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「VMwareからの移行障壁」を解消へ NetAppとの提携で外部ストレージ活用と高速移行を実現「.NEXT 2026」現地レポート

Nutanixは年次カンファレンス「.NEXT 2026」で、エージェンティックAI基盤やベアメタルKubernetes対応など39の新機能を発表した。NetAppとの提携やCisco製品の認定拡充により、VMwareからの移行障壁を解消し、オープンな選択肢を強調した。

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 Nutanixはストレージやサーバ、ネットワークを統合するハイパーコンバージドインフラ(HCI)のベンダーとして確固たるポジションを築いた。その後、ハイブリッド/マルチクラウド管理に拡大し、このところはAIインフラとしての機能も取り込んでいる。

 同社は2026年4月7〜9日(現地時間)、米国シカゴで年次カンファレンス「.NEXT 2026」を開催している。過去最多となる5000人が参加した今回のテーマは「One Platform, One Experience, Only Nutanix」だ。

 初日の基調講演ではCEOのRajiv Ramaswami(ラジーブ・ラマスワミ)氏(以下、ラマスワミ氏)が登壇し、エージェンティックAIインフラの強化、ベアメタルKubernetesへの対応拡張、NetAppとの戦略的提携などを発表した。


ラジーブ・ラマスワミ氏(筆者撮影、以下同)

エージェンティックAIアプリの開発のための「Nutanix Agentic AI」

 ラマスワミ氏はまず、現在の顧客が直面している3つの課題を整理した。第1はAI活用の難易度の高さだ。組織にとってAI導入は重要な課題だが、進めるに当たって統合の難しさや投資対効果の見えにくさが壁になっている。第2はデジタル主権(ソブリン性)だ。データやインフラの管轄を自国、自社で維持したいというニーズは地政学的な不確実性の高まりとともに高まっている。第3はハードウェアのサプライチェーン制約だ。メモリ不足を中心に調達難が続き、既存資産を最大限に活用しながらモダン化を進めるという必要に迫られている。

 「Nutanixはこれらの課題を乗り越える支援を提供できる」とラマスワミ氏はステージから語る。具体的には、「AIなどのイノベーションの加速」「モダン化」「あらゆる環境であらゆるアプリを動かす」が3つの柱とした。

 これらを実現するのが、2026年3月のNVIDIAのイベント「GTC 2026」で発表した「Nutanix Agentic AI」だ。同ソリューションはエージェンティックAIアプリケーションの開発、運用に必要な要素を統合したフルスタックプラットフォームで、2026年後半に一般提供を開始する。

 スタックは4層で構成される。第1層は開発者向けのAIサービス群と「Kubernetesプラットフォーム」だ。ベクターデータベース、MLOpsコンポーネントなどオープンソースのベスト・オブ・ブリードなコンポーネントを調整したサービスカタログを提供する。モデル管理では、既に提供しているファインチューニング、スケーリング、推論最適化などの機能に加え、ポリシーベースのガバナンスとアクセス制御、コスト追跡、Model Context Protocol(MCP)対応を実現するゲートウェイ機能を実装した。

 第2層はインフラだ。Nutanixのハイパーバイザーである「Nutanix AHV」(以下、AHV)はサーバのGPU構成を認識可能となり、AIワークロードを最適なGPUに自動配置することで利用率と性能を最大化する。また、ネットワーク仮想化「Nutanix Flow」(以下、Flow)をDPU(データプロセッシングユニット)にオフロードすることでメインCPUのリソースを解放し、マイクロセグメンテーションによってテナントとワークロードを安全に分離する。

 第3層はデータだ。推論処理に欠かせないキー・バリュー(KV)キャッシュをGPUメモリから安価なストレージにオフロードし、ストレージからGPUメモリへの低レイテンシ、高スループットのデータストリーミングを実現する。NVIDIA認定ストレージパートナーも取得済みだ。

 第4層はテナント&AI管理で、「Service Provider Central」が中核となる。複数のテナントを単一の共有インフラでセキュアに運用するためのマルチテナント管理機能で、GPU-aaS、Models-aaS、Kubernetes-aaSなどのサービスカタログを提供する。現在は早期アクセスを提供中で、2026年後半に一般提供予定だ。いわゆる「ネオクラウド」と呼ばれる新興GPUクラウド事業者が、複数の企業顧客にAIサービスを提供するための基盤としても設計されている。

 パートナーシップも拡充した。AMDからは最大2億5000万ドルの出資を受け、AMD GPUを活用したAIインフラの共同ソリューション開発を進める。NVIDIAとの長年のパートナーシップも継続しており、NVIDIAの新GPUリリースに随時対応するとともに、NVIDIAのソフトウェアスタック全体をプラットフォームに統合している。


パートナーとともにAgentic AIを実現していく

ベアメタルKubernetesで「コンテナとVMの壁」を崩す

 コンテナと仮想マシン(VM)を同一プラットフォームで統合管理する「ワンエクスペリエンス」の実現に向けて発表したのが「NKP Metal」だ。自社Kubernetes管理ソリューションの「Nutanix Kubernetes Platform」(NKP)をベアメタルインフラに展開できるようにする新機能で、現在早期アクセスを提供中、2026年後半に一般提供予定だ。

 仮想化のオーバーヘッドを排除することで、AIトレーニングやGPU密度の高いエッジ環境において最大限の性能を引き出すことができる。ラマスワミ氏は「この方式を提供しているのはNutanixだけ」と強調した。

 NKP Metalの特徴は単なるベアメタルKubernetesにとどまらない点にある。ストレージについては、VMプラットフォーム向けの「AOS」、パブリッククラウド向けの「Cloud Native AOS」に続き、ベアメタル向けの「Cloud Native AOS」を提供することで、どの環境でも一貫したストレージ体験を実現するという。

 ネットワーキングは、FlowがコンテナとVMの両エンドポイントに対応し、通信を細かく制御して不正アクセスを封じ込める「Flowマイクロセグメンテーション」もコンテナとVMの両方でシームレスに機能する。データベースは、同社のデータベース管理サービスである「Nutanix Database Service」(NDB)をコンテナ基盤でも動作するよう再設計した。なお、NDBではMongoDBのサポートの強化も発表されている。


ベアメタル上のKubernetesを実現するNKP Metal

 ラマスワミ氏は、「コンテナの世界とVMの世界を横断する、真のシングルプラットフォーム・シングルエクスペリエンスを実現する」と述べた。

 アプリケーションエコシステムも拡充した。これまでVMware環境での認定にとどまり、Nutanix移行の障壁となっていた「Cisco Unified Communications」が、AHVで正式認定された。通話機能は即日提供開始、コンタクトセンターとミーティング機能は2026年後半に提供予定だ。また「Microsoft Azure Virtual Desktop」(AVD)をオンプレミスのNutanix環境でホストできるハイブリッド対応も発表した。

「なぜNutanixを使うのか?」から「なぜ使わないのか?」へ変わった


スティーヴン・ホール氏

 基調講演では複数の顧客が登壇した。中でも印象的だったのが、医療保険会社のBlueCross Blue Shield of Tennesseeでインフラと運用担当バイスプレジデントを務めるStephen Hall(スティーヴン・ホール)氏(以下、ホール氏)だ。テネシー州内外の300万人以上の会員に医療保険サービスを提供する同社には、「ITインフラが会員の医療アクセスの障壁になってはならない」(ホール氏)という使命が技術選択の根底にある。

 同社は約6〜7年前からNutanixを利用している。最初のきっかけはVDI(仮想デスクトップインフラ)の課題の解決だった。大規模なVDI環境が限界に直面したことから、Nutanixを選択、現在、同社のAHVへの移行は75%完了し、年末までに100%を目指している。直近では、2025年12月に導入したEverpure(旧Pure Storage)の「FlashArray」を使った外部ストレージ対応も開始した。

 「導入から1日以内にマイグレーションを開始し、週末には最初の本番ワークロードを移行した。今週、トラブル報告は一切ない」とホール氏は語った。今後は「Nutanix Cloud Clusters」(以下、NC2)でのパブリッククラウド展開、NKP、「Nutanix Unified Storage」(NUS)、そしてAIへの活用も視野に入れている。

 当初は「なぜNutanixを使うのか」と自問していたというが、サポートの質の高さと選択肢の広さが信頼の積み重ねとなり、いつしか問いは「なぜNutanixを使わないのか(Why not Nutanix?)」へと変わったとホール氏は振り返った。

外部ストレージサポートで、NetAppと提携

 今回、エコシステム戦略として最も注目を集めたのがNetAppとの戦略的提携だ。Nutanixはここ数年、外部ストレージのサポートを進めており、「Dell PowerFlex」とFlashArrayのサポートを開始した。既存のサーバとストレージ資産を活用してNutanixプラットフォームに移行できる方法を提供している。

 今回加わるNetAppは独自のストレージOS「NetApp ONTAP」(以下、ONTAP)を持つこともあり、Nutanixが「どこでも動く」の実現に向けて本腰を入れていることを示した格好だ。

 技術的な統合はNFSベースで実施される。「Nutanix Cloud Platform」(NCP)のAHVハイパーバイザーとONTAPストレージを接続し、「NetApp Shiftツールキット」によってデータをその場に置いたままVMを変換することで、従来は数時間を要していた移行作業を数分に短縮できる。また「NetApp ONTAP Autonomous Ransomware Protection with AI」(ARP/AI)によるリアルタイムのランサムウェア検知機能もそのまま利用可能だ。一般提供は2026年後半を予定している。


サンディープ・シン氏

 基調講演後半のパートナーセッションに登場したNetAppのシニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャのSandeep Singh(サンディープ・シン)氏は「顧客が求めているのは、運用の柔軟性、セキュリティとレジリエンス、そして統合データ管理によるシンプルな運用だ。この3つのポイントが、NetAppとNutanixとのパートナーシップを特別なものにしている」と語った。

 イベントでは、「Dell PowerStore」が早期アクセスとして提供開始(今夏提供開始予定)、「Cisco FlexPod」(Cisco UCSサーバ+Nutanix+NetApp)の検証済みアーキテクチャ、「Lenovo ThinkSystem」のサーバ、ストレージとのフル検証済みソリューションも2026年後半に提供予定となることも発表された。

 この他、ソブリンクラウド対応も強化した。NC2は「AWS GovCloud」(米国政府機関向け)への対応を一般提供開始した他、「AWS European Sovereign Cloud」への対応を2026年後半に予定している。また「Google Cloud」での「Hyperdisk」および「C3ベアメタルインスタンス」のサポートも2026年後半に追加する計画だ。

 ラマスワミ氏は講演の締めくくりに、合計で39の機能強化、新機能をイベント中に発表すると述べた後、BroadcomによるVMware買収後の状況に言及し、次のように語った。

 「(Broadcomは)必要かどうかに関わらずフルスタックの購入を強制している。これは、(Broadcomが)イノベーションではなく、利益の最大化に注力しているからと言える。Nutanixは顧客の現在と未来のニーズを、オープンなプラットフォームで支えていく」


Nutanixは今年の.NEXTで39のイノベーションを発表した

(取材協力:Nutanix)

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