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AIインフラのスピードと予算の壁をどう超える? 日本のSIer依存を見据えた、デルの戦略を聞いた

AIの進化に伴い、ITインフラのスピードと予算の課題は深刻化している。さらに日本特有のSIer依存が状況の分析や投資判断を遅らせている。デル・テクノロジーズはどう応えるのか。

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 生成AIやAIエージェントが注目を集め、ハードウェアベンダーやソリューションベンダーもAIソリューションの提供にしのぎを削っている。しかし、ユーザー企業は何をどう選択すればいいのか分かりにくくもなっている。


トッド・リーブ氏(編集部撮影、以下同)

 そこで、Dell Technologies(以下、デル)はさまざまな企業とのパートナーエコシステムを構成し、共通プラットフォームを提供することで、ユーザー企業が抱える悩みに応えようとしている。クラウドパートナーシップを担当するバイスプレジデントのトッド・リーブ(Todd Lieb)氏に、デルの製品コンセプトやパートナー戦略、AIソリューションについて聞いた。

多くの企業が関心を寄せる4つのトレンド

――デルでは、ユーザー企業を取り巻く現在の状況をどうみているか。

リーブ氏: 2026年5月に開催したDell Technologies World 2026で、多くの顧客に話を聞くことができた。顧客の興味、関心は4つのトレンドに整理できる。

 1つ目は「AI」だ。特にクラウドだけでなく、ローカル環境でAIをどう活用するかが大きなテーマになっている。

 2つ目は「デジタル主権」(ソブリニティ)だ。データを自分たちでコントロールするために、データやAIをパブリッククラウド、プライベートクラウド、オンプレミスでどうバランスさせていくかを考えている。

 3つ目は「データセンターのモダナイゼーション」だ。これまではクラウドファーストが主流だったが、現在は、オンプレミスを含めてクラウドを使い分ける「クラウドスマート」が基本になりつつある。

 4つ目は「サプライチェーン」だ。少し前までは、メモリやディスクの価格上昇が懸念材料だったが、現在はそもそも調達できるかどうかが課題になっている。

 デルは、さまざまな企業とのパートナーシップのもと、こうした現状で課題を抱えている企業を支援していく構えだ。

――パートナーシップによる協業の支援例とは。

リーブ氏: 4つのテーマ全てに関係するパートナーシップとしては、Microsoftとの協業が挙げられる。同社との協業は、デル創業時のマイケル・デルとビル・ゲイツ氏との個人的な関係にまでさかのぼる。35年超にわたって協業をする中、デルの技術者が保有するMicrosoft認定資格は4万7000件を超える。現在も両者は密接な関係を築いている。

 例えばAIについて、デルはAIインフラソリューション「Dell AI Factory」を世界約5000組織に展開する。一方でMicrosoftはOpenAIへの投資をはじめとしてAIソフトウェアの市場をけん引している。デルとMicrosoftが協業することで、インフラからソフトウェアまで一貫したソリューションを提供でき、顧客のAIの取り組みを強力に支援できる。

AIの登場によって「スピード」と「予算」の課題がより一層深刻化している

――実際に企業はどんな課題を抱えているか。

リーブ氏: グローバルで共通する課題を2つ、日本国内に見られる課題を1つ挙げてみたい。

 グローバルの課題の1つ目はスピードだ。ビジネスのスピードが速くなり、「それにどうキャッチアップすればよいか」「何から取り組みをスタートさせればよいか」に多くの顧客企業が悩んでいる。

 2つ目は予算だ。データセンターのモダナイゼーションに取り組みながら、AIのような取り組みを同時に進める必要がある。その間、既存ビジネスも維持しなければならない。既存のIT予算が増えない状況で、どう予算を捻出し、新たな取り組みを進めるのか、IT部門は非常に厳しい状況に置かれている。

 日本企業の課題は、SIerやアウトソーサーの存在だ。ユーザー企業が直面しているスピードと予算の課題をさらに深刻化させている。SIerやアウトソーサーがスピードと予算の課題に直面し、その影響が遅れて顧客にやってくる。ユーザー企業は状況の分析や投資の判断が遅れるため、より先を見通した戦略が必要になる。

――スピードと予算はこれまでも大きな課題だった。より深刻化しているということか。

リーブ氏: 従来とはまったく違うレベルで問題化している。その理由はAIだ。AIが進化するスピードはこれまで経験したことがないほどだ。AIに必要な予算はこれまで投じてきた予算とは異なるレベルだ。一般にITインフラの導入プロジェクトは、特定の技術から特定の技術への移行であることが多い。だが、生成AIやAIエージェントは、従来のインフラ刷新とは異なる新しい投資領域であり、そのことが問題をより深刻にしている。

――そうした課題に対してはどのようなアプローチが有効か。

リーブ氏: デルのアプローチは、領域ごとに縦割りで分散してしまった状態を共通プラットフォームに集め、まとめて管理し、シンプル化、標準化、自動化していくものだ。これによって、スピードに追随しやすくなり、予算も確保しやすくなる。

AI、パブリッククラウド、プラットフォーム領域でエコシステムに注力

――共通プラットフォームについて具体的なソリューションはあるか。

リーブ氏: 先ほど述べたDell AI Factoryがそうだ。AIに関連するさまざまなソリューションを統合して管理できる。また、オンプレミスやクラウド、エッジのIT環境を統合して管理する「Dell Automation Platform」もある。共通プラットフォームのイメージをケーキに例えるなら、一番下の層がストレージで、その上にコンピュートがあり、その上でオートメーションプラットフォームが動作している。一番上のローソクは業種や領域ごとに提供されるユースケースだ。オープンなAPIを使ってさまざまなパートナーのソリューションを利用できるようにしている。その意味でも、パートナー戦略は非常に重要だ。

――デルのパートナー戦略で重視しているポイントとは。

リーブ氏: パートナーシップは、AIとパブリッククラウド、プラットフォームという3つのエコシステムで推進している。AIでは、NVIDIAやPalantir Technologiesなどハードウェアからソフトウェアまで幅広い企業と協業することを重視している。

 パブリッククラウドやプラットフォームでは、クラウドの価値を既存のデータセンターに拡大していくことを重視している。「Microsoft Azure」が提供する価値を「Azure Local」としてオンプレミスで提供している。AI関連ではMicrosoftが新たに提供を開始したローカルAIソリューション「Foundry Local」を提供する。

 いずれのエコシステムでも重視しているのは、「Go-to-Market」(市場進出戦略)の支援だ。製品を提供するだけでなく、パートナーとともに顧客を訪れ、実際に価値を生み出すところまでサポートする。

――パートナー戦略で、日本とグローバルではどのような違いがあるか。

リーブ氏: 日本では顧客を支援するためにSIerやアウトソーサーの存在が欠かせない。企業のGo-to-Marketを支援する際もよりパートナーの力に頼ることになる。

 日本市場はIT導入に対して慎重で保守的だ。グローバルのベストプラクティスの紹介など、取り組みを前進させやすくする施策に力を入れている。一方で、デルが持つグローバルでの経験を提供することもできる。

 ソブリニティについては、フランスやドイツ、イタリアが先行している。日本もそれに続いて活発であり、欧州で培ったノウハウを提供できる。サプライチェーンもデルのグローバルな生産や調達、販売の体制を生かして日本の顧客に適切に製品やソリューションを提供していく。

エージェンティックAIやローカルAIを「小さく始める」ことを支援していく

――今後のITトレンドと、それに対するデルのアプローチを教えてほしい。

リーブ氏: 今後については3つのトレンドがある。「エージェント型AIの進展」「PCやエッジ領域へのAIの進出」「ハイブリッドクラウドの進展」だ。これらについても、共通プラットフォーム化というコンセプトのもと、パートナーとともに顧客企業を支援していく。例えば、エージェンティックAIについては、Microsoftが既に対応しており、Dell AI Factoryでも対応が可能だ。

 また、AI PCやエッジAIについては、デルがクライアントPC(Dell AI PC)やエッジデバイスを展開するメーカーとしての強みを生かせる。パートナーであるMicrosoftも、エッジにおけるIoTの取り組みを推進しており、両者の強みを生かす。これによって「どこであってもAIをサポートする」体制を推進していく。

 ハイブリッドクラウドのポイントは、1つの共通インフラでプライベートクラウドやAI、エッジといった異なるワークロードを一貫してサポートできるようにすることだ。Dell Automation Platformとして既にその環境を用意している。

――Dell Automation Platformでは、例えば仮想化基盤で仮想マシンをそのままにハイパーバイザーだけを「VMware」からMicrosoftに切り替えるといったことができる。他社のソリューションでもベンダーロックインからの解放をうたうものが増えている。このような柔軟な選択肢を求めるトレンドは、今後も進むか。

リーブ氏: 進む。そこでポイントになるのは、黒か白かのどちらかを選ぶのではなく、必要に応じて切り替えたり、組み合わせたりできるようになることだ。

 現状が黒なら少し白を試してみたり、必要な白にすぐに切り替えたりできる。それを実現しやすくするのが共通プラットフォームだ。新技術に対して慎重な態度を貫いていても、まず小さく実験してみて、効果を確認したらさらに前進すればよい。エージェンティックAI、ローカルAI、ハイブリッドクラウドいずれの取り組みにも当てはまる。最初から完璧を目指すのではなく、少しずつ「カイゼン」していくことは日本企業の得意とするところだ。

――最後にメッセージを。

リーブ氏: 現在のITはチームスポーツ化している。デルとMicrosoftの協業もそうだが、複数の企業がチームとして取り組みを進めることで、PCからエッジ、オンプレミスのデータセンター、パブリッククラウドまでにわたる一貫した共通プラットフォームを構成し、AIなどの新しい取り組みを推進できるようになる。

 エコシステムが成熟することで提供できる価値は広がり、利用する際のリスクは減少する。新技術の導入に慎重で保守的なことはデメリットではない。むしろ慎重で保守的であるために、一度決断したらその後、目覚ましいスピードを実現できるものだ。デルはこれからも日本企業の取り組みを支援していく。


トレードマークである「クラウドデザイン」のジャケットを、日本取材のために米国から持参してくれた。

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