クラウド一辺倒の終焉 今こそオンプレ回帰――IIJの「運べるデータセンター」が実現
クラウドファーストが定着した現在、企業は新たな壁に直面している。DXやAI、IoTの進展によってデータ量が増えたため、大量のデータをクラウドで処理するのは通信コストや遅延が問題になるのだ。クラウド・オンプレのハイブリッド活用を検討すると、物理インフラの整備には別の壁が立ちはだかる。これらの課題を解決するのが、IIJの“運べるデータセンター”だ。
クラウドファーストの流れの中で、多くの企業がその在り方を見直し始めている。クラウドコストの高騰やセキュリティの担保、AI活用における低レイテンシの追求、拠点ごとに異なるデータ主権の確保など、クラウド一辺倒の戦略はビジネス課題への正解ではなくなりつつあるからだ。
インターネットイニシアティブ(以下、IIJ)も、「クラウドに移行したシステムの一部をオンプレミスで動かしたい」「オンプレミスとクラウドを組み合わせたハイブリッド運用を検討したい」という要望が増えているという。同社の室崎貴司氏(ネットワークサービス事業本部 基盤エンジニアリング本部 エンジニアリング事業推進部長)は、その背景をこう説明する。
「とりわけ製造業などの現場におけるクラウド利用では、セキュリティの課題に加えて自動化の際にネットワーク遅延が問題になるケースが増えています。制御システムはオンプレミスに置かなければならない、という判断も多いのです」
この流れは、AI活用においても同様だという。「生成AIを使う量が増えるほど、クラウド利用のコストはかさみます。学習についてはクラウドを使い、推論処理はオンプレミスで行うという流れが今後さらに増えるでしょう」と室崎氏は語る。
データを海外で処理するクラウドが多いことへの懸念から、セキュリティ面を考慮してシステムごとにクラウドかオンプレミスかを仕分けする企業も出てきている。あるテックスタートアップ企業は、AIをオンプレミスで動かすためにIIJのポータブルな、マイクロデータセンターを導入し、GPUサーバを稼働させている。
オンプレミス回帰を阻む、場所と環境の壁
オンプレミスへの回帰やエッジサーバの設置を検討すると、企業は新たな課題に直面する。まず挙げられるのが、サーバルームの老朽化と電気代の高騰だ。古いサーバルームや自社データセンターは維持コストが年々増えており、設備更改や電気代、運用の負担が重くのしかかる。「安全にサーバを設置できるスペースを確保できない」「施設の老朽化によって十分な空調や電源容量を確保できない」などの声も多い。
サーバの設置環境が問題になるケースも多い。クラウド化できないサーバを抱えると、排気熱や騒音によってオフィス環境が悪化し続けてしまうという懸念がある。特に生産現場では、手元にサーバを置きたいというニーズがある一方で排気熱などはネックになりやすい。
工場や倉庫など、データの発生源に近い場所にサーバを置きたいという要望も強まっている。しかし現場にIT専任の担当者がいない企業も多く、物理インフラの整備は一筋縄ではいかないのが現状だ。
どこにでも置ける、次世代サーバルーム「DX edge」
こうした課題を解決するのが、IIJの「DX edge マイクロデータセンター」だ。冷蔵庫ほどのサイズで運搬可能なモジュール型のIT基盤であり、サーバスペースから、空調、電源、セキュリティ、運用までオールインワンで提供する。オフィスや倉庫、店舗内のサーバルーム、工場などのエッジコンピューティング基盤として利用できる。
IIJは、オーストラリアのマイクロデータセンターメーカーであるZella DCとパートナー契約を結んでおり、このような高機能・高品質なマイクロデータセンターを国内外に提供している。
ラインアップは大きく分けて2種類。屋内設置タイプの「Zella Pro」には12U、25U、38Uサイズの3モデルがあり、コンパクトで、サーバルームを用意しなくても導入できる。
防じん・防水性能(IP65)や遮音性能、空調(サーバ冷却)、物理セキュリティ(防犯カメラ、遠隔制御可能な電子錠)、スマート電源分配ユニット(スマートPDU)、無停電電源装置(UPS)、各種環境センサー、自動消火システム、遠隔管理機能まで備えている。これらが一つの筐体(きょうたい)に収まっているため、オフィスや工場の空きスペースを活用できる。
もう一つが屋外設置タイプの「Zella Outback」で、12U、25Uの2モデルが用意されている。無線基地局の通信設備や農業IoTなどでの利用を想定し、Zella Proの機能の他にも耐紫外線性能や防水機能を強化している。屋内外を問わず設置できる柔軟性が、現場ごとに異なる設置環境の制約を乗り越える鍵になっている。
室崎氏は、DX edgeならではの価値をこう語る。「サーバやネットワークもまとめての提供や、運用監視をIIJがリモートで行なう点が強みです。どこにでも素早く設置できることに加え、構築から運用まで任せてもらうことで、その価値を実感できると思います」
BCP用のサーバとして導入されている事例もある。海外の変電所や鉱山などでは、広い敷地の複数個所にマイクロデータセンターを設置するなど、物理的に分散して冗長化を図っているという。
「Azure Local」との統合パッケージが生む相乗効果
DX edgeは、「Azure Local」(旧Azure Stack HCI)を搭載した統合パッケージも提供している。Azure Localは、オンプレミス環境でAzureの管理やサービスを利用できるハイブリッドインフラストラクチャソリューションだ。仮想マシンやコンテナをAzureポータルで一元管理でき、低遅延なAI推論や高可用性が求められるエッジ、オンプレミス環境に最適化されている。
「ハイブリッド構成が増えていく中で、Azure基盤をすでに使っている企業は多くあります。使い慣れたAzureの管理画面やサービスをオンプレミス環境でもそのまま利用できることは大きなメリットです」
もっとも、Azure Localの構築・運用には一定の知見や体制が求められる。そこもIIJが担うことで、オンプレミス移行に伴う運用負担を軽減できる。DX edge マイクロデータセンターにAzure Localを搭載し、監視・保守をIIJが代行することで、堅牢(けんろう)で安全なエッジコンピューティング環境を短期間で構築できる。
マルチベンダー対応と、広がる導入シーン
サーバハードウェアは、Dell TechnologiesやSupermicroなど複数ベンダーの製品を柔軟に選択できる点も特徴だ。「サーバベンダーがあらかじめ決まっているわけではありません。環境に合わせてスペックを選定できますし、こちらからの提案も可能です。要望に応じて柔軟に対応しています」
導入が進む業界としては、製造や物流が最も多いという。自動化された生産設備や倉庫の制御システムに近い場所にDX edge マイクロデータセンターを置くことで、低遅延な処理と通信コストの削減を両立させられるからだ。
GPUの検証用としてオフィスに設置するケースやオフィス移転に合わせて導入するケースも目立っているという。老朽化した自社データセンターやクラウド移行後に残ったオンプレミスサーバの受け皿など多様な企業のニーズに応えている。
AIと基幹システムをどう結ぶか――IT基盤の未来像に向けて
ITインフラについて企業が今後向き合うべき課題として、室崎氏はAIと既存システムとの統合を挙げる。「これまでの基幹システムや業務システム全般にAIをどうつなぐか、が大きな課題になります。それぞれをクラウドに置くのかオンプレミスに置くのか、総合的に考える必要があるでしょう」
クラウドを起点にシステムを構築した企業であっても、いずれコストとリスクを見直す必要が生じる。「クラウドは自分たちでコントロールし切れない部分があります。データ主権をはじめとするガバナンスをどう利かせるか、オンプレミスで自社が持つべきものは何か、地政学リスクも含めて常に考えておく必要があるはずです」
室崎氏は企業のITインフラ担当者や各現場の担当者にメッセージを寄せた。「DX edgeは、われわれがオーストラリアの専業スタートアップと共に作り上げ、国内外で販売しています。納期の早さも強みで、タイミングが合えば即納も可能です。サーバやネットワーク、運用監視が一体になっているからこそ、構築から運用まで一貫して任せていただければ、その価値を実感できるはずです」
システムやデータの置き場所をどう見直すかは、企業の競争力を左右する経営判断になりつつある。簡単に運べて、どこにでも置ける。そんな新しいサーバルームの選択肢が、その一助になりそうだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連リンク
提供:株式会社インターネットイニシアティブ
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2026年10月24日





