をもたらす可能性があると考えますか。

グランツシュニッヒ:われわれはAIエージェントを「AIを使ってタスクを実行し、ユーザーの代わりに行動を起こすもの」と定義しています。AIエージェントは個人やチーム、企業の補助として機能する他、それらに代わって機能したりします。

 単純な質問に答えたり請求書を承認したりするような単一のタスクを実行するシンプルなプロンプトレスポンス型のエージェントから、受注だけでなく入金に至る業務プロセス全体を統括するような高度な完全自律型エージェントまであります。

 財務関連業務や報告書作成業務で求められる正確性やコンプライアンスを確保することは、全ての財務部門にとって基本的な責務です。財務データは複数のデータソースに分散しており、財務上の取引は社内外から流入し、記録されます。財務データの正確性を維持するのは難しい作業であるため、従来は手作業で実施されてきましたが、これにはヒューマンエラーのリスクもあります。

 AIエージェントによって主要な財務プロセスを自動化することで、財務担当者は正確性やコンプライアンスを損わずに、場合によってはむしろ向上させながらも、システム間でデータを検索する時間を節約できます。

 さらに、AIエージェントは動的に適応し、常に学習する能力を持ちます。決められたルールでしか動かない従来の自動化ツールには継続的なメンテナンスが必要です。AIエージェントによる業務自動化はそれらのツールに比べて高い持続可能性を誇ります。

ついに現れた AIエージェントの活用事例

――完全自律型のAIエージェントは実現するのでしょうか。それとも現段階では単なる理想に過ぎないのでしょうか。また、市場はそれを受け入れる準備ができていると思いますか。

グランツシュニッヒ:当社にとって、AIに対する顧客の信頼と信用は最優先事項です。そのため、2024年に当社のERPのポートフォリオ全体で支援型の機能を導入しました。現在では、ユーザーの50%が「Dynamics 365」で「Microsoft Copilot」を使用しています。

 AIエージェントにおいても責任を持って導入し、個々の顧客に適したペースで徐々に自律性を高めています。顧客やチームによってAIの導入プロセスや新技術の採用スピードは異なりますが、顧客が急速に導入を進めている事例も既に数多く見られます。

 実際に「Microsoft Copilot Studio」を使って独自のAIエージェントを構築している顧客もいます。英国最大のペットケア企業であるPets at Home Groupは、収益改善チーム向けにエージェントを開発し、熟練スタッフがレビューしやすいように事例をより効率的に整理できるようになりました(注3)。また、McKinsey & Company、Thompson Reuters、Clifford Chanceといった世界中の企業がMicrosoft Copilot Studioを活用し、独自のカスタムエージェントを構築することで大きな成果を挙げています(注4)。

 また、「Microsoft Copilot for Finance」にはデータを照合するための支援型エージェントと完全自動型エージェントが搭載されており、ユーザーは必要な自動化レベルを選択できます。最初は支援型エージェントでプロセスの各ステップを人間がチェックするようにし、慣れてきたら完全自動型エージェントに移行するといったことも可能です。

――貴社から見て、AIエージェントの企業財務への導入と利用に関して、人間が介入する要素はどの程度重要ですか。技術が進化し成熟するにつれてそれはどのように変化すると考えますか。

グランツシュニッヒ:エージェントはビジネスプロセスを自動化するもので、その複雑さや適用範囲、自律性はさまざまです。リクエストに応じてインサイトを提示するものから、個別のタスクを実行するもの、プロセス全体の計画、管理、統括を完全に自律的に実行するものまであります。

 その場合、エージェントはエンドユーザーと直接やりとりするのではなく、Microsoft Copilotと連携して動作します。AIを優先的に活用する企業では、全ての従業員が自分専用のMicrosoft Copilotを持ち、それを支える何万人ものAIエージェントが存在する未来をわれわれは期待しています。われわれの目標は、全ての従業員にMicrosoft Copilotを提供し、全てのビジネスプロセスにAIエージェントを配置することです。

 将来的には人間はより監督的な役割を担うようになり、エージェントが実行する業務や学習プロセスを管理するようになるでしょう。

 Microsoft Copilot Studioで作成されたエージェントは、作成者によって明示的に定義されたアクションとツールの範囲内でのみ動作します。

 作成者がエージェントと交わす各インタラクションはログに記録されるため、作成者はエージェントがどのアクションをなぜ呼び出したのか、その理由を確認できます。

 Dynamics 365向けに作成されたエージェントには、「人間の関与による承認」が含まれています。例えば、Dynamics 365 Financeのアカウント調整エージェントは、補助元帳と総勘定元帳の間の取引を自動的にレビューし、調整します。差異が見つかった場合、それを人間にエスカレーションしてさらなるレビューを実行します。

 人間はAIエージェントが処理する機能を選択し、いつでもこれらの設定を更新することができます。AIエージェントは人間によって解決された過去の事例を参照して、差異の解決策を提案します。AIエージェントは人間と共に働くことで学習し、ルールやアクションの更新を積極的に提案し、徐々により自律的になっていきます。いつでも人間がエージェントの操作をレビューできるため、完全な可視性と信頼が確保されます。

――将来的にAIエージェントによって企業の財務部門における特定の役割が取って代わられるリスクはありますか。もしそうなら、その影響はどの程度になるのでしょうか。

グランツシュニッヒ: AIエージェントは、決算業務のような労働集約的なプロセスを自動化し、合理化することで、多くの財務ワークフローを革新するのに役立ちます。その結果、財務専門家は戦略的なインサイトを提供し、ビジネスの成長を促進することにより多くの時間を費やすことができ、正確性と組織のコンプライアンスも確保されます。

 当社はAIエージェントが営業やサービス、その他の事業部門全般にわたって同様の効果をもたらすのを目の当たりにしています。そのため、AIファーストのビジネスプロセスの未来を楽観視しています。

 AI革命は、仕事そのものとその進め方を根本的に変えるでしょう。財務部門に対する正確な影響を判断するにはまだ時期尚早ですが、幾つかの仕事が消え、新しい仕事が出現する可能性が高いと考えています。上述のように、「管理業務」は「監督業務」に変わる可能性があり、「エージェントビジネス管理者」という新しい役割が出現しています。彼らはエージェントの設定と継続的な改善に責任を持ちます。

© Industry Dive. All rights reserved.

ページトップに戻る