AI時代のデータセンター冷却は「脱水冷」? Microsoftの無水冷却にみる、インフラの生存戦略:ITニュースピックアップ
MicrosoftはAI、クラウドの需要拡大に対応するため、データセンターの水削減策を公表した。2030年のウオーターポジティブ達成に向け、水使用効率を初期比90%改善。最新施設への無水冷却導入や雨水活用などで持続可能なインフラ運用を目指す。
Microsoftは2026年6月24日(現地時間)、クラウドやAIサービスの需要拡大に伴い重要性が増すデータセンターにおいて、水使用量の削減に向けた新たな取り組みを公表した。
同社は2000年代初頭の初期データセンターから水管理を優先課題に位置付けており、2030年までに取水量を上回る水を補給する「ウオーターポジティブ」の達成を掲げている。地域社会がデータセンターの水資源への影響に関心を強める中、同社は水使用の透明性を高めるとともに、最新の「無水冷却」技術をはじめとする具体的な抑制策を示すことで、インフラとしての持続可能性を確保する方針を強調した。
初期比90%改善、Microsoftのデータセンター冷却技術
Microsoftによると、同社は冷却技術の革新を通じ、データセンターの水使用効率を示すWUE(Water Usage Effectiveness)を、初期のデータセンター設計に比べて約90%改善した。WUEは1キロワット時当たりの水使用量をリットルで示す指標で、同社の平均値は2000年代初頭の2.3L/kWhから、2025年には0.27L/kWhまで低下した。保有するデータセンター全体において、2030年までに水使用強度を40%改善する目標を掲げており、2025年時点で25%の削減を達成した。
2025会計年度において、Microsoftは世界全体の事業で取水量を上回る水を補給し、ウオーターポジティブの実現に向けた節目に到達した。データセンターの成長と水使用量の増加を切り離すため、責任ある水管理と高効率冷却技術の導入を進めてきたとしている。デジタル需要の拡大と持続可能な水管理を両立させることが可能だとし、2030年目標の実現に向け、今後も取り組みと実績を継続していく方針だ。
空冷システムの変遷と地域に応じた水使用の最適化
初期のデータセンター設計においては、高効率なエコノマイジングチラー(冷却機)をあえて高い水温で運用することで、電力消費の増加を抑制しながら水利用効率を向上させた。2008年には、蒸発補助付きの直接空気冷却を主要な冷却方式として採用した。この方式は、外気温が29.4℃を超えた場合にのみ水を使う設計で、従来の水冷方式に比べて電力消費と水使用量を抑えられる。
地域によって水を使用する頻度は異なる。北欧の一部では年間を通じて冷却用の水を必要とせず、ダブリンやアムステルダムなどの涼しい地域では水を使う時間は5%未満にとどまる。バージニアのような温暖な地域では年間の約10%で水が必要となり、フェニックスのような高温地域では最大40%まで増える場合がある。2025年時点で、同社が保有するデータセンター群の約90%は、低水使用または無水冷却に近い高効率システムで稼働している。
2024年には、AIワークロードに最適化した新たなデータセンター設計も導入した。この設計は、運用時の冷却で水を消費しない。チップレベルの冷却において、閉ループの直接チップ冷却システム内で水を循環させ、蒸発させずに温度を制御する。AI用施設の増加に伴い、こうした無水冷却設計は水使用強度の低減に寄与するとしている。
既存施設でも、温度や湿度の設定値を最適化し、過剰冷却を防ぐ取り組みを進めている。実際の水使用量を設計上の想定と比較し、リアルタイムの気象データや運用分析を使って監査することで、異常な水使用を早期に見つける。フェニックスのデータセンターにおいて、こうした改善策により2025会計年度だけでWUEが前年比23%改善した。現在は、直接蒸発冷却を使うデータセンターへ世界規模で展開している。
再生水、雨水の活用拡大と地域インフラへの巨額投資
水使用量の削減にとどまらず、再生水や再利用水、非飲用水の活用も拡大させている。クインシーやシンガポール、サンアントニオにおいて、それぞれ74%、99%、79%を再生水と再利用水、非飲用水で賄っている。オランダやスウェーデン、アイルランドの一部施設では雨水回収システムが稼働しており、カナダや英国、フィンランド、イタリア、南アフリカ、オーストリアでも追加導入を計画する。ケベック州の新施設において、降水量に応じて年間最大150万リットルの雨水回収が見込まれる。
必要に応じ、施設内で水を処理し、冷却用途に複数回再利用する仕組みも導入する。これにより、公共水道への依存を減らし、施設単位の水使用削減を図る。Microsoftは地域の公共事業者とも連携し、事業に伴う水源やインフラ需要を事前に計画する。システムの改良が必要な場合、同社が費用を全額負担し、地域住民の負担を避ける方針を示している。
バージニア州リーズバーグ近郊においては、データセンターに関連する上下水道改良に2500万ドル超を拠出する。2020年以降において、75件超の水・排水インフラ事業に5億ドル超を投資した。地域の水インフラを近代化し、供給の信頼性を高め、料金や水圧の安定にも寄与すると説明する。
また、補給策において、フェニックス都市圏やネバダ近隣地域で、FIDO Techや地元公共事業者と連携し、AIを使った漏水検知を導入する。老朽化した水道網の隠れた破損を見つけ、修理することで、水の損失を防ぎ、利用可能な水の増加につなげる。中西部ではThe Nature Conservancyと協力し、三日月形の旧河道湿地を復元する。湿地は地下水の補給や洪水リスクの軽減、生態系の回復に役立つとしている。
Microsoftは今後、AIと従来型ワークロードが混在するデータセンターに対応するため、機器の種類ごとに冷却方式をより細かく最適化する区域別冷却アーキテクチャも探る。データセンターをデジタル経済の基盤と位置付け、地域社会に利益をもたらす形で建設、運用する考えを示した。
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