DeNA、「Devin」を全社2000人超に導入 「作業効率6倍」でレガシーコードを刷新:AIニュースピックアップ
DeNAは自律型AI「Devin」を全社導入し、従業員約2000人が利用する基盤を構築した。開発部門だけでなく営業部門などでも業務効率化を達成したという。
ディー・エヌ・エー(以下、DeNA)は2026年3月4日、自律型AIソフトウェアエンジニア「Devin」のエンタープライズ版(Devin Enterprise)を全社導入したと発表した。
「Devin」で開発・分析・営業を刷新
DeNAはゲームやライブ配信、ヘルスケア、スポーツ、スマートシティーなど複数領域で事業を展開する。技術基盤や情報管理条件が各事業ごとに異なる環境でAIを活用するには、柔軟な統制と安全な利用環境の確立が不可欠であった。
2025年7月にはDevinの開発元であるCognition AIと戦略提携を締結し、社内での導入検証を進めてきた。クラウドのVirtual Private Cloud(VPC)環境でDevin Enterpriseを運用し、シングルサインオンを含む独自の認証・権限管理を整備した。事業ごとに異なるセキュリティ条件に対応した運用体制を整えたことで、全社規模の利用に踏み切った。
導入は約半年の準備期間を設け、3段階に分けて実施した。第1段階のアルファ版ではコアメンバーが技術検証を実施し、企業利用に必要な統制条件を整理。第2段階のベータ版では実際の開発案件に近い環境で試験運用を実施。専用Slack環境の運用ルール整備や組織単位の自動生成フローなどを整えた。最終段階で全社に展開した。現在、40以上のチームで利用が始まっている。また導入過程においてはAIの計算資源(ACU)の消費状況を監視しつつ利用状況を分析し、効果的な活用方法の検証を進めた。
開発分野ではレガシーシステムのコード移行で大きな成果が確認された。社内資産管理APIをPerlからGoに移行する作業においては、従来半年規模と見込まれていた作業を約1カ月で完了したという。
横浜・関内地区に開業予定の体験施設「ワンダリア横浜」のスマートフォンアプリ開発でも活用された。iOS版とAndroid版のコードを横断的に解析し、片方の実装内容を基に別のプラットフォーム用コードを生成することで開発速度を約2倍に引き上げた。
オフショア開発の品質管理でも成果が出ている。海外パートナーから納品されたコードについて、仕様書に基づくレビューや受け入れテストをAIが自動実行。従来1〜2日かかっていた検収作業は数時間で完了するようになり、セキュリティ面でも専門チームの指摘の半数以上を事前に検出、修正した。
社内文書管理の面でもAIを活用している。ソースコードの内容を解析して仕様書を自動更新する仕組みを構築し、常に最新の設計情報を維持する体制を整えた。これにより非エンジニアでも仕様を直接確認でき、確認時間が最大で10分の1に短縮された。部署単位では月間約2000時間のコミュニケーション負荷削減を見込む。
データ分析分野では分析専用エージェント「Devin Analytics Agent」を導入。ゲーム事業の分析部門においては分析要件整理からSQL生成、可視化までの作業をAIが自動実行する環境を整え、分析業務の効率は約3倍に向上した。
営業部門でも活用が進む。顧客要望に対しAIがソースコードを解析し、機能適合性の確認や追加開発の工数算出を支援する。エンジニアへの確認工程が減り、見積作成の速度は従来比で約8倍に高まった。
同社は今後、社内での成功事例を横断的に展開し、ソフトウェア開発プロセス全体を高度化する。AI活用ワークショップなどを通じて他のAIツールとの連携手法も社内へ広げる方針だ。またグループ会社「DeNA AI Link」を通じて国内企業への導入支援も強化する。企業用AI導入コンサルティングやガバナンス構築支援、コード移行など開発課題への活用支援、ハンズオンセミナーなどを提供する。
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