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Microsoft 365の値上げが訴訟 Copilotの抱き合わせ販売問題が再燃CIO Dive

MicrosoftのAIアシスタントCopilot統合に伴うMicrosoft 365の値上げが訴訟に発展した。豪ACCCは約270万人の顧客に誤解を与えたとしてMicrosoftを提訴した。AI機能追加によるコスト高騰への市場の反発が強まっている。

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CIO Dive

 MicrosoftのAIアシスタント「Microsoft Copilot」(以下、Copilot)の統合に伴う「Microsoft 365」の価格引き上げを巡り、抱き合わせ販売の問題が再燃した。

 2025年10月27日(現地時間、以下同)、オーストラリア競争・消費者委員会(ACCC)は、Copilotの統合を理由とする「Microsoft 365」の値上げに関連して、約270万人のオーストラリアの顧客に誤解を与えたとしてMicrosoftを提訴した。

 この訴訟は、「Microsoft Teams」(以下、Teams)のバンドル販売で欧州委員会の調査を受けた過去の経緯と重なる。SaaSへのAI機能追加によるコスト高騰というトレンドに対し、市場の反発は強まっている。

セット販売の問題点は「クラシックプラン」の存在

 訴状によるとMicrosoftは、Microsoft 365のパーソナルプランおよびファミリープランの加入者に対し、サブスクリプションを継続するにはCopilotの統合を受け入れる必要があり、より高い価格を支払わなければならないと伝えていたようだ。

 それに対しACCCは、「MicrosoftがCopilotを含まないクラシックプランの存在を知らせなかったことにより、顧客に誤解を与えた」と述べている。クラシックプランであれば、ユーザーはCopilotなしで従来の低価格のままサブスクリプションを維持できたという。

 ACCCの委員長であるジーナ・キャス=ゴットリーブ氏は、訴訟に関する声明で次のように述べた。

 「詳細な調査を経て、私たちは裁判で、Microsoftが案内からクラシックプランに関する言及を意図的に除外し、加入者が解約手続きに進むまでその存在を隠していたと主張している。これは、より高額なプランへ移行する消費者を増やすためだったと考えられる」

 Microsoftが既存のサブスクリプションプランにCopilotを組み込み、価格を引き上げた動きは、ベンダー各社が自社製品にAI機能を追加する流れが続いていることを反映したものだ。

 ITリーダーたちは、新しいAI機能がソフトウェア費用の高騰を引き起こしていると指摘する。調査企業であるForresterが2024年に公開したレポートによると(注2)、テクノロジーリーダーの5人中4人以上が、SaaS製品にAI機能が導入されることで、2025年のソフトウェア全体のコストが上昇すると考えていた。

 市場調査企業であるDeep Analysisのアラン・ペルツ=シャープ氏(創業者)は、ベンダーはバンドルソフトウェアを企業顧客に付加価値として売り込むことが多いと指摘している。さらに同氏は、2025年におけるエンタープライズソフトウェアの大半は、複数の製品や機能、特徴をまとめたバンドル方式で構成されていると付け加えた。

 ペルツ=シャープ氏によると、特定の業務プロセスを遂行するために必要な複数の製品を一つの価格でまとめて提供するバンドル方式は、買い手および売り手の双方にとって理にかなっているという(注3)。一方、同氏は「買い手が必要としていない製品をバンドルに含めると問題が生じる」と指摘している。

 ペルツ=シャープ氏によると、変革をもたらすようなAIプロジェクトには予算が確保されている一方で、単に新しい機能を追加したり、コンテンツの要約や検索方法を変えたりする程度のAIに対する予算は非常に少ないという(注4)。同氏は「企業は、それらの機能をビジネスの中核と見なしていない。あれば便利という程度の機能なのだ」と述べた。

 また、ペルツ=シャープ氏は次のように語る。

 「法廷であれ、ビジネスの現場であれ、市場からの反発はさらに強まるだろう。AIは価値を証明しなければならない。実際には大した価値を生み出していないのに、付加価値として追加料金を取るというやり方はもう通用しなくなるはずだ」

 Microsoftの広報担当者は2025年10月27日に、『CIO Dive』に対して送った電子メールの中で次のように述べた。

 「当社はACCCの主張を詳細に精査しているところであり、規制当局と建設的に連携し、自社の取り組みが全ての法律および倫理基準を満たすよう努めている」

 今回、オーストラリアで発生した訴訟は、Microsoftのバンドル販売が精査を受けた初めての例ではない。

 2023年に欧州委員会がMicrosoftのソフトウェアライセンスに対して、独占禁止法に違反しているかどうかの調査を開始した(注5)。これを受けて、Microsoftは2024年にTeamsをMicrosoft 365から分離させた(注6)。

 欧州委員会は、Microsoft 365などの製品群を契約する際、MicrosoftはユーザーがTeamsを含めるかどうかを選択できない状態にしており、Teamsの配布において不当な優位性を得ているのではないかという懸念を示していた(注7)。

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