企業の77%がエージェントAIを本番環境に投入、「導入の可否」から「どう選ぶか」の時代へ:AIニュースピックアップ
IDCは、企業用エージェントAI市場をエージェント本体、作成・運用技術、実行基盤の三層構造で整理した。組織の77%が本番利用段階に達しており、市場ではソフトウェア企業とサービス企業の競争が激化している。
IDCは2026年6月1日(現地時間)、エージェントAIの企業利用を支える市場生態系の構造を整理した。IDCによると、組織の50%は複数の業務領域でAIエージェントを本番利用し、27%は少なくとも一つの領域で本番利用済みだ。合計で77%が本番環境にAIエージェントを置く段階に達した。焦点は導入の可否から、次の展開をどう選ぶかへ移った。
エージェントAI市場の三層構造とその役割
IDCは企業エージェントAI市場を3つの連動する層で説明した。第1の層はエージェント本体だ。特定領域に特化した独立型エージェントと、既存アプリケーション内に組み込まれたエージェントで構成される。後者は外部の統合制御層を必要とせず、ホストアプリケーションの環境内でデータと機能を使い、利用者に代わって自律的に動く。
第2の層は作成と運用の技術群だ。組織がエージェントを構築、配備、監視、管理するための領域で、ライフサイクル全体を扱う。複数エージェントの統合制御フレームワークや発見・台帳管理ツール、ベクトルデータベース、ナレッジグラフ、リアルタイムパイプラインなどのデータ基盤が含まれる。これらはエージェントが文脈を踏まえて働くための土台となる。
第3の層は実行基盤だ。クラウドとオンプレミスのインフラや専用半導体企業によるAIシリコン、AIセキュリティ態勢管理、実行時ポリシー適用、エージェントのID・アクセス管理などが含まれる。プライバシー、規制、主権をめぐる要求から、組織はAIをどこで、どのように稼働させるかの制御を強めようとしており、この層では構成の多様化が加速中だ。
なぜ多くの組織が複数の供給元を選ぶのか
市場の変化を速める要因としてIDCが挙げたのは収束だ。企業ソフトウェアのプラットフォーム企業とアプリケーション企業は、自社製品にエージェント機能を組み込むことで、高付加価値領域へ事業範囲を広げている。プロフェッショナルサービス企業やシステムインテグレーターは逆方向から動き、同じ基礎技術を軸に、自社資産を使う提供モデルを築く。
この結果、買い手は流動的な市場で調達判断を迫られる。IDCの調査では組織の戦略は自社開発と購入でほぼ二分され、多くの組織が複数の供給元からエージェントを調達する見通しだ。IDCは、この姿勢を現実的な判断と位置付ける。エージェントAI市場は若く、変化が速いため、単一の供給元に依存するには不確実性が高い。
IDCは、組織がこの市場生態系の中で自社、取引先、競合の位置を把握する必要があると指摘した。エージェントAIが掲げる価値は、労働の大規模なデジタル化にある。市場の構造を早期に把握した組織ほど次の一手を根拠に基づいて選びやすくなるとの結論を示した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
「Windows+R」は絶対に押さないで! 新入社員に贈るセキュリティの新常識5選
学生時代と同じ感覚でPCやSNSを利用していると、気付かないうちに会社を大きなリスクにさらしてしまうかもしれません。特に最近は、不慣れな利用者につけ込んだ、巧妙なサイバー攻撃が急増しています。自分自身と会社を守るために身に付けておくべきセキュリティ対策を紹介します。
私鉄の「クレカ乗車」が本格始動 今見直したいスマートフォンセキュリティの考え方
2026年3月に首都圏の主な鉄道各社で始まった、クレジットカードの「タッチ決済」乗車サービス。本稿では、Apple Payの「エクスプレスモード」利用時に注意すべきJCBの利用規定や、紛失時に補償対象外となるリスクの境界線を解説します。
ChatSenseがスライド生成AI機能を更新 画像を直接反映可能に
ナレッジセンスは、法人利用AIエージェント「ChatSense」のスライド生成機能を更新した。商品画像や図版を資料へ直接配置できる機能により、提案書や報告資料の作成時間短縮を図る。
AI時代、「コードを書く力」よりも必要なスキルとは?
TWOSTONES&Sonsは、AI活用エンジニア108人の調査結果を公表した。AI導入でテストや定型開発の負担が減少した一方で、プロンプト設計やAI生成物の検証業務が増加した。87.1%が変化を前向きに受け止め、AI出力の評価力を重視している。