IPA、サプライチェーンの企業間データ連携に関する共通指針を公開 「データスペース」で信頼性のあるデータ流通目指す
IPAはサプライチェーンの企業間データ連携に関する共通要件を整理したガイドラインを公開した。業務要件や設計方針を示し、分野別ガイドライン策定を効率化すると同時に、炭素排出管理や製品履歴管理など社会課題への対応を促進する。
独立行政法人情報処理推進機構(以下、IPA)は2026年3月10日、企業間でのデータ共有の基盤整備を目的とした「データ連携の仕組みに関するガイドラインの手引き サプライチェーン共通編1.0版」を公開した。原材料調達から製造、流通までの過程に関わる企業間のデータ共有の共通要件や設計方針を整理した文書で、分野別のガイドライン策定を効率化し、炭素排出量管理や製品履歴管理など社会課題への対応を後押しする狙いがある。
サプライチェーンの可視化へ、IPAがデータ連携の共通要件を整理
経済産業省およびIPAのデジタルアーキテクチャ・デザインセンター(DADC)は、企業・業界・国境を越えたデータ共有基盤の整備を進めている。今回公開した文書は、サプライチェーン領域で共通となる業務要件や機能要件を整理したもので、分野別のユースケースに対応するガイドライン作成時の参照文書として位置付ける。
近年、炭素排出削減、循環型経済の推進、経済安全保障の強化などを背景に、サプライチェーン全体の可視化とデータ共有の必要性が高まっている。製品の環境負荷や原材料の履歴を把握するためには、企業の枠を超えたデータの共有が不可欠となっている。
しかし、企業ごとに異なる方式でデータ共有の仕組みを整備すると、ガイドライン作成の負担が増える他、仕様のばらつきが生じる課題があった。そこで同機構は、サプライチェーン領域で共通となる要件を整理し、分野別の指針作成を支援する枠組みをまとめた。
公開された文書は企業間の取引契約に基づく信頼関係を前提としたデータ共有を対象とし、原材料調達から製造、物流までの業務を想定する。企業のデータ管理権限を尊重しつつ、製品履歴管理、信頼性の確保、システム間の接続性、サービスの多様性などの観点から必要となる要件を提示した。
また、IPAや一般社団法人データ社会推進協議会(DSA)などが共同で推進するデータスペースの共通仕様「Open Data Spaces」のアーキテクチャモデル「ODS-RAM」を参照し、ビジネス構造やシステム構成、インタフェース設計の基本方針を整理した。共通識別子やデータモデルの活用、モデル規約の利用など、実装に向けた具体的な指針も盛り込んでいる。
序章と第1〜7章で構成され、序章では文書の目的や対象読者を示す。第1章ではデータ共有の必要性と社会実装の意義、第2章ではデータ管理権限や履歴管理などの基本原則、第3章ではサプライチェーンの業務要件を整理する。第4章ではデータスペース運営主体を中心としたビジネス構造を示し、第5章では履歴管理や連携アプリケーションの機能要件、第6章ではインタフェースとデータ設計の方針を示した。
IPAは、蓄電池の製品カーボンフットプリントや自動車のライフサイクル評価などの分野で、既にデータ共有のガイドライン整備が進んでいると説明する。今回の文書は、これらの取り組みで共通となる要件を整理した基盤的な文書として位置付ける。共通要件を基盤とし、各分野が独自の要件を追加する形でガイドラインを整備することで、策定作業の効率化や品質の安定化を図る。公益デジタルプラットフォームの認定制度などとも連動し、データスペースの普及を促進する。
IPAは今回の文書について、炭素排出量管理や製品履歴管理などの社会課題の解決に向けたデータ共有基盤の整備を支援し、産業競争力の向上につなげる役割を担うとしている。2025年12月16日から2026年1月14日まで実施した意見公募の結果を反映した正式版で、今後もデータスペースの社会実装の進展などに応じて内容を更新する予定だ。
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