基幹システムをAI時代にどう適応させる? 日本IBMが「3つの支援施策」を発表:AIニュースピックアップ
日本IBMは、AIと「IBM i」を活用し、企業価値を最大化するための業務変革を実現する基幹システム再構築施策を開始した。日本企業の競争力強化とTCO削減を支援する。
「2025年の崖」の本番の年を迎え、老朽化したシステムをAIをはじめとする新技術にどう適応させるかは頭の痛い問題だ。
日本アイ・ビー・エム(以下、日本IBM)は2025年10月2日、企業固有の業務ノウハウを生かし、強みである企業価値を引き出すための新たな基幹システム構築施策を開始した。同施策では、AIと超高速インメモリデータベースを搭載した「IBM i」を活用することで、基幹システムをAI時代に適応できるようにし、競争力の強化と長期的なTCO(総所有コスト)の削減を同時に実現することを目指す。
AI時代に基幹システムを適応させる「3つの支援施策」
同施策は、「施策A: 次世代ERP『IBM ERPフレームワーク』の開発」「施策B: オープン系アプリケーション用データベースの再構築」「施策C: COBOLアプリケーションとデータベース一体のコンバージョン」という3つから構成されており、企業の状況に応じて施策を選択できる。
各施策の概要は次の通りだ。
施策A: 次世代ERP「IBM ERPフレームワーク」の開発
日本企業向け次世代基幹アプリケーションパッケージ「IBM ERPフレームワーク」(以下、IBM ERP)を開発する。IBM ERPは販売管理や生産管理、経理、給与、ワークフローを網羅する。AIによるアプリケーションのカスタマイズ支援により、パッケージソフトウェアで、企業固有の強みを支える業務プロセスを容易に反映できる。
オンプレミスとクラウドの両方に対応するとともに、将来のIT環境での稼働(後方互換性)を確保しており、OSやデータベースの更新に伴う大規模な再構築作業が不要になる。2025年末から国内のビジネスパートナー各社が導入サービスの提供を開始する予定だ。日本IBMは、ビジネスパートナーとともに移行と保守を伴走支援する。
施策B: オープン系アプリケーション用データベースの再構築
高性能かつセキュアな超高速データベースを導入し、AIやIoTからの大量トランザクションに対応可能な統合データ基盤を構築する。この基盤は、既存のアプリケーションと従来同様の接続方式でリアルタイム接続が可能だ。
AIによるリアルタイム分析を実現し、迅速な経営判断を支援する。超高速データベースにより、基幹業務とAI分析の両方のパフォーマンス要求に応えるとともに、データウェアハウスを不要とするシンプルな構成を実現する。
ハッキングやランサムウェアに強く、アクセス制御や監査機能などセキュリティ管理機能を標準装備し、安心・安全・低ワークロードで、基幹データをはじめとする重要情報を保持・運用できる。
施策C: COBOLアプリケーションとデータベース一体のコンバージョン
他社メインフレームやオフコンで稼働する、自社の強みが組み込まれたCOBOLアプリケーションと各種データファイルをAI対応のインフラストラクチャに短期間、低リスクで移行させる。
既存の各種データファイルは全てリレーショナルデータベース構造を持つ超高速データベースに移行する。これにより、長年にわたって蓄積された膨大な自社固有の業務ノウハウが組み込まれたアプリケーションとデータの資産を生かしつつ、AIにより、データ活用とアプリケーション開発・保守の両面での効率化を図る。
各施策とも、オンプレミス、クラウド、またはその両方を組み合わせたハイブリッドクラウドに対応しており、各社の業務システムの特性に応じた柔軟な導入が可能だ。
生成AIを活用したコード開発支援ツールにより、プログラムの開発・保守・デバッグにおける生産性向上を支援する。また、基幹システムのデータと生成AIの連携により、自然言語によるデータの検索・抽出・分析が可能になり、データ活用の高度化を実現する。これにより、特定の技術者に依存しない持続的な開発体制の構築を支援する。
今後、日本IBMは、ビジネスパートナー各社と連携して同施策を推進する計画だ。
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