生成AI導入で失敗する企業の4つの共通点:CIO Dive
生成AIの試験導入は95%が失敗していることが判明した。失敗する企業には4つの共通点があり、これらを解決できるかどうかが競争力の分かれ目になる。
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MITの調査で、企業は生成AIを迅速に展開できると大きな期待を寄せているにもかかわらず、生成AIの試験的な導入の95%が失敗していることが明らかになった(注1)。コンサルティング企業であるMcKinseyの調査でも、回答者の約66%が「自社は未だにAIの全社的な展開に着手できていない」と答えた(注2)。実際、多くの企業がAIの試験的な導入を延々と続ける状態に陥っており(注3)、2025年には生成AI導入の壁に突き当たった企業も少なくない(注4)。
コンサルティング企業のWest Monroeで最高AI責任者(CAIO)を務めるブレット・グリーンスタイン氏によると、試験的な段階を乗り越えられない企業は、次の4つのグループに分類できるという。
- 変革のための計画を立てないまま、AIのスケーリングを試みた企業
- IT部門が他部門を巻き込まずに進めてしまった企業
- AIに対して抵抗感を持つ従業員が多い企業
- 価値創出の可能性を十分に伝えず、共有できていなかった企業
クラウド黎明期などの過去の技術転換期にもこのような企業は見られた。しかし、現在は1つの大きな違いがある。
「AIはあらゆる職種に関わるものだ」(グリーンスタイン氏)
失敗を回避するために
AIの試験導入を成功させる責任はテクノロジー部門が担う。データ処理の要件が複雑では全社的な導入を妨げるため、データガバナンスが最優先事項に位置付けられているからだ(注5)(注6)。技術責任者は導入を始める前に、データセキュリティの課題も解決しなければならない(注7)。しかし、AIの試験的な導入を乗り越えるための障害は技術的な問題だけでない。
成功の鍵を握るのは、全部門におけるユーザーの存在だ。
SalesforceでAIおよびAgentforceを担当する最高顧客責任者(CCO)のレッグ・ベルトザー氏は次のように述べる。
「特にテストの段階では、あらゆるプロセスでビジネス部門の関与が不可欠だ。これは従来型のDevOpsのモデルではない」
旅行プラットフォームを運営するEngineでカスタマーエクスペリエンスおよびオペレーションを担当するデメトリ・サルヴァッジョ氏(バイスプレジデント)は「当社はAIツールについて語る際に『なぜそのAIを使うのか』という背景を伝えることをとても大切にしている」と語った。同社はSalesforceと長年にわたってAI分野で協業しており、Agentforceのプラットフォームの初期的な顧客のうちの1社でもある(注8)。こうした試行錯誤を歓迎する企業文化があったからこそ、AI導入が実証実験(PoC)で止まる状況を避け、本格活用に進めた。
透明性とオープンな姿勢があったことが、グリーンスタイン氏が挙げた最初の3つのグループにEngineが当てはまらなかった理由だ。リーダー層が従業員を巻き込み、仕事が奪われるのではないかという初期の不安を和らげられた。EngineでGTMシステムを担当するジョシュア・スターン氏(ディレクター)は、AIに関連する心理的な安全を整えることで、従業員がエージェントを自由に試し、その中で得た気付きを互いに共有しやすくなると指摘している。
スターン氏のチームは、Engineのカスタマーサポート用エージェントである「Eva」をわずか12日間で構築した。同氏は「これほど高い関心と技術的な理解を持つ立場にいると、チームと同じように、誰もが技術を歓迎し、前向きに受け止めてくれるはずだと思いがちだ」と語る。しかし、現実はそうではない。
「テクノロジー部門以外の従業員は不安を感じている。同僚や周囲の人がAIを活用して面白い取り組みをしている姿を見せて、心理的な安全を構築する必要がある。そうすれば、自分でも試してみたいと思うようになる」(スターン氏)
グリーンスタイン氏が挙げた4つ目の分類である「価値創出の可能性を十分に伝えず、共有できていなかった企業」にならずに済むのは容易に思える。しかし、エンタープライズの環境において価値を生み出すことは容易ではない。実際、MITが示した「失敗率95%」という数字は、調査対象となったAIのパイロットプログラムのうち、急速な収益拡大を実現できたのがわずか5%にとどまったというデータに基づくものなのだ。
ベルトザー氏は「このような差の一因は、分析ツールの不足にある」と述べている。例えば、成功指標を「従業員1人当たりが1日に削減できた時間」と定義した場合、それを実証するのは容易ではない。サルヴァッジョ氏によると、Salesforceは最終的にAgentforce向けの分析ツールを開発し、それがEvaの最適化に役立ったという。ただし、エージェントがどれほど高いリターンを約束していたとしても、土台となる基盤が不十分なままAIを導入すれば、その事実が価値を生み出せない要因となる。
「自動化や効率化を進めるには、業務プロセスの整備が前提となる。AIが多くの不十分なプロセスを実際に改善してくれる様を、私はこれまで見たことがない」(ベルトザー氏)
全てを一度に解決しようとしない
エンタープライズの環境でAI導入を進める際、グリーンスタイン氏およびスターン氏、サルヴァッジョ氏はいずれも最初から全てを一度にやろうとしないよう注意を促している。ベルトザー氏が述べたように、試験的な導入が失敗した場合、原因はAIではなく、さらに下層にある非AIの業務プロセスにある可能性もある。小さく始めることで、そうしたケースを見極めやすくなる。
「全てを同時に進めようとすると、効果を測定できず、結局は何も立ち上げられなくなってしまう」(スターン氏)
グリーンスタイン氏が関わったある企業は、AIで数十ものプロジェクトを実現したいと考えていたという。これに対して同氏は、まずは5つに絞って始めるよう助言した。これらのプロセスは同じデータソースを使い、必要とされるスキルも一部共通していたためだ。小さな範囲で課題を洗い出しておくことで、本格的な展開につなげやすくなる。
「そうすることで、他の多くの取り組みで問題になっていた前提条件や依存関係がすでに解消されていることに気付くはずだ。その結果、取り組みを進めやすくなり、第2フェーズ、第3フェーズとして段階的に展開できるようになる」(グリーンスタイン氏)
Engineは試験的な導入の段階を超えることに成功したが、本格的な展開はまだこれからだ。スターン氏によると、同社はAIエージェントの新たなユースケースを日々発見しており、それ自体が計画の一部だという。
「まずは小さなユースケースに取り組もう。そこで得た学びを生かし、成功体験を構築する。それがチームの力になり、周囲で取り組みを支えている全ての人たちの後押しにつながる」(サルヴァッジョ氏)
出典:Why enterprise AI pilots fail(CIO Dive)
注1:MIT report: 95% of generative AI pilots at companies are failing(FORTUNE)
注2:The state of AI in 2025: Agents, innovation, and transformation(Quantum Black)
注3:How PepsiCo moves past AI pilot purgatory(CIO Dive)
注4:CIOs cull internal generative AI projects as vendor spending soars(CIO Dive)
注5:Data difficulties still prevent enterprise AI project success(CIO Dive)
注6:Immature data strategies threaten enterprise AI plans(CIO Dive)
注7:Data security gaps stymy enterprise AI plans(CIO Dive)
注8:Salesforce bets on IT automation as AI demand rises(CIO Dive)
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