使われるPLMのための3つの条件:改革現場発!製造業のためのIT戦略論(3)(2/3 ページ)
これまで2回にわたって、部品レベルでの経営戦略の有用性と、それを実現するPLMの重要性について解説してきた。今回は、PLMを実現する実装手段について考えていく
パフォーマンスとの戦いは最初から始まっている
エンドユーザーがストレスなくシステムを利用する目安として「3秒ルール」という言葉がある。基幹システムであるPLMシステム構築に際しては、この3秒ルール実現に向けシステム構築の早い段階からパフォーマンス問題を意識したシステムアーキテクチャとデータベースの設計方針を企画する必要がある。PLMシステム要件としては、
- 大量データ取得時に検索を中断できること
- インターネットでの利用を行うためにデータを暗号化すること
- 低速回線(64kbit/sまたは128kbit/s)でのレスポンスを確保すること
などがポイントとなる。
PLMシステムを構築する場合、設計変更や仕様変更の際に定常的に行われるBOM(部品表)の正展開/逆展開で高いレスポンスが要求される。産業機械や自動車など部品点数が多い製品では、数万件から数十万点の部品やユニットから成る複数階層のBOM展開を想定しておく必要がある。これらをストレスなく操作できるテクノロジとアーキテクチャの見極めは、非常にクリティカルな問題だ。パフォーマンスを確保できるようなアプリケーションとデータベース間の接続方針、業務処理ロジック(アプリケーション層)の多層化設計を行いながら、アーキテクチャとアプリケーションの構造を決定する必要がある。
拡張性・保守性を確保するアーキテクチャとは
大量データを扱う基幹PLMシステムを稼働するに当たって推奨するアーキテクチャ例を図2に示す。
BOMやPLMのシステムは大規模であるが故、構築や維持メンテナンスの利便性を考慮する必要がある。BOMは製造業にとって最も重要な基幹データなので、10年20年といった長期スパンで活用できるものでなくてはならない。使っていくうちに
- 管理属性の追加
- 機能の追加・変更
- ユーザー数の増加
が想定される。また、さまざまな処理や画面を伴うアプリケーションは、経営環境の変化、組織変更、業務プロセス改善などの変化に応じ、随時追加や変更を加えていく必要がある。
経験上、このような変化に対して柔軟かつ迅速に対応できるシステム・アーキテクチャとして、筆者は図2の右側に示すようなMVC(Model、View、Controller)モデルを推奨する。MVCモデルには、次のような利点がある。
- 機能ごとの分離が明確になる
- システム開発を行う場合、プログラミングの分業が容易になり、各機能ごとに専門性を持つ担当者が作業するため、生産性やシステムの品質向上を図れる
- 機能コンポーネント間の依存性を最小限に抑えられるため、ほかの部分の変更による影響を受けにくい実装ができる
- コンポーネントの再利用性が高まる
つまりMVCアーキテクチャを利用することで、業務の変更に柔軟に応じられる拡張性の高いシステムの構築が可能になるわけだ。また「複数の担当者が同じ機能コンポーネントを修正する」というような無駄な作業がなくなり、保守性も確保できる。
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