なぜ日本の大企業はAIを活用しても「会社を変えられない」のか? サイボウズが551社を調査:IT調査ピックアップ
サイボウズが551社から回答を得た大企業調査で、63%がAI活用戦略を策定済み、60%がAIを全社的に推進・活用していることが分かった。一方、組織全体の変革に直結している企業は21%にとどまる。全社活用の割合に大きな差が出た企業の特徴と、最大の課題とは。
AIの普及が急速に進む一方、多くの企業で「個人のアシスタント」としての利用にとどまり、業務・組織としての変革につながっていない――。こうした現状を踏まえてサイボウズが実施したのが「大企業におけるAI活用実態調査」だ。同社が調査結果をまとめたレポートの第1弾「AI活用の方針・浸透状況編」から、日本の大企業におけるAI活用の実態と、組織変革や全社的な成果につながりにくい背景が浮かび上がった。
AIの全社活用が進む企業と進まない企業の違いは?
まず、AIの全社的な活用が進む企業とそうでない企業では、何が違うのか。
同調査によると、AIの活用状況は「全社的に推進・活用している」が60%で最多だった。「一部の部門・業務で活用している」(25%)、「試験導入・PoC段階」(8%)を合わせると、9割超の企業が何らかの形でAI活用に取り組んでいる。
全従業員に占めるAI利用者の割合は「40〜60%未満」が24%で最多となり、「20〜40%未満」の23%が続いた。「80%以上」は14%で、浸透の度合いは企業によって異なっていた。
活用用途は「文書作成・メール作成・議事録作成」が83%で最も多く、「情報収集・リサーチ・要約」が66%、「データ分析・集計・レポート作成」が52%で続いた。サイボウズは、AI活用がまず日常的な情報処理や文書作成業務から広がっているとみている。
戦略策定は63%、経営層の関与度で活用状況に差
AI活用戦略を何らかの形で策定していた企業は63%だった。内訳は「全社に共有されている」が37%、「一部の担当者のみ把握している」が14%、「全社に浸透している」が12%で、「現在策定中」は14%、「特にない」は17%だった。策定は進んでいるものの、全社に浸透している企業は1割強にとどまる。
AI活用の推進体制は、「経営層が示した方針に沿って推進組織が実行している」が45%で最多となり、「経営層がAI活用を主導し意思決定している」の27%が続いた。両者を合わせると72%となり、多くの企業で経営層がAI活用に関与していた。
AI活用状況と経営層の関与度をクロス集計すると、「経営層がAI活用を主導し、意思決定している」企業では90%が「全社的に推進・活用している」と回答したのに対し、「経営層はほぼ関与していない」企業では23%にとどまった。経営層の関与度によって、AIの活用・推進状況に大きな差がみられた。
成果は「一部業務で効果」が最多、変革に直結は21%
AI活用による成果は、「一部の業務で効果は出ているが全社には広がっていない」が31%で最多だった。次いで「業務効率化・コスト削減に成果が出ている」が25%、「組織全体の変革・業務変革に直結している」が21%となった。サイボウズは、AI導入は進む一方で、全社的な変革につながっている企業はまだ限定的だとしている。
業務プロセスへの影響では「一部の業務フローが変わった」が40%、「仕事の仕方は変わっていないが速度が上がった」が31%、「業務プロセスを大きく変えた」が10%だった。合わせて81%が何らかの変化を実感していた。
最大の課題は人材不足、次いで回答精度とセキュリティ
AI活用における課題・不満は、「使いこなせる人材が少ない」が49%で最多だった。「AIの回答精度・信頼性に不安がある」が40%、「セキュリティ上の懸念が解消されていない」が37%、「社内データや業務コンテキストと連携できていない」が34%で続いた。
同調査では、課題・不満の要因を外部要因と内部要因に分類している。このうち内部要因は内部要因は「人材」「ノウハウの蓄積」「費用対効果」の3点に集約され、いずれもAI活用の定着や成果創出に直接影響する要素だとしている。
人材育成は76%、専任組織は34%
AI人材育成に取り組む企業は76%だった。取り組み内容は「全従業員向けのAIリテラシー研修」が46%で最多となり、「IT・DX担当者向けの専門研修」が31%で続いた。一方、「特に取り組んでいない」企業も24%存在した。
AI推進の担当者・組織の配置状況は、「兼任担当者がいる」が41%で最多となり、「専任のAI推進チーム・組織がある」は34%だった。専任・兼任を合わせると75%の企業で何らかの推進体制が整備されていた。
プロンプトなどのAI活用ノウハウの共有状況は、「社内ポータルなどで組織的に共有・蓄積している」が44%で最多となった。一方で、「個人の中に留まり共有はほぼされていない」が22%であり、ノウハウの組織的な蓄積には企業間で差がみられた。
効果測定では、「KPIを設定し定期的に測定・評価している」が28%だった。「KPIを設定しているが定期的な測定・評価は行っていない」が21%、「KPIは設定しておらず、定性的な評価のみ行っている」が21%で、合わせて71%が何らかの形でAI活用を把握・評価していることが分かった。
効果測定の方法は、「定性的な評価(アンケート・ヒアリング)」が34%で最多となり、「定量的に計測した結果をKPI設定している」は30%だった。「測定方法・指標は統一されていない」も17%みられた。
サイボウズは、より高度なAI活用や業務変革の実現には、人材育成やノウハウの蓄積、効果測定の仕組みづくりを継続的に進めることが求められるとしている。
今後の拡大領域は業務自動化と意思決定支援
今後のAI活用拡大領域は、「業務自動化・プロセス自動化」が61%で最も高く、「データ分析・意思決定支援」が54%で続いた。以降は「社内ナレッジ管理・情報検索」が20%、「カスタマーサポート・顧客対応」が13%、「製品・サービス開発」が13%となった。
サイボウズによると、半数を超える企業が期待する両領域で成果を出すには人材不足やノウハウの蓄積不足、費用対効果の可視化といった課題の解決が欠かせないという。AI活用を全社的な成果につなげるには、経営層のリーダーシップの下で活用目的を明確化し、これらの課題に継続的に取り組むことが求められると同社は指摘する。
今回の調査はインターネットで、2026年7月6〜9日に実施された。対象は従業員数1000人以上の企業・団体(情報通信業を除く)に勤務する経営者や、IT・情報システム・DXに関する業務に従事する人で、サイボウズは551社から回答を得たとしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
「AI活用でIT部門の人員が増える」は本当か? 人材構成の「二重の変化」をGartnerが解説
AIを使えばIT部門の人員は減る――。多くのリーダーがそう想定する中、Gartnerの調査では回答者の40%が2027年にIT部門の人員を増やすと見込んだ。AIで成果を上げるCIOが見据える、人材構成の二重の変化とは。
サイボウズ「kintone」の動向に見る、AI時代に向けた大企業の課題と対策
大企業を対象とした「AI時代の課題と今後の対応」について、サイボウズが「kintone」の実績や顧客動向を踏まえて見解を示した。AIを活用したい全ての企業にとっても参考になりそうだ。
北陸電力は紙と手入力をどう“捨てた”? 年間で3万時間削減
北陸電力はkintoneを全社導入し、2年間で約750のアプリを現場主導で開発、年間約3万時間の業務削減効果を生んだ。これまで紙の書類の記載内容を手入力してきた同社は、なぜkintoneを選び、どのように全社に浸透させたのか。
200超の部署がやり取りする「Excelのバケツリレー」 埼玉県庁はどう解消した?
埼玉県庁は、部門をまたぐ照会業務の非効率を解消するためにkintoneを採用した。さまざまな情報共有基盤がある中で、同庁がkintoneを選んだ理由は何か。













