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M365利用中の京都市が職員7000人に「NotebookLM」を配ったワケ 利用者の8割が「業務の質向上」Google Cloud AI Agent Summit ’26 Spring

京都市がNotebookLM Enterpriseを導入。Microsoft 365を利用する中、なぜ同製品の大規模導入へと踏み切ったのか。職員の8割が業務向上を実感した活用法と、Gemini Enterpriseによる「全庁統合AIアシスタント」が描く自治体DXの未来とは。

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 京都市は2026年1月、約7000人の職員を対象に「NotebookLM Enterprise」を導入した。今後は「Gemini Enterprise」を基盤としてノートブック同士をつなぎ、「全庁統合AIアシスタント」の実現を目指すという。

 NotebookLM Enterpriseの利用開始後わずか2カ月で利用者が2000人を超え、その内の約8割が業務の質の向上を実感している京都市。今後はNotebookLM Enterpriseのさらなる展開と併せ、Gemini Enterpriseを組み合わせたAIエージェントの本格活用を進める方針だ。

 Google Cloudが開催した「Google Cloud AI Agent Summit ’26 Spring」に京都市の原正直氏(総合企画局 デジタル化戦略推進室 デジタル化戦略係長)と電算システム(DSK)の岸本泰誠氏(ソーシャルイノベーション事業部 アドバンスドソリューショングループ マネージャー)が登壇し、京都市がNotebookLM Enterpriseを導入した経緯や活用状況、生成AI活用のロードマップについて語った。

京都市がNotebookLM Enterpriseを導入するまで

 京都市は、2022年1月に策定した「京都市DX推進のための基本方針」に基づき、市政の各分野でDXを推進している。一方で長年続く深刻な財政難により、デジタルデバイスやツールなどのインフラ整備が他の自治体に比べて遅れがちなことが課題だった。

 こうした状況は、2024年2月に新市長が就任し、職員の働き方改革を推進する方針を掲げたことで一変する。DXを推進して業務に「余白」を生み出し、その余白をより創造的な市政運営に充てるべきだという考えの下、生成AI活用をはじめとするデジタル環境の整備が急速に進められた。


京都市の生成AI導入ロードマップ(出典:岸本氏の投影資料)

 施策の一環として導入されたのがNotebookLM Enterpriseだ。庁内で部分的に「Google Workspace」の活用する中で、「NotebookLM Pro」を評価する声が多かったことが導入のきっかけになったという。

 「NotebookLMは、指定した資料だけを参照して回答を生成でき、比較的精度の高い回答を得られます。そのため行政業務との親和性が高く、全庁展開できる可能性があると考えました」(原氏)

 当初はノートブックの共有やGoogle Workspaceとの連携を考慮し、全職員向けに「Google Workspace Enterprise Standard」を導入してNotebookLM Proを利用する案が浮上した。しかし、庁内の標準グループウェアとして既に「Microsoft 365」を導入しているため、NotebookLM単体を全庁に導入できるNotebookLM Enterpriseに白羽の矢が立った。

 予算の確保にあたっては、NotebookLM Enterprise導入による具体的なメリットをあらかじめ整理して予算部門と合意形成した。提示されたのは「ナレッジの共有や蓄積、継承」「答弁書や議事録作成の高速化」「データに基づく政策立案の促進」といった項目であり、これらは単なる導入根拠ではなく、京都市が今後庁内で展開を目指す活用方法でもある。

 なお、自治体における生成AIの業務活用では、セキュリティを理由に機能を制限しているケースが多い。しかし原氏によると、京都市は技術的な安全性を確認した上で、NotebookLMやGoogle Workspaceから利用する「Gemini」の活用で機密情報や個人情報の取り扱いを解禁しているという。

京都市におけるNotebookLM Enterpriseの活用状況

 京都市は、2026年1月からNotebookLM Enterpriseの利用を開始し、市長部局の全職員約7000人にアカウントを展開した。

 導入開始から1カ月の時点で職員の30%に当たる約2000人が利用し、その後も利用者は順調に増えている。導入後2カ月の時点で実施した職員アンケートによると、利用者の約7割半が「週平均1時間」の効率化を実感し、これは年間に換算すると約50時間の業務時間削減に相当する。また、利用者の約8割が「業務の質の向上」を実感し、そのうちの2割半は「劇的な業務の質の向上」を実感していることが分かった。

 同アンケートによると、主な用途は「資料からの情報検索・抽出」「文章の要約・校正等」「議事録・摘録作成」「専用チャットボットの作成」だ。原氏は実際の活用例を2つ紹介した。

1.計理事務用のAIチャットボットの作成

 計理事務に関わる膨大なマニュアルをNotebookLMに読み込ませてAIチャットボットを作成した。職員は、例えば「京都市から100キロ圏内の市町村に出張する場合の旅費の取り扱いをまとめて」と質問するだけで正確な情報を得られるようになった。


経理事務マニュアルチャットbotのイメージ(出典:岸本氏の投影資料)

2.職員向けのコンプライアンス研修動画の作成

 コンプライアンス推進室が実施している、職員向けのコンプライアンス研修の資料動画をNotebookLMの動画解説機能を活用して作成した。これまでは「京都市職員コンプライアンス推進指針」を職員に渡していたが、NotebookLMの活用によって長大なテキストデータの動画化に成功し、研修資料としてのクオリティが認められて全庁配布された。

京都市の生成AI活用ロードマップ

 岸本氏は京都市の導入事例を踏まえて、NotebookLMを組織に展開するに当たっての課題を次のように指摘する。

 「NotebookLMは、特定の資料群から精度の高い回答を得ることに長けています。しかし、自治体が保有するデータは膨大かつ多岐にわたり、時には数万件ものドキュメントの横断的な分析や、分析結果を基にして資料を作成する、メールを送るといった具体的なアクションが求められます」

 そこでDSKが提案し、京都市と合同で検証を進めているのが、Google CloudのAIエージェント基盤、Gemini Enterpriseによる全庁統合AIアシスタントの実現だ。

 API経由でGoogle WorkspaceやMicrosoft 365、「Salesforce」「SAP」などの基幹システムと接続し、専門的な分析から全社的な業務実行まで実現する。また、組織が所有する複数の長大な資料をまとめて扱えるだけでなく、Webの公開情報をリアルタイムで参照することも可能だ。NotebookLMが個々のナレッジを整理する「情報の箱」だとすれば、Gemini Enterpriseはその箱同士をつなぎ、組織の意思として動かす「脳」の役割を果たす。

 「全庁統合AIアシスタントは、数万件のPDFや庁内ポータル、各種統計データベースといった全庁規模のデータだけでなく、ファイルサーバや既存のナレッジベースも網羅した全庁横断検索を可能にします。また、都市計画の図面や観光データグラフを含む複雑な資料を正確に理解し、検索した情報を要約して『市民向け周知文の下書き作成』といったタスクを自律的に実行します」(岸本氏)

 セッションでは、全庁統合AIアシスタントのデモンストレーションが披露された。岸本氏がチャット画面で「京都市中学校の全員給食に関する過去の議論の変遷」を問うと、全庁統合AIアシスタントは約30年分の議事録データを検索して分析し、議論の争点や各会派の主張を整理したレポートを生成した。さらに、指示に従って市民向けの解説用インフォグラフィックを生成し、「Google ドキュメント」に市長の答弁案を書き出した。


全庁統合AIアシスタントのデモンストレーションにおけるシステム構成(出典:岸本氏の投影資料)

 全庁統合AIアシスタントはマルチエージェント構成を採用したことで、精密な動作を実現しているという。

 「まず、ノートブックを1つのエージェントと位置づけ、各ノートブックにエージェント的なアクションを追加します。そして、親エージェントである『統合検索エージェント』が、『会議録検索エージェント』『市税情報検索エージェント』といったエージェントの中から適切なエージェントを選択し、正確な結果を得るために検索語句を変えながら繰り返し検索します。さらに、AIが出力した結果は、画像生成モデル『Gemini 3.1 Flash Image(Nano Banana 2)』でインフォグラフィック化される仕組みです」(岸本氏)

 NotebookLMとGemini Enterpriseの連携によって、京都市の生成AI活用はどう進化するのか。今後も注目していきたい。

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