「ERP導入はイジりすぎると失敗する」ガートナー調査で明らかに 失敗しないラインは?:IT調査ピックアップ
ERP導入プロジェクトにおいて、カスタマイズ率がある閾値を超えると、納期、予算の超過リスクが顕著に高まることがガートナーの調査で明らかになった。成功と失敗を分ける「境界線」はどこにあるのか。
ERPシステムの導入・刷新プロジェクトは、多くの企業にとって数年に一度の大規模な経営投資だ。クラウドERPの台頭やAIの進化を背景に、レガシーシステムのモダナイズと業務変革の手段としてERPの見直しを進める企業が増えている。
しかし、IT調査会社のガートナーが2025年に実施した国内ERP利用実態調査によると、ERP導入を「成功」と評価する日本企業は約1割にとどまる。プロジェクトの成否を分けている要素の一つが、ERPをどれだけカスタマイズするかという程度の差だ。
調査によると、ERPの標準機能に合わせて自社の業務を変更する「Fit to Standard」アプローチを採用した企業は30.8%に上る。一方、カスタマイズ率が50%以上の企業も30.6%存在しており、企業によって取り組みに大きな差がある。
カスタマイズの程度と、プロジェクトの成否の間にはどのような関係があるのか。
カスタマイズ率が何パーセントを超えると、失敗リスクが高まるのか?
ガートナーの調査によると、カスタマイズ率が20%以上になると、20%未満の場合と比べて納期超過のリスクが9.9ポイント、予算超過のリスクが14.5ポイント高まる。
「過度なカスタマイズは技術的負債となることで運用負担の増大を招き、アップグレードが困難になる結果、AIをはじめとする新技術・機能のタイムリーな適用や、それらを生かした業務変革を阻害する。ERPへのカスタマイズによる負の影響を軽減するには、目安として20%ラインを超えないことを目指すべきだ」と、ガートナーの本好宏次氏(バイスプレジデント アナリスト)は指摘する。
Fit to Standard実装を成功させる3つのアクション
カスタマイズ率を抑え、標準仕様に合わせて業務を変える「Fit to Standard」を成功させる秘けつは何か。ガートナーが推奨するのが以下の3つのアクションだ。
- ペース・レイヤ戦略の活用: 全ての要件を平等に扱うのではなく、「基礎」「差別化」「革新」の3層に分類する。競争優位性に直結する「差別化」領域では無理に標準化せず、API連携を通じた外部プラットフォームの活用や専用パッケージの採用によるコンポーザブルなアーキテクチャの構築を推奨する
- カスタマイズに関する基本方針の策定: パッケージの標準ソースコードの改変を禁止する原則を明文化し、ガバナンス体制を整備する。パッケージ内部へのカスタマイズは、法規制への対応や真の差別化要件に限定する
- 「業務を変える」マインドセットへの転換: 従来の「パッケージを業務に合わせる(Fit & Gap)」手法から脱却し、「標準機能に業務を合わせる(Fit to Standard)」文化へと組織の思考を転換する。初期段階でプロトタイプを用いたトレーニングを実施して標準プロセスへの受容性を高めることも有効だとしている
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
AIに代替される人材の特徴は? 「2029年までに定型業務のみ人材の90%がAIに」
Gartnerは、2029年までに定型業務のみに従事する人材の9割がAIに代替されると予測した。企業とその従業員に求められる対応とは。
ランサムウェア対策するなら今が好機 4つのアクションをガートナーが提言
ガートナーはランサムウェア攻撃への対策として国内企業が取るべき4つのアクションを示した。国内大手企業でランサムウェア被害が相次ぐ中、事業継続を確保することは喫緊の課題だ。経営層の関心が高い今が議論推進の好機だという。
AIエージェントは情報漏えいの温床 ガートナーが指摘する「管理不能リスク」
ガートナーはセキュリティ対策が不十分なAIエージェントが攻撃者に悪用され、社内データ侵害の経路となる恐れがあると指摘した。同社によると、数年以内に企業の情報漏えい問題としてこれが顕在化するという。
2028年にインシデント対応の5割はAI関連に ガートナーが予測
ガートナーは2026年以降のセキュリティの展望として、AI普及によってリスク管理が激変すると発表した。2028年にはインシデント対応の半分がAI関連となり、規制対応の遅れやデータ負債、ID管理が複雑化するという。
