時系列データから将来値を予測する際に利用される代表的な時系列分析手法。得られた過去データのうち、より新しいデータに大きなウェイトを置き、過去になるほど小さな(指数関数的に減少する)ウェイトを掛けて移動平均を算出する加重平均法の一つ。
今回の出来事が直前の出来事に強く影響される場合や、出来事の変動にできるだけ追従させたい場合など短期の予測に適しており、在庫管理などで定期発注方式における発注量予測によく用いられる。また、ビジネスや財務上の時系列予測、株価変動分析などでも使用される。
単純な指数平均法(1次式)の計算式は、以下のように表わされる。
予測値 =α×前回実績値+(1−α)×前回予測値
=前回予測値+α×(前回実績値−前回予測値)
すなわち、前回の実績値が予測値からどれほど外れたかを算出し、それに一定の係数αを掛けて得た修正値を、前回予測値に加減して今回の予測値を導き出している。このとき、実績値は修正値の算出に使われるのみで、今回予測値のベースになるのは前回予測値である点がポイント。これにより特異な実績値があった場合に影響が出過ぎることを避けている。
前回の予測値と実績値があれば、今回予測値が算出できる簡便さも特徴である。ただし、前回予測値は前々回予測値から算出されるため、連続する過去データ(予測値)の影響もわずかだが残る。
その過去予測値の影響度を決定するのが、係数α(平滑定数)で、0<α<1の範囲で設定する。αが1に近いほど直前値を重視し、0に近いほど過去の経過を重視することになる。通常αの決定は、蓄積された過去データによってシミュレーションするなどして、予測値と実績値の予測誤差が最小になるように設定する。
この単純指数平滑法のほかに、指数平滑法で導き出した予測値を別の指数平滑法に多次式として適用する2次平滑法(多次平滑法、重平滑法)があり、季節性(周期性)などの傾向を考慮したホルト・ウィンタース法(Holt-Winters method)が有名。また、平滑係数を定数とせずに時系列データから変数値を取り込み、実績値の傾向を織り込んだ可変応答平滑法もある。
参考文献
▼『生産管理の事典』 圓川隆夫、黒田充、福田好朗=編/朝倉書店/1999年11月
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