待てない現場、抱え込むIT部門 生成AIによる「開発の民主化」を火種にしない方法:AIニュースピックアップ
コード生成AIの活用が進むことで事業部門がシステム開発を主導するケースが増え、IT部門との役割の境界が曖昧になっているとIDCは指摘する。CIOには役割明確化と統制確保を前提に迅速な開発環境整備が求められるとした。
IDCは2026年4月27日(現地時間)、生成AIによるコード自動生成技術の普及が企業の開発体制を大きく変えつつあり、従来IT部門が担ってきたシステム開発が事業部門にも広がっているとの見解を示した。これに伴い、最高情報責任者(CIO)の役割は一段と複雑化しており、組織横断の統制と俊敏性の両立が急務になっていると指摘した。
非エンジニアが主役になる時代 CIOの新戦略
企業のIT部門はこれまでも、基幹システムの安定運用やリスク管理、顧客対応、新機能の提供などさまざまなな責務を抱えてきた。加えて、技術の進化に追随する必要があり、組織内の権限や責任の不明確さによる摩擦も課題となってきた。こうした状況に対し、AIは開発の高速化や生産性向上に寄与するが、他方で新たな運用リスクや統制課題を生み出している。
特に経営層や各事業部門はAI投資の成果を早期に求めており、IT部門を待たず独自にツール導入や開発を推進する動きが強まっている。これまでも見られた現象ではあるが、自然言語でコードを生成するツールの登場により、非エンジニアでもアプリケーションや業務自動化の仕組みを構築できる環境が整った点が大きな変化といえる。
実際に、AIコード生成ツールは企業導入が急速に進んでおり、外部コンサルティング企業と連携した普及も進展している。これらのツールは単なるコード補助にとどまらず、業務アプリケーションの構築やワークフローの自動化、AIエージェントの生成まで可能にしている。財務や営業など各部門が自らの課題解決に向けて開発するケースが増加している。
この結果、IT部門と事業部門の役割は曖昧(あいまい)になり、同一機能の重複開発や責任範囲の不明確化が生じやすくなっている。適切な管理がされない場合、システム構成の分断、統合の困難化、セキュリティ上の欠陥、運用リスクの増大といった問題が再燃する可能性がある。他方で、こうした分散的な開発体制は中央集約型では得にくい革新性を引き出す契機にもなり得る。
IDCは、こうした状況に対応するためにCIOが取るべき具体策を示している。第1に、IT部門は新たな開発ツールへの理解を深め、組織全体を導くことが求められる。外部パートナーとの協働によって知見を迅速に獲得し、事業部門から信頼される存在となることが重要とされる。
第2に、事業部門による迅速な試作を許容しつつ、本番環境への移行経路を明確にする必要がある。試作段階で生まれた有効な成果を、IT部門が統合、保護、運用可能な形へと昇華させる仕組みを整えることが不可欠とした。
第3に、IT部門と事業部門の役割分担を早期に定義することが挙げられる。試作と本番開発の担当範囲、アイデア創出と運用責任の所在、開発から本番化までのプロセスを明確にしなければ、組織内の摩擦は拡大する恐れがある。
IDCは、今後の鍵は統制の強化ではなく、適切な支援体制の構築にあると分析する。事業部門が迅速に動ける環境を整えつつ、必要なガバナンスを確保することで、AI投資を実際の業務成果へと結び付けることが可能になるとした。速度と統制、自律性と説明責任の均衡をいかに実現するかが、企業競争力を左右する重要な要素になるとしている。
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